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サー・ジョン・ベディントン教授(1945~ / 福島第一原発事故当時の英国政府首席科学顧問で英国政府緊急時科学諮問委員会(SAGE)委員長を務めた人物)の東日本大震災への政府対応の教訓についての名言 [今週の防災格言691]

time 2021/03/22

サー・ジョン・ベディントン教授(1945~ / 福島第一原発事故当時の英国政府首席科学顧問で英国政府緊急時科学諮問委員会(SAGE)委員長を務めた人物)の東日本大震災への政府対応の教訓についての名言 [今週の防災格言691]

『 最も明確な教訓は、あらゆるシナリオでリスクを検討し、そのうちのいくつかを実行に移す必要があるということです。常にできることはたくさんあるのです。 』

“ Absolutely, the clearest lesson of all of this — is that one needs to look at the risks in terms of a whole range of scenarios and then exercise a number of them. There is always more that can be done. ”

 

サー・ジョン・ベディントン(1945~ / 元英国政府首席科学顧問 オックスフォード大学マーティンスクール上級顧問・教授)

 

格言は、2020年12月9日開催の英国議会「リスク評価・リスク計画委員会選定委員会(Select Committee on Risk Assessment and Risk Planning):リスクアセスメントとリスク計画」議事録より。

曰く――――。

福島原発とその余波への対応は、まずまずの出来だったと思います。
まず、いろいろな情報源をあたって情報を得なければならず、私が結成したSAGE委員会がその役目を果たしました。そして、特定の原子炉に、どれだけの放射性物質があるのかを知ることができました。また、水素爆発後に放射性物質がどのくらい拡散したかも、十分な推定値を得ることができました。さらに、日本の気象庁から4時間ごとの天気予報を得られたので、それらのアドバイスを提供することもできました。

・・・(中略)・・・

私たちは、首相や内閣から投げかけられた質問に答えるための科学的評価を行うことができました。それは基本的には、日本にいる英国民を避難させるべきか、英国大使館を東京から移設させるべきか、といった事柄であり、それらについてSAGEから助言を与えたのです。

私たちの導き出した見解は、合理的に考えられる最悪のケースであっても、基本的に心配するほどの放射能量ではなく、結論として、自国民を避難させたり、大使館を移動させる必要はない、というもので、SAGE委員会からの明確なアドバイスとして提出されました。

しかし、いくつか問題も発生しています。
私たちが内閣への助言を準備していたその日に、フランス政府が、日本から全職員の避難を決定したのです。フランス政府の動きに関連して、私は当時の閣僚や首相からかなりの数の質問を受けましたが、私どもの行ったアドバイスは基本的に正しかったと断言できます。

当時の駐日大使であるデビッド・ウォーレン氏に相談したところ、彼は、大使館に電話をかけてきた人たちを対象に質疑応答を行うことを提案してくれました。
私は、そのうち四回の企画に関わり、保健省、食品基準局、放射性物質の爆発モデル化に携わる人たちをこの質疑応答に参加させることで、ほとんど全ての疑問に回答を行い、その質疑応答内容は、すぐに大使館が翻訳して公表するようにしたのでした。

このようにして、事故当時の日本人らは、英国から独立した科学的アドバイスを受けることができたのです。これは、その当時、福島の被害を憂慮する報道が数多くなされていたこととは対照的です。これが功を奏したのだと思っています。

 

サー・ジョン・ベディントン教授(Professor Sir John Beddington)は、再生可能資源の持続可能な管理に関する生物学と経済学の専門家で、英国政府、欧州委員会、国連環境計画・食糧農業機関などの世界の主要機関において、漁業の開発・管理に関する上級顧問を務める人物。
特に、2011年3月の福島第一原発事故(東日本大震災)当時に英国政府首席科学顧問を務め、英政府・英首相らの危機対応に対する数々の助言を行ったことで世界的に知られる。

事故当時、英政府内ではベディントン教授を委員長とする緊急時科学諮問委員会(SAGE = Science Advisory Group in Emergencies)が召集され、専門家らの科学的根拠に基づいた政府の統一的な指針が決定された。
この時の「東京は安全なので(在日英国人の)避難は必要ない」「窓を閉めて屋内にいれば神経質になることはない」など分析結果は、即時にソーシャルメディアなどを通じて公開された。事故直後の情報が錯綜するなか、これらの情報は、英国民だけでなく、日本政府の対応にも多大な影響を与えた。ベディントン教授の科学的貢献に対し、日本政府は2014年7月に「旭日中綬章」を授与された。

1945年10月13日生まれ。イギリス国境に近い南東ウェールズのモンマス・スクールで学び、その後、ロンドン大学・スクール・オブ・エコノミクスに入学し、1967年に経済学理学士、1968年に理学修士号を取得。1968年から1971年まで、エジンバラ大学の研究助手を経て、1971年から1984年まで、ヨーク大学で集団生物学の講師となり、1984年からインペリアル・カレッジ・ロンドンで応用人口生物学の教授を務める。
2008年から2013年までゴードン・ブラウン首相のもと英国政府首席科学顧問に就任し、福島第一原子力発電所事故、アイスランド火山噴火、英国のトネリコ病(苗木感染)などの災害対策への英国政府対応の策定に深く関わった。その後、2013年から2018年まで、オックスフォード大学マーティン・スクールの上級顧問を務めた。
主な受賞に、ハイデルベルグ環境賞(1997年)、英国王立協会フェロー(2000年)、エリザベス2世から聖ミカエル・聖ジョージ勲章(CMG)(2004年)、英国騎士学士(Knight Bachelor)(2010年)、エジンバラ王立協会フェロー(2011年)、英国王立工学アカデミー名誉フェロー(2012年)。


Professor Sir John Beddington, 2012 photo by Wiki.

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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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