『 今日考えたことは、明日はもう違っているということが多い。そこで、今日の安心、明日の安心と終始変化をする様では、結局、人を欺くことに当るので、人を化導するにしても甚だ困る。 』
南条文雄(1849~1927 / 仏教学者・浄土真宗大谷派僧侶 日本初の文学博士)
「化導(けどう)」は衆生を教化して善に導くことの意。
格言は「将来之宗教」(1903年 新仏教徒同志会編)より。
南条文雄(なんじょう ぶんゆう)は、近代的仏教研究に多大な役割を果たした僧侶の一人。
1849(嘉永2)年、美濃国大垣船町(現岐阜県大垣市)の真宗大谷派・誓運寺の住職である父渓英順の三男として生まれる。幼名は恪丸・恪順、号は松坡・碩果。
1866(慶応2)年、18歳で大垣藩の僧兵となり、維新後、京都東本願寺の高倉学寮(大谷派)で修業した後、1871(明治4)年、福井県南条郡の憶念寺・南条神興(1841〜1887)の養子となる。1876(明治9)年、それまで中国語訳が利用されてきた仏典の原典を確認する必要性から、笠原研寿(かさわら けんじゅ / 1852〜1883)とともにサンスクリット(梵語)研究のため渡英した。オックスフォード大学教授のマックス・ミューラー(1823〜1900)に師事し、ヨーロッパにおける近代的な仏教研究の手法を学び、1883(明治16)年、イギリスで『大明三蔵聖教目録(原題:Chinese Translation of Buddhist Tripitaka, the sacred canon of the Buddhist in China)』を出版し梵文仏典校訂における漢訳本の重要性を西欧学界に知らせた。翌年にはオックスフォード大学よりマスター・オブ・アーツ(MA)を授与された。
1884(明治17)年に帰国すると、東京大谷教校教授、東京帝国大学で梵語学講師、真宗大学(大谷大学)教授兼学長(在1914〜1923年)を務めた。1889(明治22)年に、加藤弘之らとともに日本初の文学博士に推挙され、1903(明治36)年、清沢満之の後を受けて真宗大学第2代学監に就任(1903〜1911年)。真宗大谷派の学事体制の整備に尽力し、近代的な仏教研究の必要性を説き、その教育・普及に努めた。
1923(大正12)年の関東大震災では、家族は無事だったものの麹町の自宅は全焼した。自伝『懐旧録(1927年)』に当時の様子が語られている。
私等も最初の激震に投げ出され、戸外に危険を避けて、庭の片隅に草うち敷いて横はつて居ると、見るみる諸方に陰惨なる黒煙が舞ひ上がり、地震に火災を伴ふて、二重の恐怖である。全く死生の間何れともつかぬ心地であつた。
災害直後は《 付近の土手に身を寄せ、不安の一日を暮した 》そうで、2日後の9月3日からは麻布区材木町の親類の家(大井家)へと避難したという。その後、青山へと居を移し、1927(昭和2)年11月9日、79歳で死去。
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