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津島佑子(小説家・太宰治の次女)の東日本大震災後の随筆「どうしてこんなことに」(藤原書店編集部編『3.11と私 東日本大震災で考えたこと(2012年)』集録)からの名言 [今週の防災格言692]

time 2021/03/29

津島佑子(小説家・太宰治の次女)の東日本大震災後の随筆「どうしてこんなことに」(藤原書店編集部編『3.11と私 東日本大震災で考えたこと(2012年)』集録)からの名言 [今週の防災格言692]

『 暗い家のなかに電気がはじめてともり、おお、まぶしい、なんて明るいんだ、これが近代文明というものなのか、と感嘆の声があがる。どこで刷り込まれたのかわからない、こんな近代文明の象徴としての電気のイメージが、私のなかにもあった。 』

津島佑子(1947~2016 / 作家 太宰治の次女 代表作『火の山―山猿記』)

東日本大震災で、地震と津波のおそろしさと、つかみどころのない原発の健康被害から“電気”のことを考えると、明治維新からの流れをたどり、日本が取りいれた近代文明やイギリスの産業革命に至り着いた。そして、日本やアジア諸国が不幸だったのは――――
《 西欧から突然ぶつけられた近代文明を表向きの面でしかとらえることができなかったところにあるのではないか 》
と思った、という。

格言は、藤原書店編集部編『3.11と私 東日本大震災で考えたこと』(藤原書店 2012年)集録「どうしてこんなことに」より。

曰く―――。

《 原発事故はふだん、なにげなく日常的に使ってきた電気にかかわるものだっただけに、まず電気とはなにか、電気を作るために、なぜ原子力にかくも依存しなければならなかったのか、原子力というものにどのような政治的な意味があるんだろう、と頭を悩ませることになった。かつてアメリカ軍によってふたつも原爆を落とされたこの地震列島に、いつの間にか五十四基もの原発が建てられていたとは、うかつにも気がつかずにいた。なんという無知! と我ながらあきれ、恥じた。恥じたけれど、どうしてこんなことに? という疑問は消えない。

・・・(中略)・・・

今度の3.11で私たちの目の前に露わになったのは、そうした日本のゆがんだ「近代化」だったのではないか。社会の仕組みを変えるには、これまでの概念を根本から問い直さなければならない。それにはたぶん、かなりのいたみを覚悟する必要があるのだろう。どんな社会で、どのように生きたいのか、ひとりひとりが懸命に、3.11の経験から考えはじめなければならない。小説家だって、当然、例外ではない。今の日本では、作家がマスメディアに依存する要素が高くなっている問題をどう考えればよいのか。産業革命に少しでもブレーキをかけたくて『チャタレー夫人の恋人』を書いたD・H・ロレンスという作家、あるいは『死刑囚最後の日』を書いて死刑廃絶を訴えたヴィクトル・ユゴーというフランスン作家の存在が、今、しきりに思い出されてならない。 》

津島佑子(本名・津島里子)は、太宰治(本名・津島修治)の次女として生まれ、生まれた翌年に父太宰が自死。さらに知的障害のある兄を12歳の時に亡くし、後にパートナーとの間に生まれた長男の急死という身近な者の死別体験から、人間の生死や近代的価値観を問い続けた作品で知られる、現代文学を代表する作家の一人。
劇作家の石原 燃(1972~)は実の娘で、初の小説「赤い砂を蹴る」が2020年(令和2年)に芥川賞候補となり話題となった。

1947年(昭和22年)3月30日、東京都北多摩郡三鷹町(東京都三鷹市)生まれ。父・太宰治、母・津島美知子の次女。1歳で父を亡くし母子家庭に育つ。白百合学園中学校・白百合学園高等学校を経て、白百合女子大学英文科に進学。在学中に同人雑誌「文芸首都」に参加し、1969年(昭和44年)に短篇『レクイエム』(『謝肉祭』河出書房新社所収)でデビュー。1972年(昭和47年)に『狐を孕む』が芥川賞候補となり大きな話題となった。結婚・出産・離婚の実体験を基にした『葎の母(1976年)』(第16回田村俊子賞)や『草の臥所(1977年)』(第5回泉鏡花文学賞)のほか、1978年(昭和53年)に長編『寵児』で第1回女流文学賞を受賞し、作家としての地位を築いた。
その後『光の領分(1979年)』(第1回野間文芸新人賞)、『黙市(1983年)』(第10回川端康成文学賞)、『夜の光に追われて(1987年)』(第38回読売文学賞)、『真昼へ(1988年)』(第17回平林たい子文学賞)、『風よ、空駆ける風よ(1995年)』(第6回伊藤整文学賞)、火の山―山猿記(1998年)』(第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞)、『笑いオオカミ(2001年)』(第28回大佛次郎賞)、『ナラ・レポート(2005年)』(平成16年度芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞)、『黄金の夢の歌(2012年)』(第53回毎日芸術賞)。
実姉の津島園子は、厚生大臣を務めた政治家・津島雄二夫人。2016年(平成28年)2月18日、肺がんにより東京都内の病院で死去。享年68。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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