『 古地震を生んだであろう断層の身元調査はその地域の地形の生い立ちをたずねることからはじまる。 』
藤田和夫(1919~2008 / 地質学者 理学博士 大阪市立大学名誉教授)
格言は編著『古地震―歴史資料と活断層からさぐる(東京大学出版会 1982年)』の《第5章 古地震発生地域の生い立ち》より。
曰く―――。
日本の山河は美しい。山あり谷ありまた平野ありで、旅する者を飽きさせない。この変化に富む地形は実は断層や地震を生み出した活発な地殻運動の産物なのである。したがって、古地震を生んだであろう断層の身元調査はその地域の地形の生い立ちをたずねることからはじまる。
藤田和夫(ふじた かずお)は、日本の断層研究の第一人者として知られる地質学者。大阪市生まれ。専門は構造地質学。青年期より登山と探検に精を出し、数多くのフィールドワークの経験を基に、ネオテクトニクス(第四紀構造地質学)と活断層の先駆的研究を行い、特に近畿地方の特徴的な断層や構造帯を「近畿トライアングル(三角地帯)」と名付け、六甲山の隆起史などをふまえて、早くから「神戸に大地震は起こる」と警告を発した人物。
小学生時代から兵庫県芦屋市で育ち、大阪の北野高校、旧制第三高等学校を経て、1943(昭和18)年に京都帝国大学理学部地質学鉱物学科を卒業。その後2年間の兵役を経て、終戦後の1945(昭和20)年に京都大学に助手として勤務した。1950(昭和25)年、大阪市立大学理工学部地学教室(理学部)助教授となり、1960(昭和35)年に教授に昇進、1983(昭和58)年退職。同年、帝塚山大学教授となり、1990(平成2)年退職。1995(平成7)年の阪神淡路震災(兵庫県南部地震)で自宅が壊れたが、大きな揺れは、地震の前から骨折で入院していたポートアイランドの病院で体験したという。
1987(昭和62)年には大阪に断層研究資料センターを設立すると同時に理事長に就任し、亡くなるまで活断層資料の集積と啓蒙に尽力された。また、日本応用地質学会関西支部長や阪神淡路震災後の兵庫県阪神地域活断層調査委員会委員長などを歴任。2008(平成20)年12月1日に89歳で逝去。
三高時代は山岳部に属し、1940(昭和15)年には梅棹忠夫(うめさお ただお / 1920〜2010 民俗学者・国立民族学博物館名誉教授)ら三高山岳部の仲間3人と朝鮮半島北部の白頭山に遠征し登頂に成功。その後も、北部大興安嶺探検隊(京都帝大)、カラコラム・ヒンズークシ地域学術探検隊(京都大学)、パンジャップ大学合同ヒンズークシ探検隊隊長(京都大学)として学術探検でも活躍されている。
1967(昭和42)年、第22回秩父宮記念学術賞受賞。1993(平成5)年、正四位勲三等旭日中綬賞叙勲。1997(平成9)年、兵庫県科学賞受賞。
写真:公益社団法人 日本地震学会WEBより
■「登山家」「探検家」「冒険家」に関連する防災格言内の記事
セオドア・ルーズベルト(1858~1919 / 政治家(共和党)・冒険家 アメリカ合衆国大統領(第26代))(2022.08.15 防災格言)
河口慧海(1866~1945 / 黄檗宗僧侶 仏教学者 日本人初のチベット入境者)(2011.09.26 防災格言)
結城豊太郎(1877~1951 / 銀行家 大蔵大臣・日本銀行総裁(第15代))(2016.12.05 防災格言)
須川邦彦(1880~1949 / 船乗り 商船学校教授 東京商船学校校長 遭難記「無人島に生きる十六人 」)(2014.07.21 防災格言)
アルフレッド・ウェゲナー(1880~1930 / ドイツの気象学者・地球物理学者 「大陸移動説(1912年)」を提唱)(2021.10.25 防災格言)
東善作(1893~1967 / 世界三大陸単独横断飛行を達成した日本の冒険家)(2010.8.30 防災格言)
西堀栄三郎(1903~1989 / 険家・理学博士 第1次南極越冬隊隊長)(2008.10.20 防災格言)
高橋喜平(1910~2006 / 雪氷学者・雪崩研究家 エッセイスト)(2022.01.10 防災格言)
四手井綱英(1911~2009 / 森林生態学者 京都大学農学部名誉教授 京都府立大学長)(2022.02.28 防災格言)
串田孫一(1915~2005 / 詩人・哲学者・随筆家)(2014.08.04 防災格言)
藤田和夫[1](1919~2008 / 地質学者 理学博士 大阪市立大学名誉教授)(2015.11.09 防災格言)
藤田和夫[2](1919~2008 / 地質学者 理学博士 大阪市立大学名誉教授)(2017.05.08 防災格言)
神沼克伊(1937~ / 地球物理学者・極地探検家 国立極地研究所名誉教授 理学博士)(2018.11.12 防災格言)
