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正宗白鳥が関東大震災で罹災後に婦人公論「文明の力の薄弱さ」に述べた格言(小説家・劇作家・評論家 文化勲章受賞)[今週の防災格言560]

time 2018/09/17

正宗白鳥が関東大震災で罹災後に婦人公論「文明の力の薄弱さ」に述べた格言(小説家・劇作家・評論家 文化勲章受賞)[今週の防災格言560]

『 数分間の大地の震動のために、文化的設備がすべて壊されて、汽車も不通、電信電話も不通、電灯もつかなくなったことを思うと、人間が何千年で築いた文明の力の薄弱なことがつくづく感ぜられました。 』

正宗白鳥(1879~1962 / 小説家・劇作家・評論家 文化勲章受賞)

格言は『文明の力の薄弱さ』(「婦人公論」大正12年10月号)より。

牛込矢来下天神町(東京都新宿区)から大磯の台町(神奈川県中郡大磯町)に移住した正宗白鳥は、大正12(1923)年9月1日、44歳のとき関東大震災に遭遇した。生命の難は免れたものの、自宅が半壊したた め、二日間外で過ごしたという。

曰く―――。

随分ひどい地震でちょっと間誤(まご)つきましたが、ゆっくり戸外へ出たために瓦にも打たれず、ちっとも怪我をしませんでした。
広場へ出て衆と共に避難しました。近所の人が敷いてくれた戸板の上で炎天に照らされてゐると、皆が南無妙法蓮華経々々々々と眩いて、余震があるたびに女子供に縋(すが)りつかれるのが、少し可笑しくなりました。
二夜は庭先へ蚊帳を釣つて寝ましたが、澄んだ真夜の空の月を仰いで虫の声を聞いてゐると、不断の単調な生活が破られたやうで興味がありました。数分間の大地の震動のために、文化的設傭がすべて壊されて、汽車も不通、電信電話も不通、電灯も点かなくなつたことを思ふと、人間が何千年で築いた文明の力の薄弱なことがつくづく感ぜられました。
・・・《中略》・・・
私は東京がさういふ風では文学や出版は当分駄目だらうと思つて、一片付けがついたら田舎へでも引込むのだと考へた。この数年間文壇の景気があまりにもよ過ぎた。数分間の大地の震動に比すると、月評家の筆などは何の力もないのである。
大磯などでも東京人の別荘はすべて破壌されて、トタン屋根の貧弱な家は大抵は倒壊を免かれた。そして別荘の人々は町家へたのんで避難して雨露を凌ぐ有様である。数分間の大地の震動に比すれぱ、社会主義者の議論などは何の力もないのである。
今まで職に窮してゐた仕事師や屋根屋や瓦師などの鼻息が非常に荒くなりました。文筆の士の痩腕では果して以前の如く生きてゐられるでしょうか。

正宗白鳥(まさむね はくちょう / 本名:忠夫)は、明治12(1879)年3月3日、岡山県和気郡穂浪村(現在の備前市穂浪)の豪農正宗家の長男として生まれた。
弟に国文学者の正宗敦夫(1881~1958)、画家の正宗得三郎(1883~1962)、植物学者の正宗厳敬(1899~1993)がいる。

藩校「閑谷黌(しずたにこう)」を経て岡山のキリスト教系「薇陽(びよう)学院」でアメリカ人宣教師から英語を学び、明治29(1896)年、17歳で上京して東京専門学校(早稲田大学の前身)英語専修科に入学。
東京・市ヶ谷のキリスト教講習所で内村鑑三に感化され、明治30(1897)年、植村正久牧師により洗礼を受けたが、次第に教会から遠ざかった。文学科へ編入学し、明治34(1901)年、東京専門学校文学科を卒業。
島村抱月の指導で読売新聞「月曜文学」欄に批評を書いていた縁から、明治36(1903)年に読売新聞社に入社。記者として文芸欄を7年間担当すると美術、文芸、演劇の批評記事で名を馳せた。
明治37(1904)年、処女作『寂寞(せきばく)』で文壇デビュー。明治40(1907)年『塵埃(じんあい)』、明治41(1908)年『何処へ』を刊行し自然主義作家として知られることとなった。小説『泥人形(1911)』『入江のほとり(1915)』『牛部屋の臭ひ(1916)』のほか、『安土の春(1925)』『光秀と紹巴(1926)』などの劇作も多く試み、のちに活動の主軸を『文壇人物評論(1922)』『文壇的自叙伝(1938)』『自然主義盛衰史(1948)』『内村鑑三(1950)』などの評論執筆に注いだ。
昭和10(1935)年には外務省の呼びかけで島崎藤村や徳田秋声らと日本ペンクラブを設立、会長(2代目)を歴任。昭和25(1950)年、文化勲章受章。昭和37(1962)年10月28日、膵臓癌により死去。83歳。


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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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