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長田秀雄が関東大震災後に雑誌『中央公論』に記した格言(劇作家)[今週の防災格言463]

time 2016/10/31

長田秀雄が関東大震災後に雑誌『中央公論』に記した格言(劇作家)[今週の防災格言463]


『 私たちは、感情の上では、現在の社会、都会の現勢などを、
しらずしらず永久の相と思込んでいた。

大地震や、大飢饉くらいで、社会の組織が、
ああいう風に乱れようなどとは
少しも考えていなかったのである。

また、東京に、あんな歴史にもないような大火が、
この防火設備のととのった大正の今日
起ろうなどとは、夢にも思っていなかった。 』

長田秀雄(1885〜1949 / 詩人・劇作家 代表作『飢渇』『大仏開眼』など)

格言は、関東大震災後の寄稿『大正十二年を送りて、大正十三年を迎ふる辞』(「中央公論」第39年第1号 1924年1月1日)より。

曰く―――。

《 我々は大正十三年を新らしく迎ふるにあたつて、封建時代を押破つた時代の力を痛切に考へさせられるのである。無論、今回の大震や、安政の大地震が、直接、時代の急激な推移に直接の関係はないかも知れない。 が、然し古来の歴史を考へると、大地震、大飢饉と云ふやうな天変地妖の前後に、民心の覚醒が伴なつて起つてゐる事が多いのである。

これ迄、私たちは、感情の上では、現在の社会、都会の現勢などを、しらずしらず永久の相と思込んでゐた。大地震や、大飢饉くらひで、社会の組織が、あゝ云ふ風に乱れやうなどゝは少しも考へてゐなかつたのである。また、東京に、あんな歴史にもないやうな大火が、この防火設備のとゝのつた大正の今日起らうなどゝは、夢にも思つてゐなかつた。

然るに突如として我々の信念はくつがへされた。美くしい女の笑顔が、みるみる内に、髑髏(どくろ)に変じてしまつたやうな気がしたのである。

人生の悪夢に襲はれた私たちは、慄然として、何等成すところもなく、たゞ、立ちすくんでしまつた―――人生の意識が、戦慄してゐる内に変つてしまつたのである。

人間は如何なる災難に会つても、決して希望と空想とを失はない者である。新らしく来る大正十三年を迎ふるにあたつて、私はやはりこの事を深かく感じてゐる。 》

長田秀雄(ながた ひでお)は、明治末期から昭和初期に活躍した劇作家・詩人。明治18(1885)年、東京都麹町区の医師の家に生まれる。実弟に小説家の長田幹彦(1887〜1964)がいる。
獨逸学協会学校中等部(現獨協中学校・高等学校)を卒業後、明治大学で学ぶ。はじめは与謝野鉄幹の新詩社の機関誌「明星」の詩人として、獨協中学の同級生だった木下杢太郎や北原白秋らとともに「新詩派」の三羽烏として活躍。新詩社を脱退後は、木下や北原らとともに、文芸と美術家が交流を図る「パンの会」を興し、1908(明治42)年には木下、北原らと文芸誌「屋上庭園」を創刊し、また「スバル」にも詩を発表した。1909(明治43)年に処女戯曲『歓楽の鬼』が劇団「自由劇場」で上演されたのを機に、以降は新劇運動に携わり、劇作家として『飢渇』『大仏開眼』『石山開城記』『婦人の職業』などの脚本を手がけた。1919(大正8)年には畑中蓼坡、岡本帰一らと劇団「新劇協会」を旗揚げ、その後「芸術座」「市村座」にも属した。1934(昭和9)には秋田雨雀と「新協劇団」の顧問、1939(昭和14)年に「築地小劇場」代表となるなど、新劇界の重鎮として知られた。
晩年は鎌倉の長谷大谷戸(鎌倉大仏前)に隠棲し、1949(昭和24)年5月5日、胃潰瘍により死去。63歳。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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