防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

中西進が広島土石流災害(2014年)で言及した防災と地名についての名言(1929~ / 国文学者・万葉学者 文化勲章受章)[今週の防災格言589]

time 2019/04/08

中西進が広島土石流災害(2014年)で言及した防災と地名についての名言(1929~ / 国文学者・万葉学者 文化勲章受章)[今週の防災格言589]

『 先人がつけた地名は、いわば過去に発生した災害の警告文です。 』

 

中西 進(1929~ / 国文学者 大阪女子大名誉教授 文化勲章)

 

格言は歴史学者の磯田道史氏との対談『災害と生きる日本人』(潮出版社 2019年)より。

2014(平成26)年8月20日未明、広島市に猛烈な短時間豪雨(3時間に217.5mm)が襲い、安佐北区から安佐南区にかけて土石流が多発した広島土石流災害に言及したもの。

風化が進んだ花崗岩(かこうがん)などが砂状になった「真砂土(まさど)」が大量の降水や岩石を含み土石流となって住宅地を直撃し、74人が亡くなった。

曰く―――。

磯田 最もひどい被害を受けた広島市安佐南区の八木地区は、かつて「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)」というものすごい地名だったそうです。

中西 「大地が崩落する悪路の谷」という字義ですね。あのように激しい傾斜地をそもそも宅地開発するべきではありませんでした。

磯田 いま思えば、そうです。

中西 「比治(ひじ)」「泥江(ひじえ)」という地名がありますが、あれは泥地の当て字です。「坍(土ヘンに丹)」「崩岸」「小豆」(いずれも「あず」)という地名にも注意しなければなりません。先人がつけた地名は、いわば過去に発生した災害の警告文です。

… … …

中西 進(なかにし すすむ)氏は、文化勲章(2013年)を受章した万葉集研究の大家として知られる国文学者。専門は日本文学・比較文学。「平成」に代わる新元号「令和」の考案者として報じられた。

1929(昭和4)年8月21日、東京府生まれ。
東京都立武蔵中学校(旧制)、広島大学附属高等学校を経て、1953(昭和28)年東京大学文学部国文学科を卒業。同大学大学院に進学し、1959(昭和34)年博士課程修了。1962(昭和37)年文学博士となり、博士論文で第15回読売文学賞受賞。筑波大学教授、大阪女子大学長、京都市立芸術大学長、帝塚山学院理事長・学院長、池坊短期大学長、日本学術会議会員などを歴任。宮中歌会始召人。日本学士院賞(1970年)、京都新聞文化賞(2002年)、文化功労者(2004年)、瑞宝重光章(2005年)、文化勲章(2013年)。日本比較文学会長、東アジア比較文化国際会議創始会長、日本ペンクラブ副会長ほかを務め、現在、全国大学国語国文学会長など。海外でもプリンストン大学客員教授、インド・ナーランダ大学復興に賢人会議・ボードの各メンバーとして貢献。
主な著書『万葉集の比較文学的研究』(読売文学賞)、『万葉と海彼』(和辻哲郎文化賞)、『源氏物語と白楽天』(大佛次郎賞)、『万葉みらい塾』(菊池寛賞)など多数。


中西進(一般社団法人日本学基金WEBページより)








