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賀川豊彦が関東大震災の時に遺した格言(キリスト教社会運動家)[今週の防災格言358]

time 2014/10/20

賀川豊彦が関東大震災の時に遺した格言(キリスト教社会運動家)[今週の防災格言358]


『 大体に、心に平安のある者は、病気になつてもすぐよくなる。よくならないにしても軽い。肺病にかゝつても、病気を苦に病まない。即ち病気にかゝつても少しも心配しない。 』

賀川豊彦(1888〜1960 / キリスト教社会運動家・作家 イエス団創始者)

賀川豊彦(かがわ とよひこ)は、神戸市出身のプロテスタントの牧師で、各種の社会改革を推し進めた社会運動家。 神戸のスラム(貧民街)に住み込みながら救済活動を続け、その生涯を貧しい人々のために捧げた「貧民街の聖者」として知られる。 災害ボランティア活動の先駆けとして、関東大震災の被災地に自ら赴き、献身的な救済活動に奔走したことでも著名。
また、増え続ける貧民を少しでも減らすため、戦前日本の非暴力による労働組合運動、農民組合運動を指導し、後に「コープこうべ」の前身「神戸購買組合」の設立や日本初の全国的農民組合「日本農民組合(日農)」創設、そして「イエス団」や「平和学園(茅ヶ崎)」の創始者となった人物である。
特に海外では、シュヴァイツァーやガンジーと並ぶ20世紀の3聖人の一人と称されるほど有名で、晩年にはノーベル平和賞や文学賞の候補者として推薦されている。


賀川豊彦(大正14年頃)

神戸市兵庫区で海運業を営む裕福な家庭に生まれた豊彦は、4歳のときに両親を相次いで亡くし、父親の実家・徳島へと引き取られ、孤独な少年時代を過ごした。旧制徳島中学校時代に英語の勉強のために通った日本基督協会でキリスト教に接し、15歳で洗礼を受け入信。1905(明治38)年、牧師を志し上京してミッションスクール・明治学院高等部神学予科へと進学。卒業後の1907(明治40)年に神戸神学校(後の中央神学校)に入学するが、身体の弱かった豊彦は結核に倒れ、療養生活のため1年間の休学を余儀なくされた。この時、献身的な看護により豊彦の命を救ったのが牧師・長尾巻(1852〜1934 / 日本基督教団金沢元町教会初代牧師)で、日頃から貧民の世話をしていた長尾の姿に感銘し、自らも病気で苦しんだ経験から、豊彦は「貧しい人々のために尽くす道」を選ぶことになる。1909(明治42)年、日本最大のスラム街だった神戸新川に家を借り救済活動へと乗り出すと、ボランティア組織「救霊団(後のイエス団)」を結成し、無料の宿泊所や格安で食べられる食堂施設、スラム街の子供達の学校などを作り、また、病人の介護、仕事の斡旋など様々な福祉活動を行った。

ただ、活動で多くの人々を救っても、スラム街に来る人は後を絶たず、その原因となる「貧困問題」の解決に乗り出すようになる。1914(大正3)年、渡米しプリンストン大学やプリンストン神学校に留学すると、第一次世界大戦後の不況にあえぐニューヨークの労働者たち6万人のデモに衝撃を受けた豊彦は、貧困問題の解決手段として労働組合運動の必要性を感じ、帰国後、1919(大正8)年に友愛会関西労働同盟会を結成し理事長となり、労働運動の指導的立場となった。
しかし、1921(大正10)年、神戸の三菱造船所・川崎造船所で3万人規模の大争議を指導するも、これが失敗に終わり、以後、暴力へと訴える労働運動に方針が傾いていくなか、平和的解決を唱える豊彦は、組合内部から非難を浴び、次第に労働運動から足が遠ざかることになる。

次に豊彦は、多くの農家が小作人として生活苦にあえぐことから農民運動へと取り組んだ。1922(大正11)年、杉山元治郎(1885〜1964 / 政治家・牧師)とともに日本農民組合を設立、全国各地に出向き小作争議を指導し、また、1927(昭和2)年には兵庫県瓦木村の自宅に農民福音学校を開校し農村の青年の教育にも力を注いだ。
更に、消費者の生活協同組合として1919(大正8)年に大阪に「共益社」、翌年神戸に「灘購買組合」「神戸購買組合」を作り、産地直送の食料品などを安く販売するシステムを作った。これらは後に合併し、生協「コープこうべ」となり現在に至っている。