横山卓雄[1](1937~ / 地質学者 理学博士 同志社大学名誉教授)(2009.04.20 防災格言)
横山卓雄[2](1937~ / 地質学者 理学博士 同志社大学名誉教授)(2022.01.17 防災格言)
田部井淳子(1939~2016 / 登山家 女性初のエベレスト・七大陸最高峰登頂者)(2019.12.23 防災格言)
今井通子(1942~ / 登山家・医師 東京農業大学客員教授)(2010.02.01 防災格言)
北村兼子(1903~1931 / 大正から昭和初期の女性ジャーナリスト 随筆家)(2012.11.26 防災格言)
チャールズ・ダーウィン(1809~1882 / イギリスの自然科学者 「進化論」で著名)(2014.04.21 防災格言)
ハインリッヒ・シュリーマン(1822~1890 / ドイツの考古学者・実業家)(2016.11.21 防災格言)
■「地震学者」に関連する防災格言内の記事
地震史:日本地震学会を作った男 ジョン・ミルン(1850~1913)博士物語(2003.10.16 編集長コラム)
服部一三(1851~1929 / 文部官僚・内務官僚 第13代兵庫県知事 日本地震学会初代会長)(2008.07.21 防災格言)
関谷清景(1854~1896 / 地震学者 東京帝国大学教授 世界初の地震学科の専任教授)(2008.08.11 防災格言)
菊池大麓(1855~1917 / 数学者 政治家・文部大臣 東京大学総長)(2018.01.01 防災格言)
小藤文次郎(1856~1935 / 地質学者・火山学者 東京帝国大学名誉教授)(2016.04.18 防災格言)
長岡半太郎(1865~1950 / 物理学者 東京帝国大学教授 初代大阪帝国大学総長 第1回文化勲章受章)(2021.11.22 防災格言)
脇水鉄五郎(1867~1942 / 地質・土壌学者 東京帝大教授 日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
大森房吉(1868~1923 / 地震学者 東京帝国大学教授 理学博士)(2019.04.29 防災格言)
今村明恒(1870~1948 / 地震学者 東京帝国大学教授)(2008.05.12 防災格言)
大森 vs 今村論争(2005.08.31 編集長コラム)
小川琢治(1870~1941 / 地質学者・地理学者 京都帝国大学教授)(2019.09.09 防災格言)
石川成章(1872~1945 / 地質学者・地球科学者 僧侶・真宗大谷派参事 京都帝大講師)(2022.01.03 防災格言)
新城新蔵(1873~1938 / 天文学者・地球物理学者 京都帝国大学総長(第8代)・名誉教授)(2021.11.01 防災格言)
寺田寅彦[1](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2007.11.26 防災格言)
寺田寅彦[2](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2009.03.02 防災格言)
寺田寅彦[3](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2009.10.12 防災格言)
寺田寅彦[4](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2011.06.20 防災格言)
寺田寅彦[5](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2016.08.01 防災格言)
寺田寅彦[6](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2017.08.21 防災格言)
寺田寅彦[7](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2018.06.25 防災格言)
寺田寅彦[8](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2019.03.11 防災格言)
寺田寅彦[9](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](1878~1935 / 物理学者・随筆家)(2020.08.31 防災格言)
アルフレッド・ウェゲナー(1880~1930 / ドイツの気象学者・地球物理学者 「大陸移動説(1912年)」を提唱)(2021.10.25 防災格言)
