防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

石川成章(1872~1945 / 地質学者・僧侶)の地球の現象と人生の関係性について述べた法話「明と暗」(1920年)の名言 [今週の防災格言732]

time 2022/01/03

石川成章(1872~1945 / 地質学者・僧侶)の地球の現象と人生の関係性について述べた法話「明と暗」(1920年)の名言 [今週の防災格言732]

『 我々が各自の一生涯をして、輝いた歴史とするための手本てほん標準ひょうじゅんは物質的には太陽であり、精神的には神明仏陀である。 』

 

石川成章(1872~1945 / 地質学者・地球科学者 僧侶・真宗大谷派参事 京都帝大講師)

 

“天然の現象から考えても、人事の上から考えても、畢竟(ひっきょう)吾人の日常生活は消極的計りではいけない。”とも述べている。

科学者でもあり仏教者でもあった石川成章(いしかわ せいしょう)は、大正9年(1920年)2月27日、京都・妙誓寺で行われた田伏家(京都・河六旅館の主人)法要に招かれ、太陽黒点活動など地球物理学の話を交えて、人間の人生の「明と暗」をテーマにした法話を二時間ほど話した。

※註釈
大正3年(1914年)6月、オーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公がボスニアの首都サラエボで暗殺され、この事件を契機に第一次世界大戦が勃発する。

曰く―――。

明治三十八年(1905年)は黒点の極大の年でありました。
それからだんだん減じて、大正二年(1913年)の末には殆ど見えない位まで極小となり、大正三年の始めから、又そろそろと殖(ふ)えて来た
のであります。
そして大正六年八月頃には、非常に多くなって黒点の占める総面積は、太陽の円盤の約百分の一に達したのであります。
これは、実に未曽有の極大でありまして、丁度その時は、未曽有の世界大戦乱が、最も激しかった時であります。
太陽黒点が世界大戦乱に関係している様に思えるのは、偶然であるかもしれんが、非常に面白い現象だと思います。
それから又、漸次すくなくなって、大正八年の始めは少なく、現在大正九年は再び少しづつ増してきておるのであります。

地球上の現象にかくまで大きい関係をもっている黒点の周期は、我々人事の上にも共通な物があるまいかと言う事について話したいと思います。

ちょうどこの大正三年頃には、私は未だ福岡の方におりましたが、当時日を定めて、私共が集会し、種々自分の研究等を発表して、互いに談合する会合がありました。
その年(大正三年)の二月でありましたが、その会合の席上で、私は『昨年から今年へかけ太陽黒点がこんな未曽有の極小を示しているから、必ず何か世界的大変動が起こるであろう。』といった風なことを申しましたが居合わせた人達は皆、『石川君は少々気でも間違ったのだろう。』等と言っておりました。然るにどうですか、七月八月と段々日が経って行くに従って、欧州の雲行きはいよいよ険悪を極め、遂に今次の大戦乱をおっぱじめたのであります。そうすると二月に合った人々の中では、『石川君、やはり君の予言は的中した。なぜ米の買占めでもしておかなかったのか。』等と大笑いをしたことがあります。

…(中略)…

我々が各自の一生涯をして、輝いた歴史とするための手本(てほん)標準(ひょうじゅん)は物質的には太陽であり、精神的には神明仏陀である事は、この講演の始めに話した事で、今まで述べてきった総ては、この論点に帰着するのでありますが、今日は私の立場としては、主に物質的方面、即ち太陽黒点についてお話したので『明中有暗(めいちゅうあんあり)、暗中有明(あんちゅうめいあり)』と言う事や、その他面白い黒点の対照が、自然界にもまた物質的に、多々あると言う事が合点して頂けば十分であります。

要するに、天然の現象から考えても、人事の上から考えても、畢竟(ひっきょう)吾人の日常生活は消極的計りではいけない。
進んでは自己の暗黒を転じて光明とし、その刹那的心相(しんそう)を汚(けが)れのない真(しん)、善美(ぜんび)の表現たらしめて、遂にはその点を連ねて、白紙上の一線となって表れた一生涯をして、宛(えん)として栖鳳(せいほう)、探幽(たんゆう)等の画(え)の如くに、世界の貴重なる記念として輝かしめねばならないのであります。

(出典「記念講話:黒点」(大正9年)より)

 

石川成章(号を簡堂)は、明治5年6月21日(1872年7月26日)愛知県碧海郡下中嶋村(現・岡崎市中島町字本町)の真宗大谷派寺院「浄光寺」の住職・石川嶺観の四男に生まれる。
岡崎の真宗三河教校に学び、第一高等学校(旧制一高)を経て、明治29年(1896年)年、東京帝国大学理科大学地質学科に入学。明治32年(1899年)に卒業すると、東京真宗中学講師、東京高等師範学校(東京高師)講師、陸軍中央幼年学校講師(後に教授)、早稲田大学講師として教鞭をふるった。
明治40年(1907年)鉱務技師として福岡県鉱山監督局に赴き、大正6年(1917年)京都帝国大学工学部採鉱治金学科と理学部地質学科講師を嘱託。講師を続けながら、旧制中学校の地質学の教科書を中心に多くの書物を執筆し後進の育成に努めるとともに、宗教・漢詩文の方面でも活躍した。
晩年、郷里岡崎に戻り浄光寺第16世住職となり、真宗大谷派本願寺参事を務めた。昭和20年(1945年)9月6日没、73歳。
栄典、勲四等授瑞褒章(1913年)、正五位(1916年)など。


