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永田武（1913〜1991 / 地球物理学者東京大学名誉教授岩石磁気学の祖）が著書『生きている地球地震と津波の話』に記した格言（地球物理学者）[今週の防災格言383]

time 2015/04/13

『この悲しむべき運命は、さけようとしてもさける事の出来ない大自然の必然の進路であります。』

永田武（1913〜1991 / 地球物理学者岩石磁気学の祖東京大学名誉教授）

格言は著書『生きている地球地震と津波の話(1949年)』の「はじめに」より。

曰く―――。

《地震という出来事が、やはり地球が生きている一つのしょうこである事は、申すまでもありませんし、私達の住む日本の国が世界中で一番地震の多い場所の一つである事も、皆さんが良くご存じの事であります。《中略》
いつどこにどんな大地震が起るという予知をする事ができるまでには、私達がどんなに努力してもまだ数十年かゝるでしょうけれども、現在の私達は、少くとも次の事ははっきり断言する事が出来るのです。即ち『将来、少くとも数千数万年の間は、日本は今まで通りしばしば地震におそわれる』という事であります。つまり、今後とも、数年に一度の割合で日本中のどこかで家のたおれる程度以上の地震が起るでありましょうし、皆さんのこれからの一生の間には、この様な出来事が十ぺん以上も起るという事は間違いないのです。
この悲しむべき運命は、さけようとしてもさける事の出来ない大自然の必然の進路であります。しかし、地震による被害は私達の注意と努力次第で、最小限度に喰い止める事が出来ます。
冷厳な現実から眼をそらす事なく、地震という現象に直接ぶつかって、その姿を解剖し、その上で私達はどうするべきかを各々が考える必要がありましょう。》

永田武（ながたたけし）は、地球電磁気学、超高層大気物理学の先駆的な実証研究で世界的に知られる地球物理学者。「岩石磁気学の開祖」とも呼ばれる。特に、化学残留磁気の発見など岩石に残留磁気が生じる機構を解明したことで、これが地球の地殻変動と大陸移動説の論拠となり、現代のプレートテクトニクス理論提唱という地球物理学上の革命的地球観誕生に大きく貢献した。また、日本の南極観測（極地科学）を指導し、第1次から第3次までの南極地域観測隊長として直接昭和基地の建設や観測活動を指揮し「南極地域観測事業育ての親」と呼ばれている。更に、東京大学宇宙航空研究所（現宇宙科学研究所=ISAS）の設立に尽力するなど日本の宇宙科学の発展にも多大な貢献も果たした。
愛知県岡崎市出身。理学博士。第一東京市立中学、旧制第一高等学校を経て1936（昭和11）年、東京帝国大学理学部物理学科を卒業し、東京帝国大学地震研究所助手、理学部助教授、1952（昭和27）年より東京大学理学部教授。1973（昭和48）年、国立極地研究所初代所長に就任。
1951（昭和26）年「岩石の磁気的性質に関する地球磁気学的研究」で日本学士院賞受賞。1968（昭和43）年、東洋レーヨン科学技術賞。1974（昭和49）年「地球物理学に対する貢献」により文化勲章を受章。1985（昭和60）年、勲一等瑞宝章。1987（昭和62）年、イギリス王立天文学会ゴールドメダル受賞。1991（平成3）年6月3日没。77歳。