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羽田孜が阪神淡路震災の時に遺した格言（内閣総理大臣(第80代)）[今週の防災格言506]

time 2017/09/04

『国民の生命と財産をいかなる危機からも守ることこそが政治の最も基本的な役割である。』

羽田孜（1935〜2017 / 政治家・衆議院議員(14期）内閣総理大臣(第80代)）

格言は1995（平成7）年10月2日の国会・衆議院本会議の発言より。
新進党副党首時代に阪神淡路震災が発生。その後の村山富市総理大臣の所信表明演説に対して、新進党を代表して村山内閣へ提言をしたもの。

羽田内閣が総辞職して誕生したのが、自由民主党・日本社会党・新党さきがけによる村山連立政権ではあったが、羽田は1969（昭和44）年の当選一年生議員のときから国会の災害対策特別委員会委員に選任され、また農林族としても、自然災害による被害と国民保護について積極的に国会で発言をした “防災通” な議員でもあった。

曰く―――。

《阪神・淡路大震災が発生して既に八ヶ月が過ぎました。
その後亡くなった方を含め死者は六千名を超え、全壊家屋は十万棟にも及びました。いまだに避難所生活を余儀なくされている人々や不自由な仮設住宅に住んでいる人々も多数おられます。

国民の生命と財産をいかなる危機からも守ることこそが政治の最も基本的な役割であり、今回の大震災を教訓とし、安心ができる社会を築き、災害から国民の生命と財産を守っていかなければなりません。それが大震災により被害に遭われた方々に報いる道であると信じます。

今回の阪神大震災の経験で得た結論は、現行の災害対策基本法には不備があるということであります。それは、災害発生の非常時における総理のリーダーシップや自衛隊の位置づけが不十分であり、これが初動態勢のおくれを招き、多くの犠牲を生む一つの大きな要因となっていることであります。また、阪神・淡路地域を突発的に襲った大震災や、雲仙・普賢岳の長期化する災害にも対応しきれていません。》

羽田孜（はたつとむ）は、東京府東京市蒲田区（現東京都大田区蒲田）出身の政治家。父親の羽田武嗣郎（はたぶしろう）は、戦後に自民党副幹事長を務めた人物。息子の羽田雄一郎は、現職の参議院議員（民進党所属）。

戦時中は父の郷里である長野県に疎開。長野県上田市立上田第二中学校、東京の成城学園高等学校を経て、1954（昭和29）年に成城大学経済学部に進学。大学卒業後、小田急バスへ就職し観光課で働いた。
政治家になるつもりはなかったが、父親が脳出血で倒れたことから、1968（昭和43）年に退職し、翌1969（昭和44）年の総選挙に旧長野2区から自民党公認で立候補しトップ当選を果たす。以降、2012（平成24）年に政界引退するまで14期連続で当選した。

自民党では当選同期の小沢一郎らとともに田中（角栄）派に属し、その後、竹下派（経世会）の結成に参加し「竹下派七奉行」の一人として、農林水産大臣や大蔵大臣などを歴任。
竹下派会長である金丸信元副総裁の佐川急便事件に端を発する竹下派分裂に際し、小沢一郎や渡部恒三らと竹下派を離脱し、羽田派（改革フォーラム21）を結成し、1993（平成5）年6月に政治改革関連法案の取り扱いをめぐって提出された宮沢内閣への不信任決議案に賛成して自民党を離党した。
小沢一郎らとともに新生党を結成し、日本新党代表の細川護煕を総理大臣とする「非自民連立政権」を樹立させ、細川連立政権の副総理兼外務大臣を務めたが、その8ヶ月後に細川内閣が総辞職したことを受けて、1994（平成6）年に第80代内閣総理大臣に就任することになった。
しかし、内閣の発足直前に社会党が連立から離脱するなど、少数与党政権となった政権は安定を欠き、在任僅か64日（現行憲法下で最短）で羽田内閣は総辞職することになった。

その後も一貫して選挙による政権交代を目指し、新進党、太陽党、民政党、民主党などで代表や幹事長、最高顧問などの要職を歴任したが、2010（平成22）年9月に政界引退を表明し、2012（平成24）年の衆議院選挙に立候補せず政界を引退。晩年は民進党長野県連名誉顧問を務め、2017（平成29）年8月28日、老衰により東京都内の自宅で死去。82歳。