■「洪水・水害」に関連する防災格言内の主な記事
「古今和歌集(平安時代初期)」巻十八・雑歌 下・933(題知らず・詠み人知らず)より(2022.10.10 防災格言)
長野県伊那地方の水害の伝承「未満水(ひつじまんすい)(1715年)」より(2020.06.29 防災格言)
落雷のまじない「くわばらくわばら(桑原桑原)」の伝承の由来(2021.07.05 防災格言)
菅原道真公と落雷の関係(くわばらくわばら(桑原桑原))(2021.07.12 コラム)
熊沢蕃山(1619~1691 / 江戸時代前期の儒者・武士 陽明学者)(2022.10.03 防災格言)
勝海舟[2](1823~1899 / 江戸・明治の政治家 従五位下・安房守 日本海軍の生みの親 伯爵)(2022.08.29 防災格言)
神田選吉(1856~1909 / 電気工学者・雷災史家 東京郵便電信学校校長)(2022.06.06 防災格言)
中田良雄(1905~1985 / 気象学者 「梅雨谷線(現在の梅雨前線)」を最初に導入した気象学者)(2022.06.27 防災格言)
中谷宇吉郎[2](物理学者・随筆家 カスリーン台風後の随筆「水害の話(1947年)」より)(2020.07.06 防災格言)
寺田寅彦[9](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2020.08.31 防災格言)
加々美武夫(室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
藤原咲平 (気象学者 室戸台風後の著書『天気と気候』より)(2013.10.28 防災格言)
丹羽安喜子(歌人 室戸台風で罹災)(2016.08.22 防災格言)
諫早豪雨の教訓から(1957年7月25日)(2017.07.10 防災格言)
長崎豪雨の教訓から(1982年7月23日)(中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(平成17年3月))(2021.08.16 防災格言)
松野友(岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02 防災格言)
及川舜一(元岩手県一関市市町 カスリーン台風とアイオン台風の大水害)(2015.09.14 防災格言)
小川竹二(元新潟県豊栄市長 下越水害)(2017.09.11 防災格言)
奥貫友山(利根川・荒川水害である寛保大水害時の慈善家)(2010.4.5 防災格言)
安芸皎一(河川工学者・土木技術者 東京大学教授 「伊勢湾台風」の名言)(2020.09.07 防災格言)
川合茂(河川工学者 舞鶴工業高等専門学校名誉教授)(2011.08.15 防災格言)
高橋裕(河川工学者 東京大学名誉教授)(2017.06.12 防災格言)
幸田文(随筆家・小説家 代表作『崩れ』『流れる』)(2015.05.11 防災格言)
桑原幹根(愛知県知事)(2014.09.15 防災格言)
廣井悠 (都市工学者)(2012.03.12 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
下田歌子 (歌人・実践女子学園創始者)(2009.12.14 防災格言)
平生釟三郎 (川崎重工業社長)(2009.11.02 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
吉田茂 (政治家)(2008.05.05 防災格言)
脇水鉄五郎(地質学者・日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
谷崎潤一郎 (作家)(2014.12.08 防災格言)
矢野顕子 (シンガーソングライター ハリケーン・サンディ水害)(2016.10.17 防災格言)
森田正光 (お天気キャスター)(2017.06.05 防災格言)
中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(2008年9月8日)より(2018.07.09 防災格言)
二宮尊徳翁(二宮金次郎)(江戸時代後期の経世家・農政家)(2012.01.30 防災格言)
上杉鷹山 (江戸時代中期の大名 出羽国米沢藩9代藩主)(2010.04.12 防災格言)
莅戸善政[1] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2008.03.17 防災格言)
莅戸善政[2] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2011.12.05 防災格言)
中江藤樹 (江戸時代初期の陽明学者 近江聖人)(2010.11.22 防災格言)
『百姓伝記』(1680~1682年・著者不明)巻七「防水集」より(2018.08.27 防災格言)
中西 進(国文学者 大阪女子大名誉教授 文化勲章受章)(2019.04.08 防災格言)
倉嶋厚(気象学者・お天気キャスター 元気象庁主任予報官)(2019.07.22 防災格言)
宮澤清治 (気象学者・NHK気象キャスター)(2016.09.05 防災格言)
高橋浩一郎(気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)(2019.10.14 防災格言)
中曽根康弘(政治家 内閣総理大臣(第71~73代))(2019.12.02 防災格言)
中貝宗治(台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
鍋島直正(大名・肥前国佐賀藩主(第10代) 「シーボルト台風」)(2019.12.09 防災格言)
利根川改修工事に見る水害の歴史(2010.2.26 編集長コラム)
利根川の洪水想定 首都圏で死者4,500~6,300人(2010.3.5 編集長コラム)
小田原評定(水俣土石流災害)(2006.1.29 編集長コラム)
豪雨そして土砂災害。その犠牲者はいつも老人ホーム(2010.7.20 編集長コラム)
アーノルド・ニーベルディング(1838~1912 / ドイツの法学者 政治家)(2020.09.14 防災格言)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)
[主な著書]「天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる!(興山舎 2012年)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,備蓄,防災グッズ,非常食
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ

人気記事