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谷川健一の災害と地名についての名言(民族学者・日本地名研究所所長)[今週の防災格言609]

time 2019/08/26

谷川健一の災害と地名についての名言(民族学者・日本地名研究所所長)[今週の防災格言609]

『 (自然災害の危険を予知する)それらの地名は、人間が大自然の中の存在であることを忘れないようにとの警告でもある。 』

谷川健一(1921~2013 / 民族学者・日本地名研究所所長 文化功労者)

格言は、編著『地名は警告する―日本の災害と地名』(冨山房インターナショナル 2013年)の「序 災害と地名」より。

曰く―――。

《 今回の大震災では、宮城県名取市閖上(ゆりあげ)も津波の被害を受け、七百五十名にのぼる甚大な犠牲者を出したところである。「揺(ゆ)る」は風波が海底の砂を淘(ゆ)りあげて岸に押し寄せることで、閖上はそれにふさわしい地名であった。
また神奈川県の相模灘に面した大磯町、二宮町、平塚市あたりは、万葉集巻十四に、「相模路のよろぎの浜」と詠まれているところである。「よろぎ」も「ゆる」に由来する。大正十二年の関東大震災のときには、鎌倉市の海岸や大磯町にも津波が押し寄せて、死者を出した。 ・・・《中略》・・・ 日本列島は狭小な土地柄で山地がいきなり海に接して平野が少ない。急峻な河川が大部分であり、四周は海にかこまれている。こうして自然災害に侵される危険な地形にみちており、おまけに地震列島なので、当然のことながら、地名もまたその危険を予知するものが少なくない。それらの地名は、ここは危険な地域だから、ふだんから警戒を怠らぬようにと予告しているのである。それは地震や洪水や津波に対する警告にとどまらない。人間が大自然の中の存在であることを忘れないようにとの警告でもある。こうした地名の警告に真摯に耳を傾けることは、われわれが自然的存在であることを確認することにほかならない。自然は人間にとって、恩恵にみちた相手である一方では、ときには抗し難い暴力で襲いかかる脅威を兼ねた存在である。このことをあらかじめ知っておくことは、自然に対する人間の驕慢を防ぎ、人間を謙虚にするのに役立つであろう。 》

谷川健一(たにがわ けんいち)は、日本人の世界観、死生観で「谷川民俗学」と呼ばれる独自の研究を打ちたてた民俗学者・地名学者、評論家。日本地名研究所所長。文化功労者(2007年)。

1921(大正10)年7月28日、開業医の家の六人兄妹の長男として熊本県葦北郡水俣町に生まれる。実弟に詩人・谷川雁、東洋史家・谷川道雄、日本エディタースクール創設者の谷川公彦(吉田公彦)がいる。長男には考古学者・早稲田大学教授の谷川章雄。
小児結核を患い、幼少期の多くを家の中で過ごし、童話や児童文庫に夢中となったという。旧制熊本中学(現県立熊本高校)、旧制大阪府立波速高校文科を経て、東京帝国大学文学部(フランス文学)を卒業。1952(昭和27)年、平凡社の編集者となり、『風土記日本』『日本残酷物語』の企画編集や、1963(昭和38)年に日本初のグラフィックス誌『太陽』を創刊させ初代編集長を務めた。初の著作となる1966(昭和41)年の『最後の攘夷党』で第55回直木賞候補。1968(昭和43)年に平凡社を病気により退職。以降は、柳田国男や折口信夫の影響を受けながら、現地調査を踏まえた在野の日本民俗学研究、地名学・日本文学研究を独学で続けた。1978(昭和53)年「地名を守る会」を結成し、1981(昭和56)年には神奈川県川崎市に「日本地名研究所」を設立させ所長に就任。安易な市町村合併や改名に警鐘を鳴らした。1987(昭和62)年に近畿大学教授・同大学民俗学研究所長に就任(1996年まで)。数々の業績から2007(平成19)年に文化功労者に選出された。2013(平成25)年8月24日、92歳没。
主な受賞歴に『南島文学発生論』で芸術選奨文部大臣賞受賞(1991年)。南方熊楠賞受賞(1992年)、川崎市文化賞(2001年)、『海霊・水の女』で短歌研究賞(2001年)。
主な著作に『日本の地名』『常民への照射』『民俗の神』『出雲の神々』『青銅の神の足跡』『海の群星』『常世論』『白鳥伝説』『女の風土記』『神・人間・動物』など、共編『日本庶民文化資料集成(全20巻)』『日本民俗文化大系(全14巻)』『日本歴史地名体系(全50巻)』など多数。
谷川健一

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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