『 短時間に変化するものは、人 皆 な其 の変化を知る、長時間に変化しつゝあるものは、人 或 は之 を知らず、而 して其 の実 は常に変化しつゝあるなり。是 を推 して之 を言えば、天地万物皆 な変化しつゝあらざるものなし。 』
矢野龍渓(1851~1931 / 新聞経営者・小説家・政治家 代表作『経国美談』)
格言は、著書『龍渓随筆』(1911年)より。
同書には、地震の随筆もある。
幕末以降の当時の迷信では、熱い夏季には地殻が膨張し、寒い冬季に収縮するから地震が起るといった、太陽と地震(地殻の活動)との関係が俄かに信じられてもいた。
矢野龍渓は、いつの頃の歌かは不明としながら、地震が起こった時刻によって天気予報、風雨晴曇を予知する狂歌が伝わっていると記している。
何れの頃より伝わりしものか知らねども、往々(おうおう)能(よ)く的中す。(但し大激震は例外なり)
十二病 む四八 の雨に、十 ひでり
二六 ならば、風 と知るべし
昼夜を問わず、地震が十二時に起れば天気病み晴曇(せいどん)相半(あいなか)ばして、どんよりせるものとなる、四時八時に起れば雨となり、十時に起れば、晴となるの類(るい)なり。
矢野龍渓(やの りゅうけい)は、明治大正時代に活躍した政治家、ジャーナリスト、新聞経営者、小説家。本名は文雄(ふみお)、号は龍渓、天峯居士。慶應義塾に学び、福澤諭吉の門下として福澤の推薦で大隈重信の幕下となる。大隈とともに立憲改進党結成に参画、党幹部となって郵便報知新聞社を買収しその社長となり「郵便報知新聞(後の報知新聞)」を立憲改進党機関紙とし、官憲派の「東京日日新聞」などに対抗した。また同紙に政治小説『経国美談』を連載して、民権思想の浸透を図った。明治21年(1888年)の黒田清隆内閣での大隈の外務大臣就任は、伊藤博文と親しかった矢野龍渓の献策という。
1851年1月2日(嘉永3年12月1日)豊後国(大分県)佐伯藩(毛利家)藩士で浦奉行や町奉行、郡奉行を歴任した矢野光儀(やの みつよし / 1822~1880)の長男として生まれる。
佐伯藩校「四教堂(しこうどう)」に入り、儒学者の秋月橘門(あきづき きつもん)や帆足萬里(ほあし ばんり)に学び、武士として鉄砲術免許皆伝。慶應4年(1868年)鳥羽・伏見の戦いで朝廷親兵分隊長として京都警護に従軍。維新後に父・光儀が江戸葛飾県大参事となり、一家は上京した。明治4年(1871年)慶應義塾に入り、明治6年(1873年)卒業後は同校講師となる。明治7年(1874年)著書『西洋言行録(西洋偉人言行録)』を出版。明治9年(1876年)慶應義塾の大阪分校の校長、明治10年(1877年)には徳島分校の校長に就任。明治12年(1879年)福澤諭吉の推薦で、牛場卓蔵、犬養毅、尾崎行雄らとともに政府官吏となり、大蔵省に入省。明治13年(1880年)福澤諭吉とともに社交クラブ「交詢社(こうじゅんしゃ)」を創設し常議員となる。明治14年(1881年)大隈重信と計って「郵便報知新聞」を買収し、郵便報知新聞社社長に就任するが、大隈重信が井上毅による「明治十四年の政変」で政界を追われると、大隈に従って在野に下った。明治15年(1882年)大隈とともに東京専門学校(後の早稲田大学)設立にも携わる。同明治15年(1882年)大隈が立憲改進党を結党すると、政治結社「東洋議政会(慶應義塾の三田派)」を率いこれに参加。
明治16年(1883年)政治小説『経国美談』を発表すると、これが大評判となる。明治18年(1885年)新聞事業視察のためにヨーロッパ諸国を外遊し、帰朝後の明治19年(1886年)には『郵便報知新聞』を政治新聞から文化新聞へ刷新する経営再建を行い、小栗貞雄や三木善八を起用し、購読料引き下げ、記事の充実、文体の平易化、配達の敏速化を進めた。明治23年(1890年)第1回帝国議会では明治天皇の侍従としてこれに参列し、その後は宮内省に入り、宮内省御用掛、皇族令取調委員、帝室礼式取調委員、式部官を歴任した。