藤原咲平(1884~1950 / 気象学者 中央気象台長 東京大学理学部教授)(2013.10.28 防災格言)
松山基範(1884~1958 / 地球物理学者 京都大学名誉教授 山口大学初代学長)(2015.02.16 防災格言)
阿部良夫(1888~1945 / 物理学者 早稲田大学教授 北海タイムス社長)(2014.06.30 防災格言)
中谷宇吉郎[1](1900~1962 / 物理学者・随筆家 理学博士 元北海道大学教授)(2009.10.19 防災格言)
中谷宇吉郎[2](1900~1962 / 物理学者・随筆家 理学博士 元北海道大学教授)(2020.07.06 防災格言)
和達清夫(1902~1995 / 地球物理学者 初代気象庁長官)(2007.12.03 防災格言)
河角廣(1904~1972 / 地震学者 東京大学地震研所所長 東大名誉教授)(2016.05.23 防災格言)
坪井忠二(1902~1982 / 地球物理学者・随筆家 東京大学名誉教授)(2011.06.27 防災格言)
荒川秀俊(1907~1984 / 気象学者・災害史家 元気象庁気象研究所長)(2016.10.03 防災格言)
マリオ・サルバドリー(1907~1997 / アメリカの土木技師・建築構造学者 コロンビア大学名誉教授)(2022.03.07 防災格言)
萩原尊禮[1](1908~1999 / 地震学者 地震予知連名誉会長 東大名誉教授)(2008.09.08 防災格言)
萩原尊禮[2](1908~1999 / 地震学者 地震予知連名誉会長 東大名誉教授)(2015.09.21 防災格言)
萩原尊禮[3](1908~1999 / 地震学者 東京大学名誉教授 地震予知連絡会名誉会長)(2022.03.28 防災格言)
水上武(1909~1985 / 火山物理学者・理学博士 東京大学名誉教授)(2014.10.13 防災格言)
圓岡平太郎 (中央気象台鹿児島測候所長 口永良部島新岳噴火(1931年)報告書)(2015.06.01 防災格言)
糸川英夫(1912~1999 / 航空宇宙工学者 東京大学名誉教授)(2008.04.07 防災格言)
高橋浩一郎(1913~1991 / 気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)(2019.10.14 防災格言)
永田武(1913~1991 / 地球物理学者 岩石磁気学の祖 東京大学名誉教授)(2015.04.13 防災格言)
劉英勇(1915~1990 / 中国共産党の政治家・将軍・副書記 初代地震局局長 )(2012.02.06 防災格言)
マーティン・デューク(1917~1988 / アメリカの地震工学者 カリフォルニア大学(UCLA)教授)(2008.7.14 防災格言)
浅田敏(1919~2003 / 地震学者 地震予知連会長 東大名誉教授 東海大名誉教授)(2007.12.17 防災格言)
藤田和夫[1](1919~2008 / 地質学者 理学博士 大阪市立大学名誉教授)(2015.11.09 防災格言)
藤田和夫[2](1919~2008 / 地質学者 理学博士 大阪市立大学名誉教授)(2017.05.08 防災格言)
竹内均[1](1920~2004 / 地球物理学者 東大名誉教授)(2010.09.06 防災格言)
竹内均[2](1920~2004 / 地球物理学者 東大名誉教授)(2016.04.04 防災格言)
力武常次(1921~2004 / 地震学者 東京大学名誉教授 東大地震研所長)(2011.10.24 防災格言)
谷川健一(1921~2013 / 民族学者・日本地名研究所所長 文化功労者)(2019.08.26 防災格言)
安倍北夫(1922~2013 / 社会心理学者 東京外国語大学名誉教授)(2016.02.08 防災格言)
羽鳥徳太郎(1922~2015 / 歴史地震学者・津波研究家 専門は歴史津波・津波工学)(2018.08.06 防災格言)
山下文男(1924~2011 / 作家 津波災害史家 代表作「津波ものがたり」)(2010.03.01 防災格言)
下鶴大輔(1924~2014 / 火山学者 火山噴火予知連会長 東京大学名誉教授)(2015.08.10 防災格言)
久保寺章(1926~2004 / 地球物理学者 京都大学名誉教授 日本火山学会会長)(2022.01.24 防災格言)
宇津徳治(1928~2004 / 地震学者 日本地震学会会長 東京大学名誉教授)(2014.12.01 防災格言)
