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堤清二が読売新聞の評伝に遺した格言(作家)[今週の防災格言312]

time 2013/12/02

堤清二が読売新聞の評伝に遺した格言(作家)[今週の防災格言312]


『 経済的な豊かさと
人間としての豊かさとは、
関連はあるが別のものです。 』

堤 清二(1927〜2013 / 実業家・詩人・作家 元セゾングループ代表)

格言は讀賣新聞(2013年11月29日朝刊)の評伝より。

堤清二(つつみ せいじ)氏は、流通や外食、金融にまたがる企業集団「セゾングループ」を築き上げ、辻井喬(つじい たかし)のペンネームで小説家や詩人としても活躍した人物。父は西武グループの創業者で元衆院議長の堤康次郎(つつみ やすじろう / 1889〜1964)。異母弟に元西武鉄道会長、元コクド会長の堤義明(つつみ よしあき / 1934〜)がいる。
父康次郎には5人の女性との間に5男2女がおり、清二氏も内縁の妾(後に本妻となる)の間に生まれた。このことが父との確執に繋がり、後に日本共産党入党や文学への傾倒のきっかけとなっていった。
1951(昭和26)年、東京大学経済学部卒業後、父・康次郎の秘書を務め、1954(昭和29)年に西武百貨店に入社。取締役店長を経て1966(昭和41)年、社長に就任。西武百貨店を基盤に新規事業を次々に開拓し、スーパーの西友を創業したり、専門店のパルコ、信販会社クレディセゾンなど多くの企業を育てセゾングループ代表となる。1988(昭和63)年には世界有数のホテルチェーンのインターコンチネンタルホテルを買収するなど事業を拡大したが、バブル崩壊後は西武百貨店などの経営が悪化し、1991(平成3)年にセゾングループ代表を辞任。経営の第一線から退いた。
作家として1955(昭和30)年に詩集『不確かな朝』を刊行、以来数多くの作品を発表し、代表作に『虹の岬(谷崎潤一郎賞)』や『異邦人(室生犀星詩人賞)』など。2004(平成16)年には父・康次郎氏を描いた『父の肖像』で野間文芸賞を受賞。日本芸術院会員で2012(平成24)年に文化功労者に選ばれ、憲法再生フォーラム代表、マスコミ九条の会呼びかけ人としても知られる。

311東日本大震災の時、大病のために入院していたという。その時の様子を

『 個人的な死への恐れと、従来の文明観の挫折が平仄(ひょうそく)を合わせて私の前に現れたのである 』

と語っている。 (学芸総合誌・環 Vol.49 2012年春(藤原書店 2012年4月30日)特集「3.11と私―東日本大震災で考えたこと」の寄稿文・辻井喬「魯迅にとっての近代人」より) 2013(平成25)年11月25日に肝不全のため86歳で死去。

曰く―――。

病院のベッドで災害のことをそんなふうに(※わが国の災害が、世界経済が実体経済から離れるといった、行き詰まりの時期に発生したことなど)考えていると、私の頭には諸外国のメディアや指導者が、災害時に示した日本人の対応の見事さに驚きと称賛を寄せていることが蘇ってきた。なぜならそれは私にとって意外であったからである。

私は今まで政治思想史家の丸山真男(1914〜1996 / 東京大学名誉教授)から強い影響を受けて、日本社会の近代化は自らの意見の提示とそれに基づいて行動する大衆が生まれた時、完成へと大きく近付くと考えてきた。

しかし、いつまで経ってもそのような大衆は生まれず、逆に不安定な大衆社会的要素が大きくなり、容易に大衆操作に長じたデマゴーグの影響を受け、ヒットラーが出現したドイツのワイマール共和国末期に共通する危うさが拡がっているという不安を持っていた。そしてそのような大衆社会の根は、権力には極めて従順で、隣近所と言われる共同体的環境から抜け出ようとはしない”遅れた民衆”のなかにあると考え、だから日本では根本的な変革は無理なのだと内心では思っていたのである。諸外国のメディアが評価するわが国の共同体意識のなかには前近代的要素が根強くみられるのではないか。

私は第二次世界大戦後の思想家たちが、サルトル、カミュ、レヴィ=ストロースをはじめジャン=リュック・ナンシーに至るまで、新しい共同体の可能性の発見に四苦八苦していることを知っている。今回の大地震に際して諸外国のメディアなどが評価している共同体は本当に欧米の思想家たちが追い求めている共同体なのだろうか。

そう思った時、私は欧米、ことにフランス大革命を範とし、思想的にデカルトに流れを汲む”近代”という物差しで現状を計測する、「だから日本は駄目なんだ」という考え方に落とし穴があったのだと気付いた。権力に対してもわが国の大衆は「限りなく従順」と言い切ってしまっていいのだろうか。

■「堤清二」氏に関連する防災格言内の記事
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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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