明治30年(1897年)日清戦争の際は時の外務大臣・大隈重信の強い要望により、清国特命全権公使(清国駐箚(ちゅうさつ)特命全権公使)に就き、2年間北京に滞在し、日清戦争後の清国で李鴻章(りこうしょう)ら高官と渡り合い、光緒帝(こうしょてい)や西太后(せいたいごう)らに謁見し、清国外債借入問題処理に活躍した。この間、列強諸国に浸食されつつある清国に福建省の不割譲を確約させ、また日本への留学生派遣を清国側に提案するなど積極的な日清外交を行なった。
明治32年(1899年)公使退任以降は、政治から身を引き、月刊誌『東洋画報』顧問、『近事画報』社長として作家・国木田独歩を引き立て、本山彦一の大阪毎日新聞社に入り、相談役、監査役、副社長を歴任。この間に社会主義に関心を持ち、社会主義的市場経済を論じた『新社会』(1902年)やその理想社会を描いた小説『不必要』(1907年)を発表した。昭和6年(1931年)6月18日、千駄ヶ谷町(現在の東京都渋谷区)の自宅で死去、82歳。墓地は多磨霊園にある。
photo by Wikipedia
■「明治維新」「幕末」に関連する防災格言内の記事
佐藤一斉(1772~1859 / 江戸時代後期の陽明学者(朱子学)・江戸昌平坂学問所総長)(2011.05.16 防災格言)
マシュー・ペリー提督(1794~1858 / アメリカ海軍軍人 東インド艦隊司令長官)(2013.01.07 防災格言)
徳川斉昭(1800~1860 / 幕末の大名・常陸水戸藩主(第9代))(2015.08.17 防災格言)
伊藤圭介(1803~1901 / 幕末明治期の博物学者・医師 日本初の理学博士 東京大学名誉教授 男爵)(2021.06.28 防災格言)
チャールズ・ダーウィン(1809~1882 / イギリスの自然科学者 「進化論」で著名)(2014.04.21 防災格言)
鈴木重胤(1812~1863 / 幕末の国学者 尊皇派により暗殺された)(2015.11.30 防災格言)
真木和泉(1813~1864 / 幕末期の尊皇攘夷派の志士 天王山で自害)(2012.11.05 防災格言)
鍋島直正(1815~1871 / 幕末の大名・肥前国佐賀藩主(第10代) 大納言)(2019.12.09 防災格言)
ハインリッヒ・シュリーマン(1822~1890 / ドイツの考古学者・実業家)(2016.11.21 防災格言)
勝海舟(1823~1899 / 江戸・明治の政治家 従五位下・安房守 日本海軍の生みの親 伯爵)(2012.12.03 防災格言)
佐野常民(1823~1902 / 佐賀藩士・政治家 初代日本赤十字社社長 伯爵)(2013.02.11 防災格言)
山内容堂(1827~1872 / 幕末の大名 土佐藩15代藩主 従二位・権中納言)(2010.05.10 防災格言)
釈雲照(1827~1909 / 幕末明治期の真言宗僧侶 戒律主義「十善会」発足)(2012.02.13 防災格言)
津田真道(1829~1903 / 津山藩士 幕末・明治初期の法学者・啓蒙思想家・官僚 開成所(後の東京大学)教授)(2015.08.03 防災格言)
川路利良(1834~1879 / 薩摩藩士 初代大警視(現警視総監)「近代警察の父」)(2013.11.04 防災格言)
渡辺南隠(1834~1904 / 幕末明治期の臨済宗僧侶 禅僧として白山道場を開単 広瀬淡窓門下)(2010.08.16 防災格言)
福沢諭吉(1835~1901 / 啓蒙思想家 慶應義塾創設者 「脱亜論」を提唱)(2010.09.20 防災格言)
五代友厚(1835~1885 / 幕末明治期の薩摩藩士・実業家 大阪経済界の功労者)(2021.04.05 防災格言)
坂本龍馬(1836~1867 / 幕末の尊皇派の志士 土佐藩郷士)(2015.10.19 防災格言)
山岡鉄舟(1836~1888 / 幕末明治期の政治家 一刀正伝無刀流開祖 明治天皇の侍従)(2010.08.09 防災格言)
大倉喜八郎(1837~1928 / 実業家 大倉財閥の設立者 従三位男爵)(2020.08.03 防災格言)
安田善次郎(1838~1921 / 実業家 安田財閥の創設者)(2011.01.03 防災格言)
大隈重信(1838~1922 / 佐賀藩士・内閣総理大臣(第8,17代)早稲田大学創立者 侯爵)(2010.09.27 防災格言)