Wikipediaより







■「宗教」「僧侶」に関連する防災格言内の記事
釈迦(紀元前5世紀頃 / 仏教の開祖)(2011.12.19 防災格言)
旧約聖書『伝道者の書』第1章9節より(2009.11.23 防災格言)
旧約聖書『創世記』41章より(2011.12.26 防災格言)
空海・弘法大師(774~835 / 平安時代の僧侶 真言宗開祖)(2011.10.31 防災格言)
最澄・伝教大師(767~822 / 平安時代の僧侶 天台宗開祖)(2008.07.28 防災格言)
源為憲(生年不詳~1011 / 平安時代中期の文学者 正五位下・美濃守)(2018.03.05 防災格言)
慈円(1155~1225 / 鎌倉時代初期の天台宗僧侶 歌人)(2014.03.17 防災格言)
無住(1227~1312 / 鎌倉時代の臨済宗僧侶 『沙石集』『雑談集』著者)(2014.08.25 防災格言)
ヴェルナー・ロレヴィンク(1425~1502 / ドイツの修道士(カルトジオ会)・神学者)(2020.08.10 防災格言)
ルイス・フロイス(1532~1597 / ポルトガル出身のカトリック司祭 イエズス会宣教師)(2013.05.27 防災格言)
ブレーズ・パスカル(1623~1662 / フランスの数学者・哲学者・キリスト教神学者)(2021.02.08 防災格言)
松尾芭蕉(1644~1694 / 江戸前期の俳人 俳聖 紀行文『おくのほそ道』)(2010.12.20 防災格言)
釈雲照(1827~1909 / 真言宗僧侶 明治維新後に戒律主義「十善会」発足)(2012.02.13 防災格言)
渡辺南隠(1834~1904 / 幕末明治期の臨済宗僧侶 禅僧として白山道場を開単)(2010.08.16 防災格言)
南条文雄(1849~1927 / 仏教学者・真宗大谷派僧侶 日本初の文学博士)(2016.10.10 防災格言)
道重信教(1856~1934 / 僧侶 増上寺法主(第79代)・浄土宗大僧正)(2018.10.22 防災格言)
佐治実然(1856~1920 / 宗教家 日本ユニテリアン協会会長 平民社相談役)(2010.03.15 防災格言)
ミカエル・A・ステシエン(1857~1929 / 在日宣教師・ルクセンブルグの神父・キリシタン研究者)(2020.12.21 防災格言)
内村鑑三(1861~1930 / キリスト教無教会主義の創始者・評論家)(2014.12.29 防災格言)
新渡戸稲造(1862~1933 / 農学者・教育者・法学者 東京女子大初代学長)(2012.11.12 防災格言)
ジョージ・サンタヤナ(1863~1952 / スペイン系アメリカ人の哲学者・詩人・小説家)(2021.03.01 防災格言)
清沢満之(1863~1903 / 宗教家・真宗大谷派僧侶 哲学者・思想家)(2016.09.12 防災格言)
河口慧海(1866~1945 / 黄檗宗僧侶 仏教学者 日本人初のチベット入境者)(2011.09.26 防災格言)
夏目漱石(1867~1916 / 小説家 英文学者 代表作『吾輩は猫である』等)(2012.04.09 防災格言)
北村透谷(1868~1894 / 詩人・文芸評論家 25歳の若さで自殺)(2019.06.10 防災格言)
戸川秋骨(1870~1939 / 英文学者・随筆家 慶應義塾大学教授)(2016.02.15 防災格言)
出口王仁三郎(1871~1948 / 宗教家・芸術家 新宗教「大本」教祖の一人)(2020.11.02 防災格言)
石川成章(1872~1945 / 地質学者・地球科学者 僧侶・真宗大谷派参事 京都帝大講師)(2022.01.03 防災格言)
奥谷文智(1883~1974 / 宗教家 天理教加納分教会長 機関紙「道之友」記者)(2011.11.28 防災格言)
九条武子(1887~1928 / 歌人・慈善活動家 関東大震災で罹災)(2021.09.13 防災格言)
賀川豊彦(1888~1960 / キリスト教社会運動家・作家 イエス団創始者)(2014.10.20 防災格言)
橋本徹馬(1890~1990 / 政治評論家・政治活動家・思想家・著述家 「紫雲山地蔵寺」初代住職で水子供養運動創唱者)(2020.10.12 防災格言)
山田恵諦(1895~1994 / 天台宗僧侶 第253世天台座主)(2012.04.02 防災格言)
立花大亀(1899~2005 / 臨済宗僧侶 京都大徳寺派最高顧問 大亀宗雄)(2013.09.23 防災格言)
佐藤初女(1921~2016 / 福祉活動家 森のイスキアを主催)(2019.10.28 防災格言)
瀬戸内寂聴(1922~2021 / 作家・天台宗尼僧 文化勲章(2006年) 本名・晴美)(2021.11.15 防災格言)
司馬遼太郎(1923~1996 / 作家・評論家 代表作『梟の城(直木賞)』など)(2015.01.12 防災格言)
高木慶子(1936~ / カトリックのシスター 聖トマス大教授 生と死を考える会全国協議会会長)(2009.06.15 防災格言)
丸茂湛祥(1940~2020 / 日蓮宗僧侶・宗教心理学者・日本画家)(2013.08.05 防災格言)
草地賢一(1941~2000 / 牧師 国際ボランティア学会創設者 PHD協会総主事)(2011.08.29 防災格言)
アン・タイラー(1941~ / 米国の人気小説家 ピュリッツァー賞(1988年))(2018.05.28 防災格言)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,防災グッズ,非常食
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ

人気記事