『 天災は忘れた頃来る 』
寺田寅彦(1878~1935 / 物理学者 随筆家 俳人)
「天災は忘れた頃にやって来る」は、寺田寅彦(てらだ とらひこ)の有名な災害警句として今でも頻繁に引用されるもの。しかし、有名なこの言葉は寅彦の、どの随筆集にもどの書物にも載っていない。寅彦の門下生で「雪博士」として知られる、随筆家で物理学者の中谷宇吉郎(なかやうきちろう / 1900〜1962)が、随筆「天災は忘れた頃来る(1955(昭和30)年8月)」で、この顛末について記している。
その昔、東京日日新聞に頼まれて「天災」という短文を執筆した中谷は、「天災は忘れた頃来る」を寺田寅彦先生の言葉としてまさに千石の名言であると紹介。その後、言葉は方々で引用されるようになり、戦時中の9月1日の朝日新聞の記事でも採用され、解説を頼まれた中谷が出所を探してみたが見当たらず、大いに困った結果、寅彦氏の随筆「天災と国防(1934(昭和9)年)」に似たようなことが書いてあるという理由で、解説を適当に書いて勘弁してもらった、とある。もともとこの言葉は、書かれたものには残っていないが、寅彦の言葉には違いないのであるから、別に嘘を言ったわけではない――――と中谷は結んでいる。
牧野富太郎筆による寺田寅彦記念館石垣の石碑「天災は忘れられたる頃来る」
寺田寅彦
その他、寺田寅彦の防災格言
■国家を脅かす敵として天災ほど恐ろしい敵はないはずである
■科学の方則とは畢竟「自然の記憶の覚え書き」である。自然ほど伝統に忠実なものはないのである。
■天災は忘れた頃来る
■ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい。
■戦争はしたくなければしなくても済むかもしれないが、地震はよしてくれと言っても待ってはくれない。
■「知らない」と「忘れた」とは根本的にちがう。
■大正十二年のような地震が、いつかは、おそらく数十年の後には、再び東京を見舞うだろうということは、これを期待する方が、しないよりも、より多く合理的である。
■地震の研究に関係している人間の目から見ると、日本の国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもので、しかも、そのつり橋の鋼索があすにも断たれるかもしれないというかなりな可能性を前に控えている
■文明がすすむほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防護策を講じなければならないはずである
■文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す。
■「寺田寅彦」に関連する防災格言内の記事
寺田寅彦[1](物理学者)(2007.11.26 防災格言)
寺田寅彦[2](物理学者)(2009.03.02 防災格言)
寺田寅彦[3](物理学者)(2009.10.12 防災格言)
寺田寅彦[4](物理学者)(2011.06.20 防災格言)
寺田寅彦[5](物理学者)(2016.08.01 防災格言)
寺田寅彦[6](物理学者)(2017.08.21 防災格言)
寺田寅彦[7](物理学者)(2018.06.25 防災格言)
寺田寅彦[8](物理学者)(2019.03.11 防災格言)
寺田寅彦[9](物理学者)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](物理学者)(2020.08.31 防災格言)
夏目漱石 (作家 寅彦の恩師)(2012.04.09 防災格言)
原栄(蒲生紫川)(1879~1942 / 医師・俳人 漱石門下 五高時代の寅彦の友人)(2021.06.14 防災格言)
安倍能成 (哲学者 漱石門下の友人)(2014.11.24 防災格言)
和辻哲郎 (哲学者 漱石門下の友人)(2014.10.27 防災格言)
鈴木三重吉 (作家 漱石門下の友人)(2011.02.21 防災格言)
野上弥生子[1] (作家 漱石門下の友人)(2009.06.29 防災格言)
野上弥生子[2] (作家 漱石門下の友人)(2015.06.22 防災格言)
内田百間 (作家 漱石門下の友人)(2010.3.8 防災格言)
和達清夫 (寺田寅彦門下の物理学者)(2007.12.03 防災格言)
中谷宇吉郎[1] (寺田寅彦門下の物理学者・随筆家 「流言蜚語(1945年)」より)(2009.10.19 防災格言)
中谷宇吉郎[2] (寺田寅彦門下の物理学者・随筆家 「水害の話(1947年)」より)(2020.07.06 防災格言)
立春の日のコロンブスの卵(中谷宇吉郎随筆より)(2006.01.17 編集長コラム)
阿部良夫 (寺田寅彦門下の物理学者)(2014.06.30 防災格言)
坪井忠二 (寺田寅彦門下の物理学者)(2011.06.27 防災格言)
宇田道隆 (寺田寅彦門下の海洋物理学者)(2017.08.14 防災格言)
藤原咲平 (気象学者)(2013.10.28 防災格言)
竹内均[1] (物理学者)(2010.09.06 防災格言)
竹内均[2] (物理学者)(2016.04.04 防災格言)
竹内時男(理論物理学者 東京高等工業学校教授)(2020.08.24 防災格言)
石原純 (理論物理学者)(2012.03.19 防災格言)
松山基範 (地球物理学者)(2015.02.16 防災格言)
河角廣 (地震学者)(2016.05.23 防災格言)
アンリ・ポアンカレ (フランスの数学者・物理学者)(2012.01.02 防災格言)