渋沢栄一[1] (1840~1931 / 幕臣・日本資本主義の父)(2013.03.18 防災格言)
渋沢栄一[2](1840~1931 / 幕臣 官僚・実業家・教育者 日本資本主義の父)(2019.07.15 防災格言)
橋本綱常(1845~1909 / 医師 陸軍軍医総監 東京大学医科大学教授 子爵 橋本左内の実弟)(2014.05.12 防災格言)
三浦梧楼(1847~1926 / 武士・政治家 陸軍中将 子爵 号は観樹)(2015.12.21 防災格言)
益田孝 (1848~1938 / 幕府軍騎兵隊長・三井物産創設者)(2015.05.25 防災格言)
乃木希典(1849~1912 / 武士・長府藩士 陸軍大将 学習院院長(第10代))(2021.05.03 防災格言)
稲垣示(1849~1902 / 明治の政治家・衆議院議員 自由民権家)(2019.04.01 防災格言)
バジル・ホール・チェンバレン(1850~1935 / イギリスの日本語学者 外国人初の東京大学名誉教授)(2015.06.15 防災格言
小泉八雲 (ラフカディオ・ハーン)(1850~1904 / ギリシャ出身の作家・教育者・ジャーナリスト)(2015.10.26 防災格言)
矢野龍渓(1851~1931 / 佐伯藩士 新聞経営者・小説家・政治家 代表作『経国美談』)(2022.05.09 防災格言)
山下重民(1857~1942 / 明治の風俗史研究家 風俗画報の編集長)(2008.09.22 防災格言)
新渡戸稲造(1862~1933 / 農学者・教育者・法学者 東京女子大初代学長)(2012.11.12 防災格言)
中島湘煙(1863~1901 / 女性解放運動家 作家 フェリス女学院名誉教授 海援隊隊士・中島信行の妻)(2011.07.25 防災格言)
宮武外骨(1867~1955 / 明治・大正期のジャーナリスト・著述家・文化史家)(2015.08.31 防災格言)
ポール・クローデル(1868~1955 / フランスの劇作家 詩人 外交官)(2012.12.17 防災格言)
キャサリン・サンソム(1883~1981 / イギリス外交官J・サンソム夫人)(2013.01.07 防災格言)
■「ジャーナリスト」に関連する防災格言内の主な記事
余禄(毎日新聞 1995年1月18日朝刊)より(2016.01.18 防災格言)
天声人語(朝日新聞 1995年1月27日朝刊)(2009.01.19 防災格言)
ウォルト・ホイットマン(1819~1892 / アメリカの詩人 ジャーナリスト)(2007.11.19 防災格言)
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)(1850~1904 / 作家 ジャーナリスト)(2015.10.26 防災格言)
矢野龍渓(1851~1931 / 新聞経営者・小説家・政治家 代表作『経国美談』)(2022.05.09 防災格言)
本山彦一(1853~1932 / 実業家・大阪毎日新聞社長 貴族院議員)(2018.05.21 防災格言)
山下重民(1857~1942 / ジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
三宅雪嶺[1] (1860~1945 / 哲学者・評論家・ジャーナリスト)(2017.01.30 防災格言)
三宅雪嶺[2] (1860~1945 / 哲学者・評論家・ジャーナリスト)(2017.07.31 防災格言)
防災格言こぼれ話 「火事を待つ人」(朝比奈知泉(あさひな ちせん / 1862~1939))(2010.07.29 店長コラム)
黒岩涙香(1862~1920 / ジャーナリスト・翻訳家・作家 「万朝報」を創刊)(2011.05.23 防災格言)
徳富蘇峰[1](1863~1957 / ジャーナリスト・思想家・評論家・歴史家・随筆家・新聞経営者)(2009.07.27 防災格言)
徳富蘇峰[2](1863~1957 / ジャーナリスト・思想家・評論家・歴史家・随筆家・新聞経営者)(2020.07.13 防災格言)