1929(昭和4)年、豊彦の主導により日本基督教連盟は「神の国運動」を推進、豊彦は大衆伝道者として全国を巡回し、また1936(昭和11)年、宗教改革400年記念としてジュネーブに招かれ「友愛の経済(Brotherhood Economics)」の講演などをはじめ、欧米や中国・アジア諸国で多くの講演活動を行っている。
第二次世界大戦がはじまると、1941(昭和16)年、平和使節としてアメリカへと渡り日米関係修復に努めたが、まもなく日本は大東亜戦争(太平洋戦争)へと突き進むことになる。豊彦は敗戦後まもなく東久邇宮内閣参与に招聘され、翌1946(昭和21)年には勅選貴族院議員となり「一億総懺悔運動」に協力し、日本社会党の結成にも参画。晩年、世界連邦運動に取り組み、1954(昭和29)年から1956(昭和31)年には3年連続でノーベル平和賞候補者に推薦された。戦後の平和運動にも尽力し、1960(昭和34)年、伝導のため徳島へ向かう途中で倒れ、4月23日に東京で死去。71歳。

主な著書『貧民心理の研究(1915年)』『死線を越えて(1920年)』『生存競争の哲学(1922年)』『乳と蜜の流るゝ郷(1935年)』『人格社会主義の本質(1949年)』など小説、ノンフィクション、詩、随筆など多数。その印税はすべて社会事業へと使われたという。

格言は関東大震災直後の自身のボランティア活動について記した随筆『バラツクの六疊の間より(1924年2月)』の『バラックの昼寝』の章より。 自身の体験を通じ『 仮眠(昼寝)の重要性 』を説いたもの。

1923(大正12)年9月1日の関東大震災では、瓦礫の山と化した首都圏には約400万人もの被災者があふれた。当時、神戸市にいた賀川豊彦は、震災の報を受けると、直ちに義援金を集めて救援物資を被災地へと送り、翌10月には被害が最も激しかった東京下町の本所へと自ら乗り込んで救援活動を始めている。

曰く―――。

《 バラックに手伝いに来てくれる(奉仕者)が多数いる。ただ、バラックの生活が無理なものだから、バタバタと倒れる。多くは扁桃腺が腫れるので伝染病であるらしい。
《中略》
病気をしないのは私とあと一人位のものである。私は忙しいために病気になる機会がないらしい。しかし、奉仕者の多くは、あまり興奮しすぎて、少し疲れが回ると、すぐ病気になる。この点は、多年無理をして来た私などは全く慣れたものである。
《中略》
無理をしないから倒れることがない。長距離競争をやらうと思えば、初めから早く走つてはならない。その呼吸が実に六ケ敷い(難しい)。大体に、心に平安のある者は、病気になつてもすぐよくなる。よくならないにしても軽い。肺病にかゝつても、病気を苦に病まない。即ち病気にかゝつても少しも心配しない。その点が、無理をする他の人々と多少違ふ所である。

私には心配と云ふものが無い為に、臥床すると、その瞬間に眠って了(しま)ふ。二三分横になると、早眠つて了つてゐる。私は四時間も熟睡すれば、心理的労作でない範囲内の仕事は十分に出来る。但し、むづかしい創作とか論文などであると、もう少し眠らないければ足りない。それで、私は昼寝をする。昼寝は私の一つの特権である。それも長いことを必要とはしない。十分でいい。三十分も眠ると、午後から晩にかけて、実に元気百倍する。倒れたところ何処でもかまはない。そこで十分間も眠ると天下泰平である。
《中略》
私は日本の家庭労働に従事してゐる人々にも午睡(ごすい)の時間を与へられることを要求する。心理的に云つても、午睡の必要は十分ある。昼食後は人間の精神作用が衰へてゐる時で、二三十分の午睡は人間生活に必要である。殊に眠い時に面会するのは失敬である。それより十分位眠つて、ハツキリした気分で愉快に話した方が、遥に双方共心持が善い。
《中略》
人生には休みが要る。休みも人生芸術の一部である。 睡(ねむり)もまた私に取つては芸術である。 》

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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