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渡部昇一が著書『決定版 日本人論』に記した格言(上智大学名誉教授)[今週の防災格言487]

time 2017/04/24

渡部昇一が著書『決定版 日本人論』に記した格言(上智大学名誉教授)[今週の防災格言487]


『 最大の国難とは、
日本人のアイデンティティーが
失われてしまうことである 』

渡部昇一(1930〜2017 / 英語学者・評論家 上智大学名誉教授)

曰く―――。

《 名だたる日本企業の不祥事で、日本の、ひいては日本人の「強み」は失われたという人もいるかもしれない。だが、それは間違っている。アメリカのような大国に影響されるのは島国の日本では当然なことで、日本の歴史をみればずっと海外の影響下にあるのである。

しかし、歴史から鑑みて、長い月日の中で見れば、さざ波のような出来事でしかない。日本の、日本人の「強み」は、海の底に広がる岩盤のように確固とし根付いているのである。

その証拠は、二度にわたって日本を襲った震災の中にみることができる。未曽有の被害を被った東日本大震災の時、人々は混乱なく整然と並び、暴動や略奪行為もほとんど起こらなかった。自分のことより人を慮(おもんばか)る態度に、世界は驚嘆したというニュースをお聞きになったのは皆さんご存知の通りだろう。

そして、2016年4月に発生した熊本地震は、改めて地震災害の恐ろしさを実感させられた。にも関わらず、東日本大震災の時と同様、被災者たちは秩序を保ち自制した避難生活を今でも送っている。厳しい状況におかれても、自分のことばかりではなく、他の被災者を慮り、手を差し伸べているのも変わりはない。

海外では、人種問題から端を発したロサンゼルスの暴動事件のように、いったん世の中が無秩序になったと思えば、民衆は暴徒と化し、店舗や人家を破壊したうえ、金品を強奪するということは普通に起こることなのである。

なぜ、日本人は大震災のような中でも、世界が驚嘆するような秩序を保つことができたのか?≪中略≫

実は、私は日本人というものが、どういう歴史を辿って形成されてきたのかを、日本人自身が理解できていないように思うことがある。 ≪中略≫

日本の皇室は他の国の王朝とは異なる特色をもっている。ほとんどの国は、時代によって王朝は倒され、時には支配者の民族が入れ替わっている。ところが、日本の場合は『古事記』『日本書紀』に示されている通り、神話から始まる皇室が万世一系の流れで現代に受け継がれて連続性をもっているのである。

日本の歴史をみたとき、この万世一系の連続性を考慮しない限り、説明が不可能な史実が日本史には随所に存在していることが本書を読み進めていただければわかるはずである。

近々の例を挙げれば、興味深いことに熊本地震の時、他県から熊本に乗り込んで盗難を働いたごく一部の不届き者に対して、日本全国から憤りの声がいっせいに上がったことである。それはまるで、日本全体がひとつの運命共同体となり、一枚岩で熊本地震に臨もうとしているようであった。

日本人が個別に意識しなくても、古代から途絶えることなく続く歴史が、日本人の骨となり肉となっていて、日本人の矜持を形作っているのである。日本人はこのことを決して忘れてはいけないのである。 》

(著書『決定版 日本人論(扶桑社新書 2016年)』の「まえがき」より)

国の継続には、力ではなく精神的権威こそ重要である―――と著者は考える。また著者は、文明史家アーノルド・J・トインビーやフィリップ・バグビー、マシュー・メルコ、サミュエル・ハンチントン、アーサー・ウエイリー、ライシャワー(駐日アメリカ大使)などの言説『 日本は「一民族一文明」であり、他の文明とは一線を画している 』を紹介しながら、

《 日本人として誇りをもってもらいたいと思うときに、私はいちばん重要だと思うことは、日本が、日本一国だけで一つの文明圏を形作っていることである 》

と述べる。そして、

《 日本だけが持つ「日本語」「皇室」「神社」「日本仏教」という四つの要素が、日本人のアイデンティティーを構成している 》

と論じ、それにより、

《 自然や人や他国と対立せず、拒否せず、排除もせず、それを受け入れて自分の中になじむように収めてしまう知恵が養われた。すべてを受容するというこの知恵は、日本人の体質になっている。すなわち、それが日本人の「強み」なのである 》

と結論している。

渡部昇一(わたなべ しょういち)さんは、保守派の論客として、歴史認識問題や政治を題材に積極的な評論活動を行った山形県鶴岡市出身の英語学者。上智大学名誉教授。
山形県立鶴岡第一高等学校(現山形県立鶴岡南高等学校)、上智大学大学院(西洋文化研究科修士課程)を経て、ドイツのミュンスター大学大学院博士課程修了。その後、オックスフォード大学などの留学を経て、上智大学教授となった。1976(昭和51)年、読書を中心にした独自のライフスタイルを説いた『知的生活の方法』は100万部超のベストセラーとなり、同年『腐敗の時代』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
たいへんな蔵書家で、その知識は専門の言語学だけにとどまらず、政治、経済、歴史、哲学など多岐にわたった。また「マーフィーの法則」を日本で最初に紹介した人物としても知られる。
2017(平成29)年4月17日、心不全により東京の自宅で死去。86歳。
瑞宝中綬章受勲(2015年)。

写真は日本財団WEBより

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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