『 幸福は主観的のもので知足、感恩の出来る人のみ享受し得るものである。 』
浅田一(1887~1952 / 法医学者 東京医専(現東京医大)教授 長崎医大教授)
知足(ちそく)とは、分相応のところで満足することの意。
感恩(かんおん)は、人の好意や恩義に感謝することの意。
この格言は著書『真の幸福(医心放語 1937年)』より。東朝(東京朝日新聞)に紹介されていた四谷旭町(現新宿四丁目)の「貧民街の神様」と崇められている小学訓童・古関蔵之助氏の記事への感想。
古関氏は、自分の僅かな収入を割いて児童たちを慰めたり、貧困者たちの家庭争議を鎮めたりしていた慈善活動家。これに感動した浅田博士は『 赤貧洗うが如き境涯に居ても日々の労働を楽しみにしている人は幸(しあわせ)である 』と感想をつづっている。
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浅田 一(あさだ はじめ)博士は、血清学や血液型性格分類などの研究で知られる大正・昭和期を代表する日本の法医学者・精神医学者。
大阪の堂島中学(現・北野高校)、京都の旧制第三高等学校(後の京都大学)を首席で卒業後、東京帝大医学部(現・東京大学)に入学。日本の精神医学の基礎をつくった医学者・呉秀三(くれ しゅうぞう / 1865〜1932)教授らに師事。欧米に留学後、旧制長崎医科大学法医学教室の初代教授に就任。1933(昭和8)年に長崎医大を退任。1934(昭和9)年より東京医専(現・東京医科大学)教授となり、学生へ医事法制やフランス語などの講義を担当した。堂島中学時代の恩師である植物学者・河野学一(こうの がくいち / 1868〜1945)を通じてチベット行で著名な仏教学者の僧侶・河口慧海(かわぐちえかい / 1866〜1945)と出会い、後に在俗の弟子となり慧海が住む東京世田谷の自宅隣へと移り住んだ。
晩年は病弱で、病臥しながら随筆の執筆は止めなかったが、1952(昭和27)年7月16日、胃潰瘍により死去。65歳。
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