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フランシス・ラッセル(ボストンの歴史家)の1918年当時にボストンを襲ったスペイン風邪についての歴史エッセイ「the 1918 Influenza」からの名言 [今週の防災格言641]

time 2020/04/06

フランシス・ラッセル(ボストンの歴史家)の1918年当時にボストンを襲ったスペイン風邪についての歴史エッセイ「the 1918 Influenza」からの名言 [今週の防災格言641]

『 その時私は、人生が永遠に存在しているものではないということを、そして明日さえもそのうち過去の一部となることを知り、これから自分に何日、何年、月日がやってこようとも、私もまたいつの日か死を迎える運命にあることを知ったのです。 』

” I knew then that life was not a perpetual present, and that even tomorrow would be part of the past and that for all my days and years to come I too must one day die. “

フランシス・ラッセル(1910~1989 / アメリカの伝記作家・歴史家・郷土史家)

格言の出典はリテラリーマガジン「The Yale Review 1958年冬号」掲載の記事 “A Journal of the Plague: the 1918 Influenza”, The Yale Review vol.47.2(December 1958)より。
(格言部分のみアルフレッド・W・クロスビー著、西村秀一翻訳『史上最悪のインフルエンザ』(みすず書房 2004年)より引用し、それ以外の文章は全て原著から翻訳しました。)

アメリカ合衆国ボストン市でスペイン風邪が大流行した1918年10月、格言の著者フランシス・ラッセル(Francis Russell)は、マーサベーカースクールの小学3年生(7歳)で、当時彼はボストン近郊のドルチェスター・ヒルのてっぺんに住んでいたそうです。

この年、インフルエンザのためボストン中の学校という学校がすべて閉鎖されたので、ラッセル少年は一日中ぶらぶらしていました。
ある日、彼は二人の悪友と一緒に墓地へと忍びこみ、棺が埋葬される様子をこっそり覗き見しました。ところが、白髪の男に見つかり、追い回されて墓地から追い払われてしまいました。
ラッセル少年たちはその後、喧嘩して互いに石を投げつけ合ったあと、夕方になって、彼はとぼとぼとひとりで歩いて家に帰りました。
その道すがら彼は初めて、時間というものがあっというまに過ぎ去るものであり、けっして後戻りするものではないことに気づいた、と回想しています。

曰く―――。

第一次世界大戦の最中1918年に大流行(パンデミック)したスパニッシュ・インフルエンザ(スペイン風邪)は、世界人口の4分の1が影響を受けた歴史上の三大疫病の一つでした。これに匹敵するのは、ユスティニアヌスのペスト(AD541~542年)と中世の黒死病だけです。全体で世界大戦による死者の二倍となる2200万人が亡くなりました。インドでは数か月で、それまでの20年間のコレラ被害よりも多くの人が死亡し、アメリカでは50万人が亡くなりました。
10人中9人が死亡した黒死病や、5人中4人が死亡したコレラとは異なり、1918年のインフルエンザは、罹患した人の3~4%しか死亡しませんでした。死者をこれほどまでに大きくしたのは、この病気の大規模な流行があったからです。1918年10月の終わりまでには、ヨーロッパ、北米、南米の多くの地域で大流行し、インド、中国、ペルシャ、南アフリカはもっと早くから流行していました。二か月で世界を覆ったのです。

・・・《中略》・・・

インフルエンザは未だに謎の多い病気です。それが一つのウイルスなのか複数のウイルスなのか、なぜそれが周期的に発生するのか、そして流行するまでにどのようにしてどこでウイルスが休眠状態にあるのか、まだ誰も知らないのです。気象説、集団免疫による消耗説、経済状況による決着説などがありますが、現在最も一般的な説明では、1918年のようなパンデミックは、ウイルスの自然発生的な突然変異や更新の過程を経て、新しい爆発的なウイルス株が生まれたときに発生するという説です。

・・・《中略》・・・

インフルエンザの大流行(パンデミック)は、1857年、1874年、1890年、1936年、1957年にも起きています。しかし1918年のスパニッシュ・インフルエンザ(スペイン風邪)が際立っているのは、その死者数です。他のインフルエンザは、同じように広い範囲で、迅速に流行し、数百万人を感染させましたが、死者はあまり発生しませんでした。しかしスパニッシュ・インフルエンザは、通常の一過性の症状に加えて、肺炎に発展するという不吉な傾向があったのです。肺が冒されると、急速に症状が悪化していきます。これがスパニッシュ・インフルエンザの特徴で、肺炎にかかった人の3分の1以上が死亡したのです。

