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武田五一（1872〜1938 / 建築家京都大学建築学科初代教授）が関東大震災（大阪朝日新聞社主催「関東震災観察講演会」）で遺した名言 [今週の防災格言137]

time 2010/06/28

『地震に対しては地震を根本的になくすることが出来ない以上地震に打克つ抵抗力の養成に全力を尽くさなければならぬ。』

武田五一（1872～1938 / 建築家工学博士京都大学建築学科初代教授）

武田五一（たけだごいち）は「関西建築界の父」と呼ばれる近代日本を代表する建築家の一人。
1900年から3年間のヨーロッパ留学から帰国後、アール・ヌーヴォーやセセッションなど新しい建築デザインを日本に紹介した。主な作品に「京都帝国大学本館」「京都府記念図書館」など。フランク・ロイド・ライトと親交があり国会議事堂の建設や、法隆寺、平等院などの古建築修復にも深く関わっている。
東京帝国大学工科大学（東京大学）助教授、京都高等工芸学校（京都工芸繊維大学）教授、大蔵省臨時建築部技師などを歴任し、京都帝国大学（京都大学）に工学部建築学科を創立し初代教授となった。

この格言は、大正12（1923）年に大阪朝日新聞社で開催された関東震災観察講演会での発言から。
―――防火地域に松・杉・檜は却って火を呼ぶので禁物。街路樹を植るには落葉樹が一番良い。とも提言されている。

参考資料　大阪朝日新聞社の関東震災観察講演会　全文

どうして地震に克つか　工学博士武田五一
我国は現在恵まれすぎるくらい地震帯には恵まれており、世界の大地震帯が太平洋沿岸に沿うて流れしかも周期率をなして必ず起る。
此地震に対しては地震を根本的になくすることが出来ない以上、地震に打克つ抵抗力の養成に全力を尽くさなければならぬ。
幸ひ地震の性質震が良く判ってきた今日即ち地震の度は一定の度合があって0.4以上に達する地震は先づ無いのであるから0.4に耐へられる建物を造れば良い理由である。

火災に対しても又然りで地震と同時に水道は断水して用をなさないが常であるのみならず、今度のやうに一時に九十数箇所に火災が生じた場合東京市内三十数台のポンプでは如何とも出来ないのだから建物それ自体を火に耐へるやうにしなければならぬ、即ち今後の都市建築は都市の中心地は必ず地質の良いところに置くこと、即ち東京なれば市の中心地を地質の弱い東京の下町、本所、深川方面においてはならぬ。

避難の場所を多くすること。それには公園を設け道路を広くする。

水の供給を十分にすること。それには、池、井戸、堀などを沢山掘って平素は都市美観に供する。

街路樹を植ること。松、杉、檜は却って火を呼ぶ、落葉樹が一番良い。

市街の計画は風向に注意する、即ち平素の風向を研究して直角に位置せしめる防火地区の設備及び薬品発火物を擁する家は特別の設備を設くること。

最後に火災の際における市民の訓練。事実に就いて言えば、今度の震災には慌てたために負傷したものが多数で、かかる際の市民の訓練如何は余程結果に影響する。