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篠塚昭次が阪神淡路大震災後に読売新聞識者座談会で述べた住宅政策の提言と名言（1928～2016 / 法学者・早稲田大学名誉教授）[今週の防災格言628]

time 2020/01/06

『やはり防災は、まず建物を壊さないことに尽きる。人命も建物が倒壊しなければそうは失われない。』

篠塚昭次（1928～2016 / 民法学者・不動産法早稲田大学名誉教授）

格言は読売新聞（1995年7月17日朝刊）「阪神大震災から半年：識者座談会」より。
この中で提言として、以下のことを述べている。

曰く―――。

復興で道路が広がり、高層住宅が立ち並んでも、かつての「向こう三軒両隣」のコミュニティーは戻ってこない。
建物を倒壊させないことが防災の基本だ。
倒壊しなければ原則として火災も起きない。
耐震基準の強化だ。
建築基準は震度五を想定しているだけ。
日本土地法学会は十五年前から、震度七でなければ街の倒壊は防げないと訴えていた。
都市の文化を支えている借地・借家人層への法的対応も含め、建築基準法の思い切った改正が急務だ。

6,434人が亡くなった阪神淡路大震災（1995年）では、死因の9割が住宅などの倒壊による圧死だった。そして、新旧の耐震基準で被害に大きな差がでたことが判明する。

現行の耐震基準を満たさない昭和56年（1981年）5月以前の建物（旧耐震基準で建てられた既存不適格住宅）に被害が集中した一方で、昭和56年以降の耐震基準（新耐震基準）で建てられた新しい住宅には被害が少なかった。震災後の神戸大学の調査では、被災した木造家屋のうち98％が旧耐震基準で建てられていたことが判明する。

阪神淡路大震災で明らかになったことは「既存不適格住宅」が大きな被害を受けたという事実であり、地震の備えには住宅の強度（耐震性能）が重要であることが改めて議論される契機となった。

この阪神淡路大震災を契機に木造家屋の耐震性に大きく影響を与える建築基準法の改正が平成12（2000）年に施行された。その後も新潟中越地震（2004年）を経て平成17年（2005年）の改正など、繰り返し行われている。

… … … … … …

篠塚昭次（しのづかしょうじ）は、不動産登記法・土地法を専門とする民法学者・法学博士。早稲田大学名誉教授。早稲田大学比較法研究所所長、日本土地法学会会長を歴任。昭和30年代にドイツの学説などを基にして、日本における居住権、借地借家法の全体像を体系化し、その後も日本の住宅・土地政策についての研究を行った。

1928年（昭和3年）11月24日生まれ。神奈川県横浜市出身。
早稲田大学法学部卒、同大学院修了後、1953年（昭和28年）より早稲田大学法学部助手、助教授を経て、1967年（昭和42年）より同教授に就任。民法・土地法を担当した。フランス・ドイツ留学の後、1972年（昭和47年）から1976年（昭和51年）まで早稲田大学比較法研究所長（第5代）を務め、1993年（平成5年）より日本土地法学会理事長に就任。1999年（平成11年）、早稲田大学を定年退職され名誉教授。
2016年（平成28年）12月29日死去。88歳。
主な著書に「借地借家法の基本問題」(日本評論新社 1962年)、「不動産法の常識（上・下）」(日本評論社 1970-71年)、「土地所有権と現代」(日本放送出版協会 1974年)、「民法口話 1-5」(有斐閣 1985-99年)など。編著に「境界の法律紛争円満解決へのアドバイス」(有斐閣選書市民相談室シリーズ 1983年）など多数。

写真：篠塚昭次(早稲田大学名誉教授)