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松山基範が著書『輓近の地震学』に記した格言(地球物理学者)[今週の防災格言375]

time 2015/02/16

松山基範が著書『輓近の地震学』に記した格言(地球物理学者)[今週の防災格言375]


『 地震の惨害は常に火災を伴う事によって益々大きくなる。 』

松山基範(1884〜1958 / 地球物理学者 京都大学名誉教授 山口大学初代学長)

格言は「但馬大地震の研究」(著書「輓近の地震学(大正14年7月)」付録)より。

曰く―――。

《 今回の地震(※北但馬地震 1925年5月23日 M6.8 兵庫県北部で死者465人、全壊・全焼3,220棟)でも此例にもれずして、特に城崎町豊岡町等は其著しいものであった。家屋の倒壊は兎も角として、之に火を失した為め残った家財も焼失してしまい、殊に倒れた屋根の下に掩(おお)われ或は落ちた梁に圧されて逃れんとしてあがいている人々を救い出す暇なくして火焔の猛威にまかせて見殺にせねばならぬ事に至っては全く惨鼻(さんび)の極である。》

この震災の城崎町の被害戸数660戸のうち、揺れによる倒壊124戸だった一方で、焼失が536戸、死者200名に達し、豊岡町では被害戸数2,113のうち、倒壊529戸、焼失1,583戸、死者100名で、被害が火災により大きくなったことが明らかだった。
その一方で、火災を未然に防いだ港村田結などでは全村で殆んど倒壊していたものの住民の防火努力により災厄を未然に防いだ点を例にあげている。

《 又京都府に入って久美濱町の如きも倒壊家屋から火を発する事三ヶ所に及んだと称せられているが、町内消防当事者は自分の家の倒壊して家族の救を求むる声を耳にしながら、先づ全町に渡って消防第一の覚悟を定めしめ、倒壊家屋の火の気を悉く消し止むる事に努力した。此の為めに死亡者の数は僅かに七名に止まり、又多くは家財を全くして当面の生活に困難を極めずにすんだのである。
先年関東大地震に於ける悲惨なる出来事も尚耳目を去らない為めでもあらうが斯かる咄嗟の激変に際しても尚よく各自共同して適当な処置を取り得た事は実に敬服に堪へない点である。日本の如き地震国に於ては何れの地たるを問はず何時地震に襲はるゝや期し難いのであるから此の如き処置に就ては充分の注意を要するのである。》

松山基範(まつやま もとのり)は、大分県宇佐市出身の地球物理学者。特に、日本海溝における負の重力異常の発見や、1929(昭和4)年に地球磁場の反転説(ブルン−松山地磁気逆転 “Brunhes?Matuyama reversal”)を世界で最初に提唱した業績で知られる人物。
その数々の功績は、地球の地質時代最後となる逆磁極期(およそ249万年〜72万年前)を「松山逆磁極期」と呼び、南極半島グレアムランド西岸沖海中の「松山群岩(Matsuyama Rocks)」の岩石名として称えられている。

大分県宇佐郡駅館村字上田(現宇佐市大字上田)の雲栖寺の住職の次男に生まれる。実父が曹洞宗高林寺の十六世住持となると、それに伴い山口県豊浦郡清末村(現下関市赤池町)へと移り住んだ。1898(明治31)年、清末尋常小学校高等科を卒業後、山口県尋常中学校豊浦分校(県立豊浦中学校)に入学。1903(明治36)年に同校を特待生で卒業すると、広島高等師範学校(現広島大学)本科数物化学部に入学し、教授として赴任してきた志田順(しだとし 1876〜1936 / 地球物理学者・京都大学名誉教授)に師事。卒業後、1908(明治41)年に京都帝国大学理工科大学に入学。文部省測地学委員会の重力測定の仕事に加わり、1911(明治44)年に大学を卒業後、大学院(地球物理学専攻)に進学し、新城新蔵(しんじょう しんぞう 1873〜1938 / 天文学者・第8代京都帝国大学総長)、志田順らに従い重力・地磁気・地震の研究を行った。日本国内・日本近海の重力測定のみならず、朝鮮半島、中国(満洲)、台湾、南洋諸島(マリアナ諸島、マーシャル諸島)の重力測定を精力的に実施し、重力偏差と地質構造との関係の研究。1919(大正8)年渡米しシカゴ大学にて氷河の氷の運動についての研究で多大な業績を残し、1921(大正10)年12月に帰国すると京都帝国大学地質学鉱物学教室第一講座(理論地質学講座)教授に就任。関東大震災(1923年)や北但馬地震(1925年)、北丹後地震(1927年)などの実地調査などを行っている。京都大学理学部長を歴任し、1943(昭和18)年、測地学委員会委員長に就任、同年に財団法人・物理探鉱研究会を設立。1944(昭和19)年、定年退官し名誉教授。敗戦後の1949(昭和24)年、山口大学初代学長に就任。1958(昭和33)年1月27日に満73歳没。没後50年となる2009(平成21)年1月に、少年時代を過ごした高林寺内に「松山基範先生顕彰碑」が建立され、その顕彰碑には『地球を愛し、故郷を愛し、人間をこよなく愛した碩学』と刻まれている。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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