『 安政の御代にこうした大地震、こんな事なら変ええ でもよし 』
名和 靖(1857~1926 / 昆虫学者 名和昆虫研究所(岐阜市)の創設者)
格言は、名和が幼心に覚えていた当時流行した落首(らくしゅ=風刺歌)から。
孝明天皇の御代、嘉永(かえい)七年十一月に「安政(あんせい)」と改元された。
嘉永七年一月(1854年2月)、ペリー提督が率いる米国艦隊が江戸湾に再び現れ、三月に幕府は米国との間に日米和親条約(神奈川条約)が結ばれる。日本は二百年続いた鎖国を解くことになるが、この後、国内は開国派、攘夷派の対立が激化していくことになる。
黒船来航に始まるこの嘉永七年は、四月(5月2日)に京都の大火で内裏が炎上、六月(7月9日)には伊賀上野地震(安政伊賀地震 M7.3 死者1,500人)、十一月には安政東海地震(12月23日 M8.4 死者30,000人)・安政南海地震(12月24日 M8.4)が連続発生し、豊予海峡地震(12月26日 M7.4)と大地震が続いた。
幕府は、打ち続く災異により政治の安定を願って、嘉永七年十一月二七日(1855年1月15日)に「安政(あんせい)」と改元する。
しかし、改元から三ヶ月後の安政二年二月(1855年3月18日)には飛騨地震(M6.8)、その間に東海・南海地震の余震も続発し、十月(1855年11月11日)には関東直下を安政江戸地震(M7.4)が襲い一万人が亡くなった。その後も安政年間(1855~1860年)には各地で大地震が続き、安政の大獄や井伊直弼の暗殺事件(桜田門外の変)といった大事件により世の中が大きく揺れた。
黒船来航から続発する災異によって、幕府は安政七年三月十八日(1860年4月8日)に「万延(まんえん)」と改元するが、そのわずか一年後、こんどは万延二年二月十九日(1861年3月29日)に「文久(ぶんきゅう)」と改元されることになる。
名和靖(なわ やすし)は、明治・大正時代の農業の害虫駆除と予防知識の普及に貢献した昆虫研究家。ギフチョウの発見者として知られる。
安政4年10月8日(1857年11月24日)、美濃国本巣郡船本村(岐阜県瑞穂市重里)生まれ。号は白蟻。
明治15(1882)年、岐阜農学校(現・岐阜県立岐阜農林高等学校)を卒業後、岐阜農学校と華陽学園で教職につき、後に帝国大学(東京大学)に学んだ。岐阜師範学校(後の岐阜大学)や岐阜中学校で教鞭をとったが、昆虫研究が単に個人の趣味ではなく社会的に極めて大切な事業であると感じ、明治29(1896)年に退職し、岐阜市に名和昆虫研究所を設立し、以降は昆虫学と農業における害虫の駆除や予防についての知識の普及に努めた。月刊誌『昆虫世界』を創刊し多数の論説や報告を執筆。大正15(1926)年8月30日、68歳没。
名和は濃尾大地震(1891年)で岐阜の実家や仮寓などが全て倒壊した経験を持つ。のちに関東大震災(1923年)の報に接し、その被害に心を痛めた名和は、岐阜の病床にあって、赤十字社や愛国婦人会などを通じてすぐに募金活動をした、という。
名和靖と夫人(大正12年1月20日)
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