別役実 (作家 寺田寅彦の姉・駒の曾孫)(2016.01.04 防災格言)
力武常次 (地球物理学者)(2011.10.24 防災格言)
下鶴大輔 (火山物理学者・火山噴火予知連会長)(2015.08.10 防災格言)
菊池大麓(数学者・教育家・政治家)(2018.01.01 防災格言)
高橋浩一郎(気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)(2019.10.14 防災格言)
■「防災標語」「教訓」「石碑」に関連する防災格言内の記事
消防庁「自主防災組織の手引 ―コミュニティと安心・安全なまちづくり―」(平成29年3月改定版)より(2022.12.05 防災格言)
AC公共広告機構 阪神淡路大震災キャンペーン広告「人を救うのは、人しかいない」(2009.11.30 防災格言)
地震は起きる。それは「想定」ではない。「前提」だ。:三菱地所ホーム(株)のポスター広告 2015年(コピーライター:谷野栄治、三宅ひづる)より(2021.01.18 防災格言)
「おはしも(おかしも)」児童のための避難標語(2008.09.01 防災格言)
「ひなんするときは、押すな・走るな・声出すな」学研まんが「地震のひみつ」より(2015.04.27 防災格言)
政府の中央防災会議「災害時の避難に関する専門調査会報告書(2012年3月)」より(2018.02.26 防災格言)
「津波避難のたすとひく」静岡県警の津波避難啓発標語(2014.11.10 防災格言)
昭和八年三月三日 大海嘯記念碑(大槌町 昭和9年建立)(2011.11.07 防災格言)
明治三陸地震(1896年)と昭和三陸地震(1933年)の「大津浪記念碑」(岩手県宮古市重茂・姉吉集落)『此処より下に家を建てるな』(2021.07.12 防災格言)
宝永津波碑(宝永4(1707)年 / 徳島県海部郡海陽町鞆浦)(2017.11.27 防災格言)
安政地震(安政元(1854)年)の石碑「岸本飛鳥神社懲毖」(高知県香南市香我美町岸本)(2018.12.17 防災格言)
関東大震災十周年防災標語(2008.7.7 防災格言)
南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書(2013年5月)(2013.06.24 防災格言)
安きにありて危うきを思う(居安思危)(中国故事)(2008.11.10 防災格言)
備えあれば憂いなし(有備無患)(中国故事)(2008.11.10 防災格言)
天災は忘れた頃来る (寺田寅彦)(2009.10.12 防災格言)
ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい (寺田寅彦)(2009.03.02 防災格言)
ムダ足覚悟で早めの避難(1957(昭和32)年7月25日 諫早豪雨教訓)(2017.07.10 防災格言)
長崎豪雨の教訓から(1982年7月23日)(中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(平成17年3月))(2021.08.16 防災格言)
国土交通省東北地方整備局「災害初動期指揮心得(2013年3月)」(2015.03.09 防災格言)
高知県黒潮町「南海トラフ地震・津波の防災計画基本理念(2012年)」(2016.03.07 防災格言)
関東大震災時のアメリカ合衆国赤十字社防災標語(2008.05.19 防災格言)
「備えよ、常に( Be Prepared )」スカウト標語(2008.05.26 防災格言)
後藤新平(日本スカウト運動標語)(2010.4.26 防災格言)
アンリ・デュナン (国際赤十字標語)(2011.5.2 防災格言)
佐野常民「日本赤十字 救護員十訓」(2013.02.11 防災格言)
松井茂 (昭和初期の山林火災防止標語)(2008.12.01 防災格言)
安政江戸地震で江戸幕府が発した町触れ(火災防止標語)(2008.12.08 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)インフルエンザ感染対策標語(2013.12.30 防災格言)
アメリカ合衆国沿岸警備隊モットー(2012.12.24 防災格言)
イタリア トーレ・デル・グレコ市モットー(2013.03.11 防災格言)
キャヴェンディッシュ一族の家訓(イギリス貴族)(2011.11.21 防災格言)
東京消防庁「地震時の行動」についての啓発(2012年3月)(2019.09.02 防災格言)
中央審査会『健康児十則』より(昭和10年頃)(2020.06.15 防災格言)
内閣府 有識者会議「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」提言より(2021年5月25日公表)(2021.05.31 防災格言)
落雷のまじない「くわばらくわばら(桑原桑原)」の伝承の由来(2021.07.05 防災格言)
大正3年(1914年)1月12日の桜島大噴火石碑「桜島爆発記念碑(通称「科学不信の碑」)」より(2023.01.16 防災格言)
よりよい備え、よりよい暮らし(Better Preparation, Better Life.)(SEISHOP防災標語)(2012.06.26 店長コラム)
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