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竹内均が書籍『巨大地震 権威16人の警告』で記した格言(理学博士)[今週の防災格言433]

time 2016/04/04

竹内均が書籍『巨大地震 権威16人の警告』で記した格言(理学博士)[今週の防災格言433]


『 できることから実行し、次の東京大地震が
いつ起こっても大丈夫なような対策を、
いまのうちから講じておくことこそが重要 』

竹内 均(1920〜2004 / 地球物理学者 東京大学名誉教授 理学博士)

格言は、『巨大地震 権威16人の警告(文春新書 2011年)』の『地震予知ははたして可能なのか』より。(初出:『日本の論点’94(文藝春秋 1993年11月)』)

1968(昭和43)年、東京大学教授だった竹内は助手の金森博雄(現カリフォルニア工科大名誉教授)とともに、日本の太平洋岸の沈み込み帯(マントル対流、プレートテクトニクス)の研究を行い、繰り返し発生する大地震のメカニズムを解き明かした「竹内・金森理論」を発表する。翌年には日本の地震予知計画がスタートすることになる。

曰く―――。

《(1969年の地震予知計画の出発から)以来二〇年余りの歳月が流れ、最近では、この研究に年間約五〇億円の国家予算が支出されている。しかし、この間、この計画は見るべき何等の成果もあげていない。こうなるであろうことを事前に察した私は、全力をあげてこの計画に反対してきた。《中略》

私は、ものの役に立つ地震の予知はできないけれども、地震によって生じる災害をなくすことはできるし、しなければならないことを力説した。おかげで、私はこのプロジェクトから一銭の研究費ももらえなかったけれども、国家予算の無駄遣いといってよいプロジェクトに参加しなかったという意味で、これは私にとって快いことであった。

たとえば、「ここ二年以内に、南関東で、一九二三年の関東大震災以上の大地震が起こる」といったぐあいに、「ものの役に立つ地震予知」では、いつ、どこで、どれくらいの大きさの地震が起こるかを明確に予知しなければならない。この中では、とくに、「いつ」についての予知が難しい。日本の太平洋岸で起こる大地震の周期性や特徴的な地殻変動から推測すれば、「いつ」についての予知ができるのではないかという人がいるかもしれない。ところが、それができないのである。大地震の発生は破壊によるものであり、破壊は確率統計的な現象だからである。《中略》

いつの日にかは必ず起こる大地震の「いつ」の予知ができないというのでは、踏んだり蹴ったりではないか、という人がいるかもしれない。こういう人は、どうか、ここで考え直してほしい。地震の予知をなぜしたいかというと、それは地震による災害を小さくしたいためである。それならば、むしろ最終目的といってよいその地震災害の軽減のほうを心がけるべきではないか。しかも、予知とは違って、そちらのほうは、やろうと思えば必ずできることなのである。《中略》

関東大地震(1923年)の損害を実地調査した当時の東京大学の地震学教授・今村明恒によれば、関東大地震の際の、地震そのものによる物的損害は約一億円、死者は二〇〇〇人であった。それが、約五〇億円の物的損害と、約一五万人の死者に膨れ上がったのは、地震によって生じた火事のためであった。つまり、物的にも人的にも、関東大地震の損害は、火事によって約五〇倍に膨れ上がったのである。《中略》

ただ、これを逆にいえば、地震のあとの火事さえなければ、関東大地震の損害は、実際の約五〇分の一にとどめられたはずである。これが日本の地震問題のポイントである。 》

竹内 均(たけうち ひとし)は、科学雑誌『 Newton(ニュートン) 』を創刊、編集長として亡くなるまで活躍された日本の地球物理学の第一人者。
福井県大野市出身。旧制大野中学校、第四高等学校を経て、物理学者・寺田寅彦に憧れ東京大学に進学。1963(昭和38)年に坪井忠二(つぼいちゅうじ / 1902〜1982)教授の後を継ぎ、東京大学の地球物理学講座を定年される1981(昭和56)年まで担当。退官後、450冊という多くの著作を残し、ラジオ・テレビ・新聞などメディアを駆使して、日本の地球・惑星物理学の発展と子供たちの科学知識の普及に大きく貢献された。
2004(平成16)年4月20日、心不全のため83歳で逝去。
竹内均先生
※写真は雑誌ニュートンWEBより

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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