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「被災時のサバイバルとは」(書籍『富士山噴火と東海大地震』(木村政昭(琉球大学名誉教授)監修、著者・安恒理(ジャーナリスト)ほか 2001年))の名言 [今週の防災格言724]

time 2021/11/08

「被災時のサバイバルとは」(書籍『富士山噴火と東海大地震』(木村政昭(琉球大学名誉教授)監修、著者・安恒理(ジャーナリスト)ほか 2001年))の名言 [今週の防災格言724]

『 アウトドアライフの知恵は、サバイバル生活に重要である。しかし、被災時のサバイバルは、「火をおこしたり」「カマドを作ったり」「野外料理の作り方」ではない。 』

 

『富士山噴火と東海大地震』(木村政昭(琉球大学名誉教授)監修、著者・安恒理(ジャーナリスト)ほか イースト・プレス 2001年)「被災時のサバイバルとは」より

 

格言は、木村政昭(琉球大学名誉教授)監修、安恒 理(ジャーナリスト)ほかの著書『富士山噴火と東海大地震』(イースト・プレス 2001年)「被災時のサバイバルとは」より。

曰く―――。

アウトドアライフの知恵は、サバイバル生活に重要である。しかし、被災時のサバイバルは、「火をおこしたり」「カマドを作ったり」「野外料理の作り方」ではない。

知らないより、知っていたほうがいいことはもちろんだが、平時から近所づきあいをよくしたり、家族で避難場所を取り決めたり、駅の構内でもビルの中でもつねに、「もしいま、地震がきたらどうするか」逃げる方法を考えておくことである。

「人間はいつか必ず死ぬ」と達観することも必要だが、死なずにすむところを、無策であったためにムダ死にするケースも考えられる。つまり、気が動転してわれを忘れて取り乱すことのないように、さりとて逃げたり危険から身を避けることを、「卑怯」だとか「情けない」とか思わないようにしたい。

自分が第一と考えることは恥ずかしいことではない。だが、そのために不公正な手段を使ったり、他人はどうでもいいと思って行動すると、思わぬとばっちりを受けることにもなりかねない。道徳的にというだけではなく、その選択がけっきょく自分にとってプラスにならないことがよくある、という意味である。

… … …

尚、本書では、富士山噴火などの災害で家から逃げるために対処すべきこととして、「パニックにならない」「デマに惑わされない」「火災を防ぐ」の三点があげられている。
三点の基本事項について、短くまとまっているので、ここに引用する。

噴火災害は短時日では終息しない。いったん収まったかに見えて、再度の噴火があったり、水蒸気爆発などがあったり、数カ月から年単位の長期戦になるケースが多い。

噴火火砕物、降灰については、ヘルメットや防塵マスクなどの手立てが講じられるが、火砕流、溶岩流には手立てはない。 …(中略)… 手立てのない災害からのサバイバルは、危険から逃げることしかない。

しかし、長期にわたる噴火災害のどの時期に「逃げる」べきなのか、何時まで逃げればいいのかは、難しい問題である。可能であれば、「噴火が確認」された時点で、「逃げる」算段をしたほうがいい。

災害が大惨事につながるのは、多くの場合「冷静さ」を失うことによってもたらされる。

被害を最小限にとどめるため第一に必要なことは、パニックに陥らないことである。自分自身は冷静でも、群集に巻き込まれると、転倒しただけでも大惨事につながってしまう。迅速な行動、手際よく次の行動に移ることと、焦って慌てて走り出すこととは異なる。火災などの災害が刻々と近づいている場合でも、極力落ち着くように自分にいい聞かせよう。

第二に、デマに惑わされないこと。いくら進歩した現在の科学でも、災害を日付や時刻入りで予知することは不可能である。 …(中略)… 噂や出所の明らかでない予測情報は、役所やメディアに確認すべきである。

第三に、火災を防ぐことである。「グラッときたら火の始末」といわれているが、震度6以上の揺れでは、「グラッ」ときた時点での火の始末は不可能だ。無理して火元に近づくとかえって火傷を負いかねない。 …(中略)… いったん小康状態になった時点で、ガス栓を閉める。

…(中略)… なるべく消火器で消し止める。近所の人の助けを借りても、その段階で火を消し止めることが、惨事を最小限に食い止めることにつながる。消火器は平時から備えつけておくことが望ましい。

消火器がない場合、フトンや毛布などをかぶせるのもひとつの方法である。 …(中略)… とりあえず炎をおさめたら、その上から水をかけて確実に火を消さなければならない。手軽で便利な消火器としては、火の中に投げ込むタイプのものもある。

炎が天井に達するほど拡がった時点では、一般人には手のほどこしようがない。消防署に助けを求め、逃げ出す算段を考えたほうが賢明であろう。

―――とある。







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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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