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道重信教(増上寺79世法主・浄土宗大僧正)が関東大震災後に述べた言葉から(原典は「易経」坤・文言伝より)[今週の防災格言565]

time 2018/10/22

道重信教(増上寺79世法主・浄土宗大僧正)が関東大震災後に述べた言葉から(原典は「易経」坤・文言伝より)[今週の防災格言565]

積善せきぜんの家には余慶よけいあり、積不善せきふぜんの家には余殃よおうありである。 』

道重信教(1856~1934 / 僧侶 増上寺法主(第79代)・浄土宗大僧正)

関東大震災から二年、毎日を不安な”弱い生活”で送るのではなく、安心な”強い生活”が出来るようにとの願いから毎日の修養法を当代の高僧らが述べた「新しき修養精神の糧(大正15年)」がまとめられた。
格言は、このなかの「信仰と経済とは一致す」で道重上人が述べたもの。この言葉は中国古典『易経』坤・文言伝(下記)の引用である。

積善の家には必ず余慶あり、 (積善之家必有餘慶。)
積不善の家には必ず余殃あり。(積不善之家必有餘殃。)

「善行を積んだ家には、子孫によろこびごとがあり、 悪事を重ねた家の子孫には災難が及ぶ」の意味。

曰く―――。

《 信心をして物事を善意に解し、慈悲を旨とすることは、経済上の利益と並行せざることあるように考えらるる、如何でしょうとの質問にあいましたが、私は信仰と経済とは一致すべきものであると思う。

信心するは隙(ひま)つぶし、慈悲を行えば一寸(ちょっと)損のようにも考えられますが、実はそうではありません。信心の徳は実は洪大(こうだい)なるもので、必ずそれだけの果報がある、災厄を除いて幸福を来(きた)す。

私の知っている代議士は、いよいよ選挙間際に至って、親の命日のために自分達は勿論運動員をも一切休ませました。互角の勢いであった相手の候補者は得たり賢しと、その虚に乗じて必死の運動をしたが勝(かち)は却って法事をした代議士に帰した。

故伊藤博文公も故原敬君も、如何に忙しいときも、法要墓参は怠られなかった。双方とも、仏教徒で増上寺に参られたので、私は度々これ等の士に面接したのであったが、これだけは略せられぬというのであった。それでこそ両公ともあれだけの事業が出来たのであろう。三井の先代も鴻池の先代も、岩崎、住友の先代も、何れも強盛(ごうじょう)なる信仰力によって、家を興したようである。積善の家には余慶あり、積不善の家には余殃(よおう)ありである。 》

道重信教(みちしげ しんきょう)は、明治から昭和の浄土宗僧侶。蓮社号は浄蓮社、誉号は澄誉、阿号に忍阿(にんあ)、別名に普済道人。元「モーニング娘。」道重さゆみは兄の玄孫にあたる。
片田舎の名もない一小庵の弟子から、一躍、浄土宗の大本山増上寺(東京都港区芝公園)法主となった人物で、精力的な巡教や日本初のラジオ法話などを通じて仏教の民衆化に努め、三界の大導師として「今一休」の異名をとった。
増上寺法主大僧正に就任したその年に関東大震災に直面し、震災三回忌となる大正14(1925)年9月1日には鶴見から飛行機に乗り、横浜・東京の上空から阿弥陀経を唱えながら十五万枚の散華文を散らす殉教者追悼パフォーマンスを行い話題となった。

安政3(1856)年3月4日、長門国厚狭郡宇部村(山口県宇部市)の百姓の五男(末子)として生れる。
幼い頃から聡明で書物に親しむが、極めて貧しい家だったことから進学することができず、13歳のとき父親から、宇部(山口県宇部市)の禅寺・宗隣寺に預けられたが、禅寺が性に合わず、すぐに同じ町にある浄土宗の貧乏寺「松月院」の第17代住職・小田信立(おだ のぶたつ)に託されて、弟子となって出家した。この日から食べ物は自給自足、夜は月の光と線香の火明かりで勉強する赤貧の毎日を送った、という。
17歳の頃に信立和尚が逝去したため、兄弟子・仁保領運(にほ りょううん)の吉見(山口県宇部市)浄名寺に院代として寄宿し、ここの援助を受けて浄土宗学・山口講習所で学ぶことになった。山下現有(やました げんゆう / 1832~1934)、野上運海(のがみ うんかい / 1829~1904)らに学び、中教院(山口県)を経て、明治12(1879)年には山口県から選抜され京都知恩院内の大教院「浄土宗大教校(現・佛教大学)」に入学した。修学の傍ら、泉涌寺(せんにゅうじ)の佐伯旭雅(さえき きょくが / 1828~1891)、大覚寺の楠玉諦(くすのき ぎょくたい)、醍醐寺の金剛宥性(こんごう ゆうしょう / 1821~1895)など諸師に学んだ。
明治18(1885)年、30歳で小田信立師の跡を継いで松月院住職となると、明治19(1886)年に山口の学校で教鞭を執り、九州函崎の鎮西中学校、東京の浄土宗学本支校を経て、明治25(1892)年浄土宗学本校(後の佛教専門学校)教授、明治30(1897)年伝道講習院教授となり、曹洞宗大学林、哲学館、早稲田大学・慶應義塾大学、東京女子高等師範学校などで23年間を教育者として仏教学を講じた。
明治33(1900)年には増上寺内に「仏学院」という私塾を創設し、徳富蘇峰(思想家)、寺内正毅(陸軍元帥・政治家)ら著名人やフランス、米国、インド、ドイツの外国人日本学者らに仏教を講じ、また、増上寺に図書館を設けるなど行った。大正2(1913)年浄土宗朝鮮開教総長。大正12(1923)年6月の増上寺法主選挙の際に、全国5,055人中3,158人の推薦により増上寺79世法主大僧正となった。同年9月に関東大震災に遭う。昭和5(1930)年満州へ巡教。昭和9(1934)年1月29日、宇部の阿弥陀寺にて入寂。79歳。


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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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