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小倉和夫(1938~ / 外交官 元韓国大使・フランス大使 青山学院大学教授)の寄稿『災害――被害者、加害者、支援者、傍観者(藤原書店 2012年)』の名言 [今週の防災格言684]

time 2021/02/01

小倉和夫(1938~ / 外交官 元韓国大使・フランス大使 青山学院大学教授)の寄稿『災害――被害者、加害者、支援者、傍観者(藤原書店 2012年)』の名言 [今週の防災格言684]

『 我々ひとりひとりは災害の被害者であり、また、なんらかの意味で加害者でもあり、同時に傍観者でもあり、支援者にもなるといえる。 』

小倉和夫(1938~ / 外交官 元韓国大使・フランス大使 青山学院大学教授)

曰く――――。

人間の歴史、とりわけ近代文明の発達のもとで、人間が自然を「利用」し、人工的に作り変えたことが、被害を深刻なものにしていたとしたら、人間は、ある意味では、自然に対する加害者でもある。自然の猛威を猛威たらしめたものは、実は人間なのかもしれない。

人間社会の被害者のなかでも、原子力発電所は、自然災害の被害者であったが、同時に他の人間への加害者となった。被害を受けなかった人々のなかでも、いたずらに風評に流されて被災地の産物に白い目を向けた人々は、知らずうちに加害者になっていた。

そうしたことよりも深刻な事柄は、被害者は、ことの性質上、他の人々から、隔離され、疎外されることになりやすいことだ。被害者を特定し、被害者を算定するという行為、そして支援すること自体、被害者を他から区別する過程にほかならない。

このように、被害者はややもすると社会からいつのまにか「疎外」される危険があるだけに、被害を受けたコミュニティは、せめて自分たちの間ではさらなる亀裂を生むことをできるだけ回避しようとする。たとえば、この度の大災害で、目だった略奪はなかったが、パソコンや電気製品の盗難など、「小さな」こそ泥的行為は、なかったわけではない。しかし、人々はそういうことを語りたがあない。何故ならば、それを語り出せば、コミュニティのなかで、犯人捜しが盛んになり、亀裂が深まるからである。

破壊された社会的絆の再建もそう易しいことではない。物理的な移転や建設の問題に加えて、いままで隠れていた人間関係の葛藤が、再建の過程で表面化し、再建への道筋に合意することが難しいこともあるからだ。

これらすべてを考えると、結局一つの結論に達する。我々ひとりひとりは災害の被害者であり、また、なんらかの意味で加害者でもあり、同時に傍観者でもあり、支援者にもなるといえる。この矛盾を乗り越えることこそが、真の復興ではあるまいか。

格言は『災害――被害者、加害者、支援者、傍観者』より。
(藤原書店編集部編『3・11と私 東日本大震災で考えたこと』(藤原書店 2012年)集録)

小倉和夫(おぐら かずお)氏は、外交官として韓国大使、フランス大使、国際交流基金理事長などを歴任後、青山学院大学国際政治経済学部特別招聘教授を務める人物。

1938(昭和13)年11月15日、東京都出身。父親は、昭和時代に農林事務次官、食糧庁長官、政府税制調査会会長を務め「ミスター税調」と呼ばれた農林官僚の小倉武一(1910~2002)。
東京教育大学附属小学校(現・筑波大学附属小学校)、東京教育大学附属中学校・高等学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)を経て、1962(昭和37)年に東京大学法学部を卒業し、同年、外務省に入省。英語研修でケンブリッジ大学経済学部へ二年間留学し1964(昭和39)年に卒業。在連合王国日本国大使館に勤務、経済局国際機関第一課事務官、在英国日本国大使館一等書記官、香港総領事館領事、アメリカ局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、OECD代表部参事官、大臣官房審議官、大臣官房文化交流部長、経済局長を歴任。ベトナム大使(1994年~1995年)、韓国大使(1997年~1999年)、フランス大使(1999年~2002年)、国際交流基金理事長(2003年~2011年)を勤めた。その後、一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻客員教授(2009年~2011年 )、青山学院大学国際政治経済学部特別招聘教授(2015年~現職)。ほか東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会事務総長、日本財団パラリンピック研究会会長などに就任。
小倉和夫
日本記者クラブ会見(日本財団パラリンピック研究会代表)2015年11月

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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