『 人は到底光明なき世に活くる事ができない。光は “たより” である、力である、向上の一路である。人間は “たより” なく、力なく、向上なくして一日も生存することが出来難い。 』
奥谷文智(1883〜1974 / 宗教家 天理教加納分教会長 機関紙「道之友」記者)
濃尾地震(1891年)、姉川地震(1909年)、関東大震災(1923年)という三度の震災と、大戦末期の岐阜市大空襲(1945年)を体験した奥谷文智(おくや ふみとも)氏は、明治末期から昭和にかけ、天理教の論客として知られた人物である。
美濃加納藩士(岐阜県岐阜市加納)の奥谷伴三(おくやばんぞう 幼名:文吉)の次男として明治16(1883)年に生れた。父の伴三は明治維新の幕府方要人・永井尚志(1816〜1891 / ながいなおゆき 三河奥殿藩主)の一の従者である。
奥谷家はもとは東本願寺門徒だったが、文智が8歳の時の濃尾地震(1891(明治24)年 M8.0 死者7,273人 日本史上最大規模の直下型地震)を機に近隣住民らとともに天理教へ入信をしたという。
この震災で、加納の二階建ての自宅が全壊、祖母と二人の弟が亡くなった。自らも玄関先で崩れた土間の梁の下敷きとなるが、自力で這い出してきて怪我ひとつなく無事だった。
後年、『 地震の中から生まれてきたと言っても差支えない位、地震には特別の因縁ある人間である 』と、公言して憚らなかったが、いざ次の大地震(姉川地震(江濃地震)1909(明治42)年 M6.8 滋賀県東部で死者41人)に遭遇するや、今度は、生命の恐怖からすぐさま外に逃げ出して身体はブルブルと震えていたという。
東京の麻布中学(旧制)を卒業後、明治36(1903)年、20歳の時に宣教師となり、先に天理教道友社で編集者をしていた兄・富士太郎(ふじたろう)が明治39(1906)年に急逝したことを受け、道友社に入り、東京を活動拠点とした。
明治41(1908)年11月に天理教が独立すると、かねてより敬愛していた文豪・徳冨蘆花を訪問。天理教の女性教祖について興味を覚えていた蘆花へ、後日、世に伝わる教祖伝を見繕って送ったところ「もう少し地味な書き方もあったのにと残念に思う。何事も木地が好し。金箔は愚劣の極。」との返書があったという。
大正2(1913)年、天理教の中山みき教祖についてまとめた初の伝記『天理教祖』を執筆、また、苦学生のための学舎建設などにあたった。しかし、大正12(1923)年の関東大震災で東京市小石川区(現・東京都文京区)の自宅と学舎が焼失し、やむなく加納へと帰郷することとなる。自論『世界は一つ』をスローガンに単独布教師として、昭和49(1974)年、91歳で亡くなる一ヶ月前まで全国各地を精力的に講演してまわった。
格言は、姉川地震の直後、深夜十時頃、どこの家にも明かりがなく、月の光がぼうっと見えるだけという物淋しい暗闇の中で、唯一、光輝を放っていた神仏に献じてあるお燈明をふと見つけた時の感想。
(出典は著書『文集 つちもち(木下真進堂 明治45(1912)年)』より)
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