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三好十郎の生き直しを描いた戦後演劇『冒した者』の名言(劇作家・詩人)[今週の防災格言583]

time 2019/02/25

三好十郎の生き直しを描いた戦後演劇『冒した者』の名言(劇作家・詩人)[今週の防災格言583]

『 われわれは死にかけている。だから、生きるのだ。だから生きて行けるのだ。ホントはせいとは、かくのごときものだ。 』

三好十郎(1902~1958 / 劇作家・詩人 代表作『炎の人』など)

格言は戯曲『冒した者』(昭和27年)から「私」の台詞。

戦争などの非日常に際し人間は初めて生の充実感が得られる、という意味。

『冒した者』は 戦後の東京郊外でかろうじて焼け残った大屋敷を舞台にした劇で、「私」を含め九人の人間が集まり穏やかに暮らしていたところに、戦争帰りの一人の青年「須永」が訪問してきたことで、平和な日常が崩壊するという物語。

愛する者を失った人間が、生きながら死んでいるという状況になったときに、何がきっかけで再生できるかという、生きる意義を主題とした作品である。

1952(昭和27)年7月に三好十郎と岡倉士朗(1909~1959)の共同演出により劇団民藝で初演されたもので、この年の4月にはGHQが廃止され、安保条約が発効、敗戦後の日本が連合国(アメリカ)の占領政策から独立を果たした。

曰く―――。

《 私は生きて行くだろう。いや、今こそ、生きて行く。これまでは生きてもよければ死んでもよかった。しかしこれからは生きて行く。

・・・中略・・・

われわれは死にかけている。だから、生きるのだ。だから生きて行けるのだ。ホントは生とは、かくのごときものだ。足元を死にひたされている故に、生は生なのだ。散って落ちれば花びらは泥になる故に、花は花なのだ。その先っぽが死につながっていなければ生は生ではない。……窒息は近づいている。それは必ず来る。望みはない。だから生き得るのだよ。だから生は在り得る。

須永は窒息の不安に押し倒されたのだよ。私も不安だ。しかし押し倒されはしない。感情無しに、冷たく、それを眺め、迎える。窒息が最後に私のノドモトを掴みとるまで、私は私の歌を歌う。須永は恋愛をして、生の中の一番の生に触って見て、もう生きていられないことを悟った。

私はお前の死と、そして今須永の死とに触って見て、生きて行くことを知った。私は冷たい鋼鉄のように生きるであろう。 》

三好十郎(みよし じゅうろう)は、最初プロレタリア劇作家として出発したが、のちにマルクス主義に疑問を抱き転向、庶民の生活を題材にした戯曲を多く発表し、戦後は「無頼派」の一人に数えられた。

1902(明治35)年4月21日、佐賀市生まれ。4歳のとき三好家の養子となり、1920(大正9)年早稲田大学英文科入学。早大教授だった吉江喬松(1880~1940)に師事し詩作をはじめ、その推薦を受けて1924(大正13)年「早稲田文学」に詩を発表し、1925(大正14)年大学を卒業。マルクス主義に傾倒し、1928(昭和3)年壺井繁治、高見順らと左翼芸術同盟を結成し機関紙に処女戯曲『首を切るのは誰だ』を発表。1930(昭和5)年の戯曲集『炭塵(がす)』でプロレタリア劇作家として評価を得た。しかしマルクス主義思想や日本プロレタリア劇場同盟(プロット)に不信を抱き脱退。その後、『斬られの仙太』(1934年)、『彦六大いに笑ふ』(1936年)、『浮標(ぶい)』(1940年)、『獅子(しし)』(1943年)などを発表。1935(昭和10)年にはPCL文芸部(東宝の前身)に一時属しシナリオライターとして活躍した。戦後は戯曲座の指導者となり、画家ゴッホを描いた『炎の人』(1951年)を雑誌「群像」に発表し、同作で読売文学賞受賞。1958(昭和33)年12月16日、56歳で没。
三好十郎
三好十郎

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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