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堀口大學（1892～1981 / 詩人・翻訳家・フランス文学者文化勲章受章(1979年)）の関東大震災の詩と名言 [今週の防災格言714]

time 2021/08/30

『昨日だれも知らなかった地震が来た。今日だれも知らない明日何が来るだろう。』

堀口大學（1892～1981 / 詩人・翻訳家・フランス文学者文化勲章受章(1979年)）

格言は、関東大震災直後の大正12年（1923年）11月（新潮社刊）に発表された詩『人間よ』より。（出典「編年体大正文学全集第十二巻大正十二年」(ゆまに書房 2002年)集録）

1923年（大正12年）7月、31歳の堀口大學は五年間の外遊を経て帰国し、当時大森区新井宿（現・東京都大田区山王三丁目）にあった「望翠楼ホテル」に宿泊していた。新詩社や慶應予科時代からの親友であった作家の佐藤春夫（1892～1964）も同じホテルに投宿し、9月1日の関東大震災では二人そろってこのホテルで罹災した。

曰く―――。

「人間よ」
昨日（きのふ）だれも知らなかつた
地震が来た
今日（けふ）だれも知らない
明日（あす）何が来るだらう
人間よ人間よ

堀口大學（ほりぐちだいがく）は、詩作やフランス近代詩を紹介した訳詩集『月下の一群』（1925年）の名翻訳など、生涯に三百点を超える翻訳書を刊行し、日本の近代詩に多大な影響を与えた人物。
石川啄木、北原白秋、高村光太郎、佐藤春夫らとともに与謝野鉄幹・晶子夫妻の門人としても知られる。

1892年（明治25年）1月8日、東京帝大の学生で、のちの外交官・堀口九萬一（ほりぐちくまいち）の長男として東京市本郷区森川町（現・東京都文京区本郷）に生まれる。在学中の子だったことから「大學」と名付けられた。4歳の時に母親が23歳の若さで早世。外交官となった父の仕事の都合で実家の長岡（新潟県）へ転居し、17歳まで長岡で過ごし、俳句・短歌を詠むようになる。
新潟県立長岡中学校（現・新潟県立長岡高等学校）を卒業後、1909年（明治42年）に上京し、与謝野鉄幹・晶子夫妻の「新詩社」に入り、1910年（明治43年）慶應義塾大学文学部予科に入学。与謝野鉄幹から推薦を受けて永井荷風の知遇を得て「三田文学」に詩歌の発表を始めた。
予科2年に進級した19歳の夏（1911年）、外交官の父の任地メキシコに赴くため、慶應義塾を中退。その後も父の任地、ベルギー、スペイン、スイス、フランスのパリ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ルーマニアに従い、青春時代の大部分となる十数年を海外で過ごし、33歳となる1925年（大正14年）に帰国するまで、詩作と愛好するフランス文学の翻訳にいそしんだ。
帰国後は東京・小石川区（現文京区）住み、戦時中は静岡県や新潟県に疎開し、戦後1950年（昭和25年）からは温暖な葉山（神奈川県）に移住し終生ここで過ごした。1981年（昭和56年）3月15日、急性肺炎のため葉山町の自宅で死去。89歳。
日本詩人クラブ名誉会員（1970年）、日本現代詩人会名誉会員（1971年）、新潟総合テレビ文化賞（1973年）、勲二等瑞宝章（1974年）、葉山町名誉町民（1975年）、文化勲章受章（1979年）。

33歳頃