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宇田道隆が関東大震災の際に遺した名言（1905～1982 / 寺田寅彦門下の海洋物理学者・歌人東京水産大学名誉教授）[今週の防災格言503]

time 2017/08/14

『自然を征服しようとするとするとえらい目にあう。』

宇田道隆（1905～1982 / 海洋物理学者・歌人東京水産大学名誉教授）

曰く―――。

自然を征服しようとするとするとえらい目にあいますよ。
もっと自然を尊重して、観察して、研究の材料を増やさぬといけません。
そんな所に宇宙物理、地球物理、海洋学、地震学が議論紛々として決しかねる原因が宿っているでしょう。

格言は、学生時代の恩師である寺田寅彦の言葉を、宇田がノート（寺田寅彦先生語録）に記録してたもので、大正15（1926）年7月31日のメモから。
この記録の前後には関東大震災時に寅彦とともに被害調査をした今村明恒博士や上野の美術展で罹災した時の記述もあるため、恐らく関東大震災の話についての一連のメモと思われる。
（出典：宇田道隆文庫「寺田寅彦先生語録」より）

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宇田道隆（うだみちたか）は、寺田寅彦門下の海洋物理学者。
潮目や黒潮など様々な海洋研究と漁業現場に密着した地道な調査を行い、海と魚の関係を漁業者にもわかりやすく解説し「魚が潮目に集まる」ことを一般漁業者へ普及させるなど、特に戦後の食糧供給としての水産海洋学の発展に多大な貢献を果たした人物。
戦前から日本水産学会、日本海洋学会など発足に寄与し、1962（昭和37）年、水産海洋研究会（水産海洋学会）を創立させ初代代表となった。

1905（明治38）年1月13日、高知県土佐郡小高坂村に生まれる。
後の恩師となる物理学者・寺田寅彦とは同郷で、生家はわずか数百メートルほどしか離れていなかった、という。
高知師範付属小学校、高知県立第一中学校を卒業。中学二年のとき、母校の先輩として来校した寺田寅彦の講演を聞いて物理学に興味を覚え、高校時代に来日したアインシュタイン博士の仙台での講演を聴き物理学を志す。
学資の問題で海軍兵学校に進学準備をしていたが、育英奨学金をもらい、1921（大正10）年、旧制第二高等学校・理科（現東北大学）に進学。
1924（大正13）年、東京帝国大学物理学科に入学し、寺田寅彦や藤原咲平に師事する。1927（昭和2）年、大学を卒業後、旧農林省水産講習所（農林省水産試験場、後の東京水産大学）海洋調査部に勤務。
1928（昭和3）年、兵役により浜松高射砲第一連隊に入隊。
1936（昭和11）年、東京都世田谷区奥沢へと移り住む。
1939（昭和14）年、「海洋の潮目の研究」で理学博士となる。
1941（昭和16）年、高射砲兵少尉として召集され満州に出兵。翌1942（昭和17）年に兵役解除により本土復帰すると、恩師・藤原咲平（当時、中央気象台長）の要請で神戸海洋気象台長として赴任。
1943（昭和18）年、再度召集。陸軍中尉としてスマトラでは機関砲101大隊小隊長、シンガポールでは南方軍総司令部気象班、広島で船舶司令部気象教育隊などに着任するが、1945（昭和20）年8月6日の広島原爆で負傷。
敗戦後は、広島気象台に勤務し、原爆による「黒い雨」などの影響調査に従事した。
1953（昭和28）年東京水産大学（久里浜校舎）教授、1968（昭和43）年定年退官、東海大学海洋学部教授に就任。1974（昭和49）年東京水産大学名誉教授。1982（昭和57）年5月10日、死去。享年77。
主な受賞歴、第1回日本海洋学会賞（1966年）、勲二等瑞宝賞（1976年）、趣味の歌人として1977（昭和52）年の宮中歌会始で召人に指名されている。

宇田道隆先生