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和辻哲郎が著書『風土』で述べた日本人の自然観についての名言(1889〜1960 / 哲学者・評論家)[今週の防災格言359]

time 2014/10/27

和辻哲郎が著書『風土』で述べた日本人の自然観についての名言(1889〜1960 / 哲学者・評論家)[今週の防災格言359]

『 日本の人間は、自然を征服しようともせずまた自然に敵対しようともしなかったにかかわらず、なお戦闘的反抗的な気分において、持久的ならぬあきらめに達したのである。 』

 

和辻哲郎(1889~1960 / 哲学者・評論家 代表作『風土』『古寺巡礼』)

 

和辻哲郎(わつじ てつろう)は、兵庫県(姫路市仁豊野)出身の哲学者。
東洋思想に関心を深め、日本人としての立場から人間と文化への考察を進めて「和辻倫理学」と呼ばれる独創的な倫理学を完成させ、日本思想界に多大な影響を与えた人物。従弟に京都市長を務めた和辻春樹(船舶工学者)がいる。

格言は著書『風土(1931年)』より。
自然に対する日本人の「無常観」のようなものに言及している。

曰く―――。

暴風や豪雨の威力は結局人間をして忍従せしめるのではあるが、しかしその台風的な性格は人間の内に戦闘的な気分を湧き立たせずにはいない。だから日本の人間は、自然を征服しようともせずまた自然に敵対しようともしなかったにかかわらず、なお戦闘的反抗的な気分において、持久的ならぬあきらめに達したのである。日本の特殊な現象としてのヤケ(自暴自棄)は、右のごとき忍従性を明白に示している。 《中略》
きれいにあきらめるということは、猛烈な反抗・戦闘を一層嘆美すべきものたらしめるのである。すなわち俄然として忍従に転ずること、言いかえれば思い切りのよいこと、淡白に忘れることは、日本人が美徳としたところであり、今なおするところである。

 

尚、和辻は1923年(大正12年)9月1日の関東大震災で、東京千駄ヶ谷の自宅で罹災しており著作『地異印象記』では、

自分は大地震を予想しつつもそれに対してなんの手段も取らず、倒れた家の下になって死んだかも知れぬ

と省みながら

地震、大火、流言において我々が今経験したごときことを、再び社会的大地震において経験するならば、その災禍はとうてい今回のごとき局部的なものには留まらないであろう

と警鐘を鳴らしてもいる。

… … …

兵庫県神崎郡砥堀村(現姫路市)の医師の次男に生まれ、旧制姫路中学(現姫路西高校)、第一高等学校を経て、1909年(明治42年)、東京帝国大学文科大学哲学科に進学。在学中に谷崎潤一郎らと交際し、文芸雑誌の第二次「新思潮」に参加。1912年(明治45年)、大学を卒業し、東京帝国大学大学院へと進学。ニーチェ、キルケゴールなど西欧の実存哲学研究し、やがて仏教美術や日本思想史へと回帰、日本文化を見直した著書『古寺巡礼』がベストセラーとなるなど、風土を基盤とした文化史的哲学を生んだ。東洋大学教授、法政大学教授、京都帝国大学助教授、ドイツ留学を経て、東京帝国大学教授などを歴任。1950年(昭和25年)には倫理学会を創立し会長に就任し亡くなるまで務めた。『鎖国』で読売文学賞(1951年)、『日本倫理思想史』で毎日出版文化賞(1953年)。文化勲章受章(1955年)。
1960年(昭和35年)12月26日、心筋梗塞のため東京都練馬区の自宅で死去。享年71歳。








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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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