・・・《中略》・・・

振り返ってみると、1918年のインフルエンザは、あの第一次世界大戦の終戦というクライマックスの年にとっては些細な幕間の出来事であり、11月の終戦ではほとんど忘れ去られてしまっています。それから40年近く経った今(※1958年冬)、小学3年生の頃の記憶を整理しようと、私はボストン公立図書館の新聞ファイルを調べ始めました。

・・・《中略》・・・

9月初旬、インフルエンザは最初にウォーターフロントを通ってボストンに侵入しました。9月10日の「ヘラルド紙」にはスペイン風邪に苦しんでいる船員30人が訓練船から降ろされ病院のテントに入ったとありました。 死者は7人でした。 9月13日、海軍は163人の感染者を報告。9月14日、第一海軍区のウッド少将は、スペイン風邪は単なる流行性感冒であり、国民は心配する理由はないと宣言しました。9月15日(日曜日)、20人が死亡し、翌9月16日には死者が35人を数え、インフルエンザのニュースがはじめて一面記事に掲載されました。9月17日、家庭医が感染を回避する6つの予防策を掲載しました。

(1)鼻と喉にジクロニウムをスプレーする
Spray nose and throat with dichlorium.

(2)十分な睡眠を取ること
Get plenty of rest in bed.

(3)窓を大きく開けたままにする
Keep windows wide open.

(4)きちんと食事をする
Eat meals regularly.

(5)他人との握手に注意する
Beware of persons shaking hands.

(6)タオルやコップなど共用しないようにする
Don’t use common towels, cups and other articles.

9月22日、ボストンで57人が死亡し、キャンプデベンズでは20人が死亡した。翌日、87人がボストンで死亡。9月26日、157人のボストン市民が亡くなり、マッコール知事は劇場や教会を閉鎖する宣言を発表した。 しかし、10月1日には202人が亡くなり、流行は都市部で最高潮に達しました。10月1日以降、インフルエンザは西へ伝播、全米43州に広がる。1週間後、ボストン市の死者は毎日150人ペースに落ち付きました。10月11日、ボストン市の死者は124人となり、これは9月25日以来の最低数となりました。インフルエンザは全48州すべての州に拡大しました。10月13日以降は主なヘラルド紙の関心事は戦争の話となり、11月までにインフルエンザは過ぎ去り、終戦の混乱のなかでインフルエンザは忘れられる傾向となりました。

フランシス・ラッセル(Francis Russell)は、1910年1月12日、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市出身の歴史家。
1968年にウォーレン・G・ハーディング元大統領の伝記「ブルーミング・グローブの影」を出版した人物として知られる。
ボウドイン大学を卒業し、1937年にハーバード大学で修士号を取得。米国や海外の複数の雑誌に記事を執筆。1941年にカナダ陸軍に入隊し、1946年に大尉として除隊。1954年に初の著書「20世紀の隠蔽性に関する3つの研究」を出版。その後、長年にわたって入念な歴史研究と独特の楽しい語り口のスタイルを組み合わせた本を次々と出版した。1989年3月20日、マサチューセッツ州ケープコッドの病院で心臓発作により死去。79歳。
1963年、1920年のイタリア系移民が起こした強盗殺人事件「サッコ=ヴァンゼッティ事件の物語」でエドガー賞受賞。


■「スペイン風邪」「新型インフルエンザ」「アメリカ人」に関連する防災格言内の記事
ウォルター・B・キャノン(アメリカの生理学者 動物の恒常性(ホメオスタシス)を提唱)(2020.03.30 防災格言)
田尻稲次郎(政治家・経済学者 スペイン風邪当時の東京市長 専修大学創始者)(2008.12.22 防災格言)
与謝野晶子(歌人 スペイン風邪についての随筆)(2020.03.23 防災格言)
尾身 茂(医師 名誉WHO西太平洋地域事務局長 自治医科大学名誉教授)(2020.03.02 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
関東大震災時のアメリカ合衆国赤十字社防災標語(2008.05.19 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(アメリカ疾病対策センター(CDC)長官)(2009.04.27 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
ジュリー・ホール(アメリカの医者 WHO中国伝染病担当)(2009.02.02 防災格言)
アーノルド・グラソー (アメリカの作家 ユーモア雑誌編集者)(2009.6.8 防災格言)
アン・タイラー(アメリカの人気小説家 ピュリッツァー賞(1988年))(2018.05.28 防災格言)

 

<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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