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明治三陸地震(1896年)と昭和三陸地震(1933年)の石碑「大津浪記念碑」(岩手県宮古市重茂・姉吉集落)『此処より下に家を建てるな』の由来と名言 [今週の防災格言707]

time 2021/07/12

明治三陸地震(1896年)と昭和三陸地震(1933年)の石碑「大津浪記念碑」(岩手県宮古市重茂・姉吉集落)『此処より下に家を建てるな』の由来と名言 [今週の防災格言707]


『 此処より下に家を建てるな 』

大津浪記念碑(岩手県宮古市重茂・姉吉集落 / 建立年月日不明(1933年以降))より

碑文に曰く―――。

“ 高き住居は 児孫の和楽

 想へ惨禍の 大津浪

 此処より下に 家を建てるな

 明治二十九年にも昭和八年にも

 津浪は此処まで来て部落は全滅し

 生存者僅かに前二人、後に四人のみ

 幾歳経るとも要心お(を)せ ”

東日本大震災直後となる2011年(平成23年)3月末、政府の中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会(座長:伊藤和明、担当:首藤伸夫・武村雅之)」から過去の災害教訓をまとめた冊子『災害史に学ぶ~海溝型地震・津波編』が刊行された。

これは政府の専門調査会で2010年2月から作成がすすめられていた冊子だったが、未曽有の震災被害を受けて、数多くの教訓や知見が今後の対応に役立つだろうとの願いから編集途中(刊行直前の状態)で急遽発行されたものであった。この冊子のなかで大きく取り上げられて話題となったのが『此処より下に 家を建てるな』と刻まれた先人の石碑『大津浪記念碑』である。

『大津浪記念碑』は、岩手県宮古市重茂姉吉地区の海抜60メートル地点に建つ。

明治三陸地震大津波(1896年)では、この姉吉集落で60人が死に、2人だけが生き残った。
その37年後の昭和三陸地震津波(1933年)では、100人以上が亡くなり、4人だけ生き残った。
二度の大津波による壊滅的被害を受けた姉吉集落の住人らは後世のために「石碑」を建てた。
それから78年後に起った東日本大震災(2011年3月11日)では、この石碑のある重茂姉吉地区へ遡上した津波高(津波遡上高)は40.5メートルだった。
しかし、石碑の教えを守り続けてきた姉吉地区(当時11世帯・住民約40人)では建物被害が一軒もでなかった。

三陸海岸は、西暦869年(貞観11年)以降記録に残るだけでも数十回を数える津波に襲われている津波多発地帯である。
1896年(明治29年)6月15日の明治三陸地震の死者・行方不明者は21,959人を数え、1933年(昭和8年)3月3日の昭和三陸地震では、死者・行方不明者3,064人で、2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の死者・行方不明者22,303人であり、その被害の多くは三陸沿岸に集中した。

明治の津波(1896年)で大きな被害を受けた宮城県十五浜村大須(現・宮城県石巻市雄勝町大須)は、その後高台の地に村ごと移転し、昭和の津波(1933年)では津波被害を受けなかった。このような事例もあり、昭和の津波(1933年)の政府の復興政策(震災予防評議会「津浪災害予防に関する注意書」)では、積極的な「高地移転」と「地盤の地上」が行われるようになった。宮城県の15町村60集落、岩手県の18町村38集落で高台移転が行われ、移転の難しい5か所には防潮堤が建設され、三陸海岸には防潮林として松林が植林された。そして、特筆すべきは「将来への警告を刻むこと」という条件が付けられた義援金が各村に配布され、国家的な記念事業として、集落ごとに「石碑」が建てられたことである。

国土交通省によると、今も三陸沿岸に残る「津波の石碑」は、青森・岩手。宮城の東北三県で317基が確認されているという。そのうち、明治津波(1896年)とチリ地震(1960年)の石碑を除いた数が183基となる。
その多くは、この昭和三陸地震津波(1933年)の記念事業により建てられたものなのだろうと思う。

尚、姉吉集落の『大津浪記念碑』の建設費は、石碑の裏書によると、1933年(昭和8年)に東京朝日新聞社が主催して各町村に分配された義援金が使われたそうである。


写真:国土交通省東北地方整備局道路部「津波被害・津波石碑情報アーカイブ」より




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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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