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青木幹雄が2005年の年初の国会参議院本会議で述べた名言（1934～2023 / 政治家元内閣官房長官）[今週の防災格言780]

time 2023/06/19

『自然災害の前に人間は無力ではありますが、事前に対策を講じておくことによって被害を最小限にすることは可能であります。』

青木幹雄（1934～2023 / 政治家・参議院議員(4期) 内閣官房長官(第64-65代) ）

格言は2005年（平成17年）の年初1月25日に開催された国会参議院本会議（議事録）より。
第2次小泉改造内閣・小泉純一郎首相（官房長官は細田博之）に対し、当時、自由民主党参院議員会長だった青木が自民党を代表して質問したもの。

曰く―――。

昨年は災害の非常に多い年でありました。
十個の台風が上陸をし、さらに、新潟中越地方の地震では今なお多くの方々が不自由な仮設住宅での生活を余儀なくされておられます。 …(中略)… また、昨年の暮れに発生したスマトラ沖地震とインド洋大津波では、未曾有の被害に世界中の人々が言葉を失いました。 …(中略)… 自然災害の前に人間は無力ではありますが、事前に対策を講じておくことによって被害を最小限にすることは可能であります。このような大災害を教訓に、生命、財産を守る防災事業の強化について政府に強く要望をしておきます。

… … …

2004年（平成16年）は災害がとても多い年でした。

年間の台風発生数は29個で平年と余り変わりませんでしたが、この年、6月11日の台風4号の高知県室戸市付近への上陸を皮切りに、台風6号（6月）・10号（7月）・11号（8月）・15号（8月）・16号（8月）・18号（9月）・21号（9月）・22号（10月）・23号（10月）と、一年間に台風が10個も上陸し、1951年以来で歴代1位の記録を更新しました。歴代2位の上陸数が6個なのでいかに多いかが分かります。
さらに台風の日本への接近数も19個となり、歴代1位タイ記録となりました。

そして、これら台風の接近に伴う大雨が、6月～11月にかけて日本各地を襲うことになります。

台風4・6号（6月死傷122人）、新潟・福島豪雨（7月13日死傷20人）、福井豪雨（7月18日死傷23人）、台風10・11号（7月死傷22人）、台風15号（8月死傷38人）、台風16号（8月死傷305人）、台風18号（8月死傷1,410人）、台風21号（9月死傷125人）、台風22号（10月死傷175人）、台風23号（10月死傷650人）、11月の静岡豪雨（死者1人）と、分かっているだけで死傷者は2,891人を数えました。

さらに、10月23日には新潟県中越地震（M6.8 新潟県で震度7 死傷4,873人）が発生します。

ほかにも紀伊半島南東沖地震（9月5日・9月7日 / M7.4 M6.9 三重県・奈良県・和歌山県で震度5弱津波あり重軽傷36人）、岩手県沖地震（8月10日 / M5.8）、茨城県南部地震（10月6日 / M5.7）、与那国島近海地震（10月15日 / M6.6）、北海道釧路沖地震（11月29日 / M7.1 重軽傷52人）、根室半島南東沖地震（12月6日 / M6.9 北海道で重軽傷12人）、留萌支庁南部地震（12月14日 / M6.1 北海道で軽傷8人）と震度5以上を観測する地震も多発しました。

9月には浅間山が噴火（9月1日～23日）し、年末の12月26日には、スマトラ沖大地震・インド洋大津波（M9.1 日本人死者44人を含む死傷35万人）が発生しています。

… … …

この2004年（平成16年）は、先（2002年）に帰国していた北朝鮮拉致被害者（蓮池さん、地村さん、曽我さん）の家族が日本に帰国を果たした年で、イラク戦争（2003年）後テロが続くイラクへの自衛隊サマーワ派遣問題（延長問題）や、途上国への人道支援ODA（政府開発援助）の予算削減問題など、“聖域なき構造改革”を推し進め「21世紀日本外交の基本戦略」を標榜した小泉内閣のもと国際社会における日本の役割も大きく議論されていました。

この発言の直前の2005年（平成17年）1月6日には、インドネシアで開催されたASEAN緊急首脳会議に出席した小泉首相は、10日前に発生したインド洋大津波への最大限の支援を表明し、インド洋における津波被害軽減の早期警戒システムの整備をふまえ国連防災世界会議の特別会合開催を提案するなど、アジア地域の国際支援で日本のイニシアチブを発揮していました。

その様な流れのなか、自民党総裁選挙（2003年）以降小泉推薦人を務めていた青木幹雄のこの質問内容に小泉首相は…

率直な直言をいただき誠にありがとうございます。激励と受け止めて大いに頑張ってまいります。

と答えています。

… … …

青木幹雄（あおきみきお）は、小渕内閣の官房長官（第64、65代）や自民党の参議院議員会長などを歴任し、政界への大きな影響力を持ったことから“参院のドン”とも呼ばれた政治家。

1934年（昭和9年）6月8日、島根県の漁協の組合長を務める網元の家に生まれる。竹下登総理大臣秘書や島根県議会議員（5期）などを経て、1986年（昭和61年）の参議院選挙で初当選して以降、参議院議員を4期務めた。
1998年（平成10年）小渕内閣で自民党の参院幹事長に就任し、1999年（平成11年）には小渕内閣の官房長官として初入閣。2000年（平成12年）小渕首相が緊急入院し意識不明の状態になった際、総理大臣臨時代理に就任し内閣総辞職から森内閣発足までの対応にあたった。
2003年（平成15年）の自民党総裁選挙では、自身が所属した橋本派の候補ではなく小泉首相の再選を支持。2007年（平成19年）の参議院選挙で自民党が大敗した際には、津島派（旧橋本派）議員らが相次いで落選したためその責任を取って自民党参院議員会長を辞任した。
2010年（平成22年）の参議院選挙では体調不良を理由に立候補を取りやめ、長男の青木一彦を後継候補として議員引退を表明したが、引退後も強い影響力を保ち続けた。2023年（令和5年）6月11日死去。89歳。

写真：小渕第2次改造内閣での野中広務前官房長官と青木幹雄官房長官（平成11年10月）
政府広報誌「時の動き 2000年1月号」より