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マリオ・サルバドリー(1907~1997 / アメリカの土木技師者・建築構造学者 コロンビア大学名誉教授)の地震の固有周期と建築構造との共振の名言 [今週の防災格言741]

time 2022/03/07

マリオ・サルバドリー(1907~1997 / アメリカの土木技師者・建築構造学者 コロンビア大学名誉教授)の地震の固有周期と建築構造との共振の名言 [今週の防災格言741]


『 建物の固有周期と地盤の地震周期が数サイクルの間だけたまたま等しくなることがある。こうなると、振動が1サイクルするごとに建物の運動が大きくなっていく。このような状況を“建物は地盤と共振状態にある”という。この現象は、高い建物や柔らかい建物にとって、特に危険である。 』

 

マリオ・サルバドリー(1907~1997 / アメリカの土木技師・建築構造学者 コロンビア大学名誉教授)

 

格言は編著(マッシス・レヴィ、マリオ・サルバトリー、望月重翻訳)『WHY THE EARTH QUAKES 大地が揺れる理由(わけ)』(建築技術 1996年)の「地盤と建物の運動」より。

曰く―――。

“ 地震の震央近くの地盤で起こる上下左右の震動は、一般に激しくそして急速である。このような運動の1サイクルに要する時間は振動の周期と呼ばれ、震央の近くでは特に短く、通常1秒以内である。地震波が震源から放出されると、地球は衝撃吸収装置のような働きをして短周期の振動を減衰させるが、長周期の振動が支配的な波はそのまま残る。震央からの距離にかかわらず、卓越する振動は最も大きな振幅、すなわち最も大きな水平および上下運動の変位をもった振動である。地震の振幅は、穏やかな揺れの1mmから、やや破壊的な地震の70mm、そして大惨事を引き起こすような揺れの220mmまでさまざまである。

地上あるいは地下構造物は、地震による地盤の動きを受けて振動する。指ではじくと弦が振動するのと同じである。そして異なった引張りを受けた弦が違った音を出すように、物理的に異なった性質の構造物は地盤の揺れに対してそれぞれ違った応答を示す。すなわち、堅い構造物は地盤の運動と一緒に運動する性質がある。一方、柔らかい構造物は地盤の運動に遅れて運動する。

堅い構造物か柔らかい構造物かを特性付けるのは、構造物の振動の固有周期、すなわち地震動が終わった後の建物の自由振動の周期である(近似的に1階につき0.1秒である)。
低い建物、特に組積造でつくられたような建物は堅くて固有周期が短くなる傾向があり、高い建物は柔らかくて固有周期が長くなる傾向がある。 …(中略)…

建物の固有周期と地盤の地震周期が数サイクルの間だけたまたま等しくなることがある。こうなると、振動が1サイクルするごとに建物の運動が大きくなっていく。このような状況を“建物は地盤と共振状態にある”という。この現象は、高い建物や柔らかい建物にとって、特に危険である。

建物がこのような共振状態にあると、子供のブランコを1回揺れるごとに“うまくタイミングをあわせて”(共振状態に)押すと、だんだんと高く揺れるのと同様に、振動の振幅が増え続けることになる。 …(中略)…

地震の被害を防ぐ最も重要な構造上の特性は、靱性(じんせい)、すなわち壊れることなく材料のが曲がったり伸びたり、またねじれたりする性質である。例えば、巨大地震の震動によって大きな力を受けると、靭性をもった鋼構造物は、引張と圧縮の交番の揺れを受けて弾性限界を超える応力を受けるが、崩壊には至らない。弾性を超える塑性(そせい)応力のこのようなサイクルは、履歴サイクルとして知られているが、崩壊を防ぐ大きなエネルギー吸収が期待でき、永久的な変形は残るものの、その変形は通常許容できる範囲に収まる。

これに関連して言えば、高い靭性をもった鋼は高災害地震地域の理想的材料であり、一方、非常に安価な構造材料である鉄筋コンクリートは鋼を使って相当補強しなければ、法規で定められた靭性規定を満たすことができない。 ”

 

マリオ・サルバドリー(Mario G. Salvadori)は、建築物の構造哲学「シェル理論」で知られるイタリア系アメリカ人の土木・建築構造技術者。ニューヨークのコロンビア大学ジェームズ・レンウィック土木工学・応用科学名誉教授および建築学名誉教授。

1907年3月19日、イタリアのローマ生まれ。父親は電話会社に勤める技術者で、母親はユダヤ系の裕福な家庭の出身。父の仕事の関係で幼少期のほとんどをスペインのマドリッドで過ごし、16歳となる1923年にイタリアに戻った。学生時代はイタリア初の学生ジャズバンドの指揮者として活躍し、また登山家としても知られた。
ローマ大学に進学し、1930年に土木工学の博士号を取得し、その後、応用数学者のマウロ・ピコーネ(Mauro Picone / 1885~1977)に師事、1933年に数学の博士号を取得。卒業後は、ローマ・サピエンツァ工科大学講師を務めながら、恩師ピコーネの設立した国立応用力学研究所(INAC)でコンサルタントを務め、イギリスのロンドン大学に2年間留学。
この間、ナチスドイツから逃れてきた多くのユダヤ人と接触し、ローマに戻った後も危険を承知でベニート・ムッソリーニ政権を批判した。1939年にイタリア人種法が公布されると、ユダヤ人の妻とともにイタリアを離れ、友人の物理学者エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi / 1901~1954)の助力によりアメリカへと渡った。
アメリカでは1940年までライオネル鉄道会社に勤務し、時間や運動の研究を行ない、第二次世界大戦中は「マンハッタン計画」とは知らされずに原爆の研究開発に手を貸していたという。
1954年から1960年まで土木コンサルタントとして働き、ニューヨークの大手エンジニアリング会社「ヴァイドリンガー・アソシエイツ社」で代表、名誉会長職に就き1991年まで勤めた。
戦後はコロンビア大学で教鞭をとり、1959年に建築学部教授に就任し、以降50年にわたり教壇に立った。定年退職後は、恵まれない学生のためにニューヨーク市の公立学校でボランティア活動を行ない、多くの教師と学生を指導し、1987年には非営利教育センター「サルバドリー教育センター」を設立させた。
1997年6月25日、ニューヨークのマンハッタンで死去。90歳。


photo by wikipedia.



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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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