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高橋浩一郎(気象学者・元気象庁長官)が座談会「災害にどう対処したらよいか」で述べた名言 [今週の防災格言616]

time 2019/10/14

高橋浩一郎(気象学者・元気象庁長官)が座談会「災害にどう対処したらよいか」で述べた名言 [今週の防災格言616]

『 人には、大災害はめったに起こらないという考えが根本にある。人間は横着で健忘症だから、起こらないことについ慣れてしまう。大水害や大地震があると、当座は防災対策を真剣にやるけれど、時が過ぎるとなまけていく。そうして、また大きな被害を受ける、という繰り返しがずっと続いてきた。 』

高橋浩一郎(1913~1991 / 気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)

格言は、1983(昭和58)年7月28日にミサワホーム主催の座談会「災害にどう対処したらよいか」(於・京王プラザホテル)より。(出典「天災人災」ミサワホーム総研出版 1984年)

曰く―――。

《 ひと口に災害といっても、いったい何が災害かというと、これまたややこしい。
たとえば、日本は災害国だと言います。たしかに地震があり、津波があり、台風や集中豪雨というように、災害が多いことは事実です。それが日本人の生活にいろいろ影響を及ぼしていることも事実です。しかし、それがすべて災害であるかというと疑問です。

毎年決まったように来る台風は、風水害を引き起こすことが多いけれど、これは住まいや河川の防災対策が十分なされていないから災害になるのであって、もしそれがきちんとしていたら災害にはならないわけです。
かりに、台風が来ると災害になるからといって、来ないようにすると、雨が降らない。雨が降らなければ水もないということになって旱魃(かんばつ)になってしまう。これでは日本の農業はたちゆかないし、緑豊かな山河もなくなってしまう。そういう点から考えると、台風が来るということは、日本が恵まれた国であるといえるのではないか。
ですから、ひと口に災害といっても、非常に難しい。そのとらえかたと対策が問題となるのではないでしょうか。
また、いったいどこまでを災害に含めるのかですが、これも問題ですね。

たとえば、災害を人間自身あるいは人間の財産の損害というように考えれば、いわゆる公害も一種の災害になる。もちろん災害の質は違うけれど、そういう見方も出来ると思います。
公害という問題は、要するに人間が増えて生産活動が上がることによって生じるわけです。生産活動が上がるということは、人間の生活を楽にすることで、プラス要素ではあるけれど、それに伴って別のマイナスが生じてしまう。こうなると”禍福は糾える縄のごとし”という感じがしますね。

・・・《中略》・・・

結局、大災害というものはめったに起こらないという考えが根本にあるんじゃないでしょうか。人間は横着で健忘症なものだから、起こらないことについ慣れてしまう。大水害や大地震があると、その当座は防災対策を真剣にやるけれど、時が過ぎるとなまけていきます。そうしてまた大きな被害を受けるという繰り返しが今までずっと続いてきたんじゃないかと思うんです。だからこそ、災害の伝承、あるいは災害の歴史を調べることが重要で、それを若い世代に伝えていく必要があるわけです。

・・・《中略》・・・

最近は都市も膨張し、災害の姿そのものが変わっていますから、今までの経験をそのまま伝承してもだめで、新しい目で考えていく必要があるでしょうね。伊勢湾台風の時は堤防が破れ、高潮が襲ったわけですが、あれも「新しい人」が危険な地域に入ったために災害を大きくしている。長崎の豪雨の場合には、山の方へ入って宅地造成をしたところがやられているんです。この辺も大いに問題があると思うんです。 》

高橋浩一郎(たかはし こういちろう)は、天気予報や気象災害の研究で知られる気象学者。戦中から戦後の約38年にわたって気象界で活躍され、1971(昭和46)年に気象庁長官(第5代)を務めた。

1913(大正2)年5月3日、東京市下谷区(現東京都台東区)の医師で随筆家の高橋毅一郎の家に生まれる。
10歳のとき関東大震災(1923年)を飯田橋駅近くの自宅で体験。父の毅一郎が、秋田の仙北大地震(1914年 M7.1 死者94人)の教訓から「木造家屋は二階の方が安全」と叫んで、すぐさま自宅二階へ避難したという。
東京帝国大学理学部物理学科で学び、寺田寅彦や藤原咲平に師事。1936(昭和11)年、東京帝国大学理学部物理学科を卒業後、中央気象台(現気象庁)に入ると天気予報業務に携わった。1948(昭和23)年、東京帝国大学理学博士。1945(昭和20)年中央気象台予報課長、1964(昭和39)年気象研究所予報研究部長、1968(昭和43)年札幌管区気象台長、1970(昭和45)年気象庁予報部長を経て、1971(昭和46)年から1974(昭和49)年まで第5代気象庁長官に就任。
戦中には気温、風速などの量的予報の分野を開拓し、1944(昭和19)年第1回技術院賞受賞。戦後は主に長期予報の分野を開拓した。
1977(昭和52)年に気象庁を定年退官すると、1975(昭和50)年より筑波大学地球科学系教授、早稲田大学講師として後進の指導にあたり、また、日本気象協会副会長を歴任した。
日本気象学会藤原賞受賞(1969年)、第22回交通文化賞受賞(1980年)、勲二等瑞宝章受章(1983年)。
1991(平成3)年8月21日没。78歳。
高橋浩一郎(気象庁長官)

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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