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緒方貞子（1927～2019 / 元国連難民高等弁務官・国際協力機構(JICA)理事長）の東日本大震災後の復興庁設立にに向けた提言と名言 [今週の防災格言621]

time 2019/11/18

『過ちを二度と繰り返すことがないよう、復興の過程を公開し、後世への責任として記録も取った上、引き出される教訓・提言を世界に発信することが重要だ。』

緒方貞子（1927～2019 / 国際政治学者・元国連難民高等弁務官上智大学名誉教授）

格言は、東日本大震災（2011年）後の2012（平成24）年2月に設立された復興庁と復興についての提言から（ロイター通信社（2012年3月2日付）)。このなかで特に、福島原発事故の教訓を世界に発信する意義について言及している。

曰く―――。

《東日本大震災による甚大な被害、なかでも原発事故からの復旧と復興に向けた課題の大きさは、世界にも例のないものであり、過ちを二度と繰り返すことがないよう、復興の過程を公開し、後世への責任として記録も取った上で、引き出される教訓・提言を世界に発信することが重要である。
震災に際しては、世界中から多くの支援やメッセージが寄せられ、日本が築き上げてきた国際社会との絆の深さが再認識された。こうした共感と信頼の声に応えていくためにも、この度の復興過程を世界の国々と共有することが求められている。
また、その前提として、日本国政府は、国民とくに被災地の人々に対し、遅滞なく関連情報の開示を行い、放射能の影響や復興に向けた施策などを継続的に説明していく必要もある。》

緒方貞子（おがたさだこ）は、1976（昭和51）年に日本人女性初の国連公使に就任、1991（平成3）年には国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）のトップである高等弁務官に女性として世界で初めて就任、10年にわたって世界の難民支援を指揮した人物。上智大学名誉教授。
世界的に難民問題がクローズアップされる時代のなかで、危険を顧みず、弱者の側に立った人道支援を心がけ、ルールや前例にとらわれない現場主義を常に実践してきた辣腕で知られる。

1927（昭和2）年9月16日、旧東京市麻布区（現東京都港区）の外交官・元フィンランド特命全権公使の中村豊一・恒子夫妻の長女として生まれる。曽祖父は元内閣総理大臣の犬養毅。祖父は元外相の芳沢謙吉。夫の緒方四十郎は元自由党総裁・緒方竹虎の三男で元日本銀行理事。伯母伯父に評論家・犬養道子や元共同通信社長の犬養康彦がいる。

アメリカ、中国、香港などで幼少期を過ごし、小学5年生で日本に戻り聖心女子学院への編入学を経て、1951（昭和26）年聖心女子大学文学部英文科を卒業。その後、米ジョージタウン大学やカリフォルニア大学バークレー校の大学院に学び、1963（昭和38）年政治学博士号を取得。国際基督教大学 (ICU) 講師時代の1968（昭和43）年、参議院議員の市川房枝の要請で国際連合総会日本代表団顧問となった。1974（昭和49）年、国際基督教大学準教授。1976（昭和51）年、国連日本政府代表部公使を経て1978（昭和53）年より国連日本政府代表部特命全権公使、ユニセフ執行理事会議長を歴任。1980（昭和55）年より上智大学国際関係研究所教授、1990（平成2）年に国連人権委員会ビルマ人権状況専門官を経て、1991（平成3）年より第8代国連難民高等弁務官に就任し、2000（平成12）年退任。その後も、アフガニスタン復興支援国際会議共同議長、人間の安全保障諮問委員会議長（後に名誉議長）などの要職を歴任し、2003（平成15）年から国際協力機構 (JICA) 理事長、2012（平成24）年に退任してからは特別顧問に就任。2003（平成15）年に文化勲章受章。ほかイタリア、韓国、インド、ドイツ、フランス、ロシア、アメリカ、フィリピン、オランダ、イギリス、メキシコなどの各国で叙勲されている。2019（令和元）年10月22日死去。92歳没。