宮武外骨(1867~1955 / ジャーナリスト・著述家・文化史家)(2015.08.31 防災格言)
角田浩々歌客(1869~1916 / 明治・大正期の新聞記者 評論家 詩人)(2012.06.11 防災格言)
高山樗牛(1871~1902 / 文芸評論家 ジャーナリスト)(2016.02.01 防災格言)
岸上克己(1873~1962 / 社会運動家・ジャーナリスト)(2017.06.26 防災格言)
下村海南(下村宏)[1](1875~1957 / ジャーナリスト・官僚政治家・歌人 内閣情報局総裁 拓殖大学学長(第6代))(2016.6.27 防災格言)
下村海南(下村宏)[2](1875~1957 / ジャーナリスト・官僚政治家・歌人 内閣情報局総裁 拓殖大学学長(第6代))(2020.04.13 防災格言)
正宗白鳥(1879~1962 / 小説家・劇作家・評論家 元読売新聞記者)(2018.09.17 防災格言)
松岡俊三(1880~1955 / 政治家・政友会 衆議院議員(9期) 都新聞社副社長)(2016.01.25 防災格言)
石原純(1881~1947 / 作家 理論物理学者 ジャーナリスト)(2012.03.19 防災格言)
石山賢吉(1882~1964 / 実業家・ダイヤモンド社創業者 ジャーナリスト)(2015.02.23 防災格言)
岡本一平(1886~1948 / 漫画家 「元祖漫画家」「日本漫画の祖」)(2022.04.04 防災格言)
菊池寛(1888~1948 / 作家 ジャーナリスト)(2012.03.26 防災格言)
小野蕪子(小野賢一郎)(1888~1943 / 俳人・小説家・陶芸評論家・ジャーナリスト)(2020.11.16 防災格言)
高橋雄豺(1889~1979 / 新聞経営者・読売新聞社副社長 香川県知事)(2018.06.11 防災格言)
北村兼子(1903~1931 / 大正から昭和初期の女性ジャーナリスト 随筆家)(2012.11.26 防災格言)
磯村英一(1903~1997 / 都市社会学者 東京都立大学名誉教授 東洋大学学長)(2014.05.05 防災格言)
清水幾太郎(1907~1988 / 社会学者 ジャーナリスト 学習院大学教授)(2008.9.29 防災格言)
カール・マイダンス(1907~2004 / 写真家 雑誌「Life」のカメラマン)(2018.06.18 防災格言)
大和勇三(1914~1991 / 経済評論家 日本経済新聞社ジャーナリスト)(2010.03.29 防災格言)
吉沢久子(1918~2019 / 生活評論家・エッセイスト)(2019.12.30 防災格言)
司馬遼太郎(1923~1996 / 小説家・ノンフィクション作家・評論家・ジャーナリスト)(2015.01.12 防災格言)
野間寅美(1927~ / 海洋ジャーナリスト 元海上保安庁首席監察官)(2010.07.05 防災格言)
伊藤和明(1930~ / 元NHK解説委員 日本防災士機構理事)(2009.7.20 防災格言)
柴田俊治(1931~2015 / ジャーナリスト 朝日放送社長 朝日新聞記者)(2019.01.07 防災格言)
筑紫哲也(1935~2008 / ニュースキャスター・ジャーナリスト 元朝日新聞記者)(2009.09.21 防災格言)
小田貞夫(1936~ / 元NHK解説委員)(2009.08.17 防災格言)
小川和久(1945~ / ジャーナリスト・軍事アナリスト 危機管理総合研究所長 静岡県立大学特任教授)(2008.02.04 防災格言)
池上彰 (1950~ / ニュースキャスター ジャーナリスト 元NHK報道局記者主幹)(2010.07.19 防災格言)
竹内政明[1] (1955~ / ジャーナリスト 読売新聞東京本社取締役論説委員)(2017.10.09 防災格言)
竹内政明[2] (1955~ / ジャーナリスト 読売新聞東京本社取締役論説委員)(2018.07.16 防災格言)
マイケル・ポーラン(1955~ / ジャーナリスト カリフォルニア大学教授)(2012.09.10 防災格言)