茂木清夫[1](1929~2021 / 地震学者 元地震予知連会長 日本大学教授 東京大学名誉教授)(2011.03.14 防災格言)
茂木清夫[2](1929~2021 / 地震学者・火山学者 地震予知連会長 東京大学名誉教授)(2021.07.26 防災格言)
篠塚正宣(1930~2018 / 地震工学者 コロンビア大学栄誉教授 プリンストン大学名誉教授)(2020.01.20 防災格言)
松田時彦(1931~ / 地質学者・地震地質学 東京大学名誉教授)(2016.12.19 防災格言)
伊藤滋(1931~ / 都市計画家 東京大学名誉教授 地震調査研究推進本部初代政策委員会委員長)(2019.07.29 防災格言)
津村建四朗(1933~ / 地震学者 元地震調査推進本部地震調査委員会委員長)(2013.07.08 防災格言)
大塚道男(1933~2001 / 地震学者・固体地球物理学 九州大学名誉教授)(2011.05.09 防災格言)
村上処直(1935~ / 都市防災家 防災都市計画研究所名誉所長)(2009.12.07 防災格言)
表俊一郎(1936~2002 / 地震学者 地震学会会長 九州産業大学名誉教授)(2016.05.09 防災格言)
溝上恵[1](1936~2010 / 地震学者 東京大学地震研究所教授 東大名誉教授)(2010.08.23 防災格言)
溝上恵[2](1936~2010 / 地震学者 東京大学地震研究所教授 東大名誉教授)(2021.10.11 防災格言)
神沼克伊(1937~ / 地球物理学者・極地探検家 国立極地研究所名誉教授 理学博士)(2018.11.12 防災格言)
横山卓雄[1](1937~ / 地質学者 理学博士 同志社大学名誉教授)(2009.04.20 防災格言)
横山卓雄[2](1937~ / 地質学者 理学博士 同志社大学名誉教授)(2022.01.17 防災格言)
大竹政和(1939~ / 地震学者 東北大学名誉教授 第4代地震予知連会長)(2014.01.13 防災格言)
北原糸子(1939~ / 歴史地震学者 神奈川大学教授 歴史地震研究会会長)(2008.10.27 防災格言)
『富士山噴火と東海大地震』(木村政昭(琉球大学名誉教授)監修、著者・安恒理(ジャーナリスト)ほか 2001年)「被災時のサバイバルとは」より(2021.11.08 防災格言)
岡田弘(1943~ / 地球物理学者 専門は火山学 北海道大学名誉教授)(2014.09.29 防災格言)
濱田政則(1943~ / 地震工学者 早稲田大学教授 工学博士 土木学会会長)(2013.06.03 防災格言)
池谷浩(1943~ / 元建設省砂防部長 砂防地すべり技術センター理事長)(2009.08.03 防災格言)
ヘルムート・トリブッチ(1943~ / ドイツの自然科学者 ベルリン自由大学名誉教授)(2011.10.24 防災格言)
石橋克彦(1944~ / 地震学者 神戸大学名誉教授 専門は地震テクトニクス)(2011.4.18 防災格言)
阿部勝征(1944~2016 / 地震学者 東京大学名誉教授 東海地震判定会会長)(2011.08.22 防災格言)
河田恵昭(1946~ / 地震学者 関西大学教授 京都大学教授 専門は都市災害)(2011.04.25 防災格言)
藤井敏嗣(1946~ / 火山学者 東大地震研究所教授 火山噴火予知連会長)(2010.04.19 防災格言)
廣井脩(1946~2006 / 災害情報学者 東京大学大学院教授 災害情報研究の第一人者)(2009.09.28 防災格言)
都司嘉宣(1947~ / 地震学者・専門は地震考古学 理学博士 元東京大学地震研究所准教授)(2013.03.25 防災格言)
寒川旭(1947~ / 地震考古学者 産業技術総合研究所招聘研究員)(2012.11.19 防災格言)
菊地正幸(1948~2003 / 地震学者 東京大学教授 リアルタイム地震学を提唱)(2009.11.16 防災格言)
ケリー・シー(1950?~ / アメリカの地震学者・地質学者 専門は古地震学)(2015.02.02 防災格言)
林春男(1951~ / 社会心理学者 京都大学防災研究所教授 地域安全学会会長)(2008.09.15 防災格言)
山岡耕春(1958~ / 地震学者 名古屋大学教授 地震火山・防災研究センター長)(2012.04.23 防災格言)
ドナルド・ディングウェル(1958~ / ドイツの火山学者・地球物理学者 ミュンヘン大教授)(2011.02.07 防災格言)
廣井悠(1978~ / 都市工学者 東京大学大学院准教授 専門は都市防災・都市工学)(2012.03.12 防災格言)