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北村兼子(大正時代の女性ジャーナリスト)が北但馬地震の際に兵庫県北部に救援に行った感想から[今週の防災格言259]

time 2012/11/26

北村兼子(大正時代の女性ジャーナリスト)が北但馬地震の際に兵庫県北部に救援に行った感想から[今週の防災格言259]


『 一袋の菓子 一個の缶詰でも、そこが感情に満ちた女のことであるから一掬いの水にも渇いた咽には更生のうれしさを与える 』

北村兼子(1903〜1931 / 大正から昭和初期の女性ジャーナリスト 随筆家)

北村兼子(きたむら かねこ)は中之島宗是町(大阪市北区中之島)出身の女性ジャーナリスト。父は漢学者の北村佳逸。祖父は京都亀岡の儒学者・北村龍象(りゅうしょう)。職業婦人がまだ珍しかった大正デモクラシーの時代、新聞社の花形記者として大活躍、モダン・ガールの一人として脚光を浴びた人物。

大正9(1920)年に梅田高等女学校(後の大手前高等女学校、現大阪府立大手前高等学校)を卒業、大阪外国語学校英語科(現大阪大学外国語学部)を経て、22歳の時に関西大学法学部法学科に入学。当時の教育制度上の制約から聴講生という資格ではあったが、同校初の女子学生として話題となる。大学2年のとき、大阪毎日新聞や大阪朝日新聞社の雑誌「婦人」に発表した論文が注目されると、大学3年在学中の大正14(1925)年に大阪朝日新聞社会部記者に採用された。婦人記者として活躍する傍ら「週刊朝日」「婦人」「グラフ」などに随筆、論評、詩などを多数寄稿し、入社後僅か一年で人気記者となった。
昭和2(1927)年、退職しフリーライターとなると、国漢文や英語・ドイツ語に堪能だった兼子は、昭和3(1928)年にホノルルで開催された汎太平洋婦人会議、翌4年にベルリンの万国婦人参政権大会に日本代表として出席。台湾や中国を巡るなど世界を舞台に活躍する。航空機時代の到来を予見し訪欧を計画、帰国後すぐに日本飛行機学校に入学し操縦免許を取得するも、出発直前の昭和6(1931)年7月26日に腹膜炎を患い急逝。享年28歳。

本格言は著書『ひげ(改善社 大正15年)』収録「震災地を一巡して」より。

この震災は、兼子が大阪朝日新聞社に入社したばかりの大正14(1925)年5月23日午前11時11分に兵庫県北部で発生した北但馬地震(M6.8)のことで、激震地となった但馬地方(豊岡市、円山川河口付近)では大きな揺れと直後の大火災により死者465人 重軽傷1,016人、全壊・全焼家屋3,220棟を出したもの。

兼子が所属する全関西婦人連合会と大阪朝日新聞社では、即時に救援の手を差し伸べ、兼子も救援隊の一員として豊岡、城崎、津居山、久美浜など被災地をまわっている。

曰く―――。

一時の亢奮(こうふん)に無理(一字欠落)勇気を引立てて居た人びとも落付くにつれて絶望の倦怠と変って行くそこへ情けある寄贈品を受けて、かくまで天下の同情はあると情けの潤いに復興の心をふり立てる気分は社会政策上決して見逃してはならぬ急所であろう、特に女の意気が消沈していることは非常なもので、これが復興に大きな障碍(しょうがい)となりはせぬかと私は恐れる、しかし一袋の菓子一個の缶詰でも、そこが感情に満ちた女のことであるから一掬いの水にも渇いた咽には更生のうれしさを与える、何でもという勇気の注射はたしかに配給品によって刺激せられることは実際その局に当ったもののみが知る神秘である、ただ一時のねぎらいに過ぎぬと思っては女の心理状態の取扱いが間違う。
<中略>
慰問品を初めて受取った村人たちは生れて初めての人の情けに泣いた、そして私(わたくし)を神とばかりに伏し拝んだ、私は神でもない、人間としては下積みの記者であるが、幸(さいわい)に齎(もた)らした尊い使命のために村人の顔を見た、併せて心を見た、けれども私は今から帰る、醇朴(じゅんぼく)な人たち、前途に幸(さち)あれ、私は再びあなた方と相逢わぬであろう、たった一時間の友だち、健やかであれと舟に乗れば、みなみな汀(みずぎわ)に来て泣く。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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