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田中康夫（1956～ / 作家・政治家元長野県知事）が阪神淡路大震災のボランティア活動を通じて述べた名言 [今週の防災格言577]

time 2019/01/14

folder 先人たちの防災格言政治家、官僚など地震作家、芸能人

田中康夫（1956～ / 作家・政治家元長野県知事）が阪神淡路大震災のボランティア活動を通じて述べた名言 [今週の防災格言577]

『自力で復興していこうと思う人に、「潤い」を与えることが必要』

田中康夫（1956～ / 作家・政治家元長野県知事元衆議院議員元参議院議員）

格言は1996（平成8）年2月28日に東京・よみうりホールで開催された読売新聞社主催「防災シンポジウム阪神淡路大震災から一年」より。

田中康夫（たなかやすお）は、阪神淡路大震災（1995年）の発生四日後の1月21日早朝西宮に入り、大阪で買った50㏄バイクにまたがって、大阪・東京間を往復して調達した日用品物資を被災者に直接手渡してまわる活動をはじめた。

当時から数多くの連載を抱える売れっ子作家だったので、原稿を早朝に片付けてから被災地へと通う生活がその後一年続くことになる。

活動を通して得られた感慨は、マスコミや大企業の偽善、被災者の心を汲みとれない知事や市長そして文化人らの体温の低さ、だった。

およそ一年余りのボランティア活動のレポートは翌年「神戸震災日記」（新潮社 1996年）としてまとめられた。

曰く―――。

《当日テレビを見て、私は何かしたいという気持ちが抑えきれなかったが、医師免許、大型特殊自動車の運転免許などの資格が何もない。カトリック教会に電話したら、「車で物資を運ぶのは極めて困難。バイクなら運べる」と言われたので、大阪でバイクを買い、四日後に被災地に入った。

避難所の人だけではなく、公園にテントを張っている人や半分壊れた家にとどまっている人のところを、御用聞きのように必要なものを聞いて届けることが、自分にできることじゃないかと思った。

夜通し電気がついている避難所で眠れないお年寄りのためにアイマスクやひげそりを航空会社の友人から調達した。ひげをそったおじさんが、「ああ、気持ちがいいわ」と言うのを聞いたときに思った。今まで私たちと同じ「豊かさ」の中に生きていた神戸の人たちが、一夜にしてがれきの中に閉じ込められてしまったのだと。
自力で復興していこうと思う人に何ができるんだろう。それは潤いを与えることではないか。テント暮らしの女性が口紅を一本、化粧水を一ビンもらったことで、前向きに自分で歩んでいこうという気持ちが持てるんじゃないかと考えた。》

1956（昭和31）年4月12日、武蔵境（東京都武蔵野市）生まれ。
小学2年生のとき一家で信州（長野県）へと引っ越し、信州大学教育学部附属松本小学校転入学。信州大学教育学部附属松本中学校を経て、1975（昭和50）年、長野県松本深志高等学校を卒業。東大受験に失敗して一年浪人生活。1976（昭和51）年、一橋大学法学部入学。大学在学中に発表した作家デビュー作『なんとなく、クリスタル』（河出書房新社 1980年）は文藝賞（第17回）受賞、100万部を超えるベストセラーとなった。
流行作家として、文芸誌のほか時事評論、エッセイ、音楽・ファッション・文化論、ホテル、レストラン、航空会社、デパート業界などへの評論など幅広い執筆活動を行なうかたわら、テレビ番組「笑っていいとも！」「平成教育委員会」等にレギュラー出演。
1995（平成7）年の阪神淡路大震災で「世話になった関西の街に恩返しをしよう」という生理から被災地入りしボランティア活動を一年間続けた。1998（平成10）年「神戸市民投票を実現する会」代表に就任。ボランティア活動を通じて神戸市の公共事業関連の問題を知り神戸空港建設反対運動のリーダーにもなった。
2000（平成12）年、長野県知事選挙に出馬し当選。2006（平成18）年まで長野県知事を2期務め、全国ワースト2位だった県財政を全国47都道府県で唯一、6年連続で債務残高を計923億円減少させ、基礎的財政収支も7年度連続で黒字化達成するなど活躍。
2007（平成19）年、参議院議員選挙比例区に新党日本から立候補し初当選。2009（平成21）年には衆議院総選挙に日本新党から立候補し当選し、2012（平成24）年の総選挙で落選するまで衆議院議員を1期務めた。
主な著書に『33年後のなんとなく、クリスタル』（河出書房新社 2014）など。

画像：wikipediaより