『 過去を振り返らない者は、過去を繰り返す運命にある。 』
“Those who cannot remember the past are condemned to repeat it.”
ジョージ・サンタヤナ(1863~1952 / スペイン系アメリカ人の哲学者・詩人・小説家)
出典は、著書「 The Life of Reason: The Phases of Human Progress(理性の歴史:人間の進歩の諸段階), vol.1 : Reason in Common Sense(第1巻、常識のなかの理性)(1905年)」から「Continuity necessary to progress(進歩に必要な継続性)」の項より。 ※日本語訳は平井@編集主幹です。
曰く――――。
進歩というのは、変化という意味からは遠く、定着性(保持性)に依拠しています。
変化が確実に生じたとき、そこには進歩すべき存在そのものが残っていないので、この場合には改善の可能性はないと言えます。
例えば、過去の経験を活かせない野生人たちならば、まるで幼い子供のような時代を永久に続けることでしょう。
つまり、過去を振り返らない者は、過去を繰り返すことを余儀なくされているのです。
・・・(中略)・・・
しかし、アイデンティティを失ってはならないので、再適応の全てが進歩しているとまでは言えません。
ラテン語がイタリア語に移行したとき、ラテン語は進歩せず死語となりました。イタリア語圏の人たちは、母語の発祥に同情をするかもしれませんが、その親が絶滅したという事実は変わりません。
このように、すべての個人、国家、宗教には適応の限界があるのです。
世代や言語や宗教の継承とは、最初に存在していた理想が最後まで伝わり、そこでより良い表現に到達しない限りは進歩を構成しないのです。
繰り返しとなりますが、定着性(保持性)こそが進歩の条件なのです。“ Progress, far from consisting in change, depends on retentiveness. When change is absolute there remains no being to improve and no direction is set for possible improvement: and when experience is not retained, as among savages, infancy is perpetual. Those who cannot remember the past are condemned to repeat it. ・・・(中略)・・・ The Latin language did not progress when it passed into Italian. It died. Its amiable heirs may console us for its departure, but do not remove the fact that their parent is extinct. So every individual, nation, and religion has its limit of adaptation; so long as the increment it receives is digestible, so long as the organisation already attained is extended and elaborated without being surrendered, growth goes on; but when the foundation itself shifts, when what is gained at the periphery is lost at the centre, the flux appears again and progress is not real. Thus a succession of generations or languages or religions constitutes no progress unless some ideal present at the beginning is transmitted to the end and reaches a better expression there; without this stability at the core no common standard exists and all comparison of value with value must be external and arbitrary. Retentiveness, we must repeat, is the condition of progress. ”
ジョージ・サンタヤナ(George Santayana)は、スペイン系アメリカ人の哲学者・詩人・小説家で、数多くの分野にまたがる幅広い文化批評家として知られる人物。
多くの哲学書、評論、小説、戯曲、詩の著作を残し、親しみやすく哀愁を帯びた彼の優れた散文は、今も格言として頻繁に引用されている。
彼は、スペインで生まれ、8歳から48歳までアメリカで暮らし、フランスやイギリスに移住し、晩年はイタリアで過ごし、ローマで生涯を閉じた。
1863年12月16日、マドリードで生まれ、幼少期をスペインのアビラで過ごした。母親は、植民地時代のフィリピン駐在スペイン人役人の娘、父親は公務員で画家という知識人で、二人はフィリピン時代の旧友だった。母親は再婚でジョージ・サンタヤーナを生み、1869年、6歳のジョージと彼の父親を残し、亡くなった前夫とのあいだの3人の子供たちを連れてアメリカのボストンへと渡ってしまった。1872年にジョージと父親は母親に従いボストンに移ったものの、母親との仲が悪化した父親は単身アビラへ戻り、その後の生涯をスペインで過ごしたという。
ジョージは、ボストン・ラテン・スクールとハーバード・カレッジで学び、哲学者・心理学者のウィリアム・ジェームズ(1842~1910)とジョサイア・ロイス(1855~1916)らに師事。ハーバード大学の在学中に「哲学クラブ」を創設させ会長に就任、文学雑誌「ハーバード・マンスリー」の創設、「ハーバード・ランプーン」の編集者兼漫画家などで活躍した。
1886年ハーバード大学を卒業後、イギリスのキングス・カレッジ(ケンブリッジ大学)やドイツ・ベルリンへの留学を経て、1889年から1912年までハーバード大学教授を務めた。1912年ハーバード大学を辞して、残りの人生をヨーロッパで過ごした。アビラ、パリ、オックスフォードで数年暮らし、1920年以降はローマで冬を過ごすようになり、晩年はローマに定住した。ヨーロッパでの40年間で19冊の本を執筆し、権威ある学術的地位を薦められたが全て辞退した。1935年に発表した唯一の小説『最後の清教徒(The Last Puritan)』が予想外のベストセラーとなり、その後の生活に金銭的な余裕も生まれ、後にノーベル文学賞作家となるバートランド・ラッセル(ラッセル伯爵 / 1872~1970)など多くの作家らに経済的な援助を行った。援助した作家のなかには、政治哲学的に相反する立場の作家らも含まれていたという。
彼は無神論者であったが、自分自身を「美的カトリック」と考え、人生の最後の10年をカトリックの修道女の世話になりながらローマの邸宅で過ごした。1952年9月26日、88歳で死去。
主な受賞歴に、王立文学会ベンソン・メダル(1925年)、コロンビア大学バトラー・ゴールド・メダル(1945年)、ウィスコンシン大学名誉学位(1911年)。
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