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寺田寅彦が遺したといわれる『 天災は忘れた頃来る』その出どころは?[今週の防災格言100]

time 2009/10/12

寺田寅彦が遺したといわれる『 天災は忘れた頃来る』その出どころは?[今週の防災格言100]

『 天災は忘れた頃来る 』

 

寺田寅彦(1878~1935 / 物理学者 随筆家 俳人)

 

「天災は忘れた頃にやって来る」は、寺田寅彦(てらだ とらひこ)の有名な災害警句として今でも頻繁に引用されるもの。しかし、有名なこの言葉は寅彦の、どの随筆集にもどの書物にも載っていない。寅彦の門下生で「雪博士」として知られる、随筆家で物理学者の中谷宇吉郎(なかやうきちろう / 1900〜1962)が、随筆「天災は忘れた頃来る(1955(昭和30)年8月)」で、この顛末について記している。

その昔、東京日日新聞に頼まれて「天災」という短文を執筆した中谷は、「天災は忘れた頃来る」を寺田寅彦先生の言葉としてまさに千石の名言であると紹介。その後、言葉は方々で引用されるようになり、戦時中の9月1日の朝日新聞の記事でも採用され、解説を頼まれた中谷が出所を探してみたが見当たらず、大いに困った結果、寅彦氏の随筆「天災と国防(1934(昭和9)年)」に似たようなことが書いてあるという理由で、解説を適当に書いて勘弁してもらった、とある。もともとこの言葉は、書かれたものには残っていないが、寅彦の言葉には違いないのであるから、別に嘘を言ったわけではない――――と中谷は結んでいる。


天災は忘れたる頃来る
牧野富太郎筆による寺田寅彦記念館石垣の石碑「天災は忘れられたる頃来る」


寺田寅彦






その他、寺田寅彦の防災格言
国家を脅かす敵として天災ほど恐ろしい敵はないはずである
科学の方則とは畢竟「自然の記憶の覚え書き」である。自然ほど伝統に忠実なものはないのである。
天災は忘れた頃来る
ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい。
戦争はしたくなければしなくても済むかもしれないが、地震はよしてくれと言っても待ってはくれない。
「知らない」と「忘れた」とは根本的にちがう。
大正十二年のような地震が、いつかは、おそらく数十年の後には、再び東京を見舞うだろうということは、これを期待する方が、しないよりも、より多く合理的である。
地震の研究に関係している人間の目から見ると、日本の国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもので、しかも、そのつり橋の鋼索があすにも断たれるかもしれないというかなりな可能性を前に控えている
文明がすすむほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防護策を講じなければならないはずである
文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す。

■「寺田寅彦」に関連する防災格言内の記事
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寺田寅彦[3](物理学者)(2009.10.12 防災格言)
寺田寅彦[4](物理学者)(2011.06.20 防災格言)
寺田寅彦[5](物理学者)(2016.08.01 防災格言)
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和辻哲郎 (哲学者 漱石門下の友人)(2014.10.27 防災格言)
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天災は忘れた頃来る (寺田寅彦)(2009.10.12 防災格言)
ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい (寺田寅彦)(2009.03.02 防災格言)
ムダ足覚悟で早めの避難(1957(昭和32)年7月25日 諫早豪雨教訓)(2017.07.10 防災格言)
長崎豪雨の教訓から(1982年7月23日)(中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(平成17年3月))(2021.08.16 防災格言)
国土交通省東北地方整備局「災害初動期指揮心得(2013年3月)」(2015.03.09 防災格言)
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<防災格言編集主幹 平井敬也 拝>

 

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