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和辻春樹(船舶工学者・造船技師)が随筆『市政随感:京の地震』に記した名言 [今週の防災格言267]

time 2013/01/21

和辻春樹(船舶工学者・造船技師)が随筆『市政随感:京の地震』に記した名言 [今週の防災格言267]


『 日本の家屋は地震には強いといふ自信は誤りで、観念だけでものが解決されるものではなく、すべてのことの解決は学問の力をたねばならないのである。 』

和辻春樹(1891〜1952 / 実業家 船舶工学者・造船技師 大阪商船専務)

和辻春樹(わつじ はるき)は、日本の近代造船産業に多大な貢献をした船舶工学の権威。京都市東山区出身。従兄(異母兄)に倫理学者・和辻哲郎(わつじてつろう / 1889〜1960)がいる。
昭和初期に大阪商船(現・商船三井)の工務部長として、西洋クラシック様式とは異なる独自の「日本様式」デザインを採用した豪華貨客船の設計者として知られる。主な設計船に、瀬戸内の女王と呼ばれた阪神〜別府線の最初の客船・紅丸や紫丸、世界一周航路用の大型貨客船・あるぜんちな丸、ぶらじる丸など多数。しかし、大東亜戦争(太平洋戦争)末期になると、次男(俊樹氏)が戦死し、和辻の作った船も次々と戦争にと徴用され、多くが米潜水艦や航空機によって撃沈された。
戦後、京都市長の篠原英太郎(しのはら えいたろう / 1885〜1955)が任期途中で辞任、議会による官選で京都市長に1946(昭和21)年3月に任じられたが、わずか8ヶ月後には公職追放の憂き目にあった。また、1950(昭和25)年には民主党推薦無所属候補として京都市長選に立候補するも落選するなど晩年は不遇であった。

格言は著書『市政随感(昭和23年)』収録の随筆「京の地震」より。

曰く―――。

日本の家屋は地震には強いといふ自信は誤りで、観念だけでものが解決されるものではなく、統(すべ)てのことの解決は学問の力を俟(ま)たねばならないのである。少し力学を応用すればきわめて僅かの材料を加へることと、設計を変へることで地震に対しても充分大丈夫な堅牢さを持つ建築が出来るのである。

敲大工(たたきだいく=下手な大工)にまかせて昔のままの家を建ててゐる日本人の科学性なきは今更のことではないが、今後は少くとも之を改めて行かねばならぬ。資材労務難の折柄(おりから)だから容易ではないが、現在の建築の補強工事なども少し科学的に考へ技術的取扱ひをする事によつて、容易に効果を挙げることが出来るものも少なくないと思ふ。船から見れば陸上建築はやにこい(つたない、未熟なの意)ものである。

地震国日本がいまだに地震を予知することが出来ず、昔のままの災害を被り続けてゐることも科学と技術の認識の足りない国だからであつて、誠にお恥かしい。

何事に対しても万全の準備と科学的用意のないところに合理的な効果が挙がる道理はないのである。京の地盤も近い中に調査発表されると思ふが、その発表によつて危険と診断される建築物に対しては適当の補強対策を講ずべきである。まあどうにかなるであらうとか、大したこともあるまいとか、その時はまた其時だといふやうな気休め的な、始めから諦めてかかつてゐるやうな対策といふものは無い筈で、これが日本人の性格上の大きな缺點(欠点)になつてゐる。用意周到といふ言葉と凡(およ)そ反対であるのが我々のあらゆることに対する考へ方であつたが、将来は今少しくものごとをつきつめてどこまでも究明した上、科学と技術の力を十分にかりて工夫を加へその解決に当るといふ意欲を持ち、更にかうして訓練を積んで、万全を期すといふ行き方に改めねばならぬ。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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