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安田理深の自宅が火災で全焼した際の名言（1900～1982 / 仏教学者・浄土真宗大谷派僧侶私塾「相応学舎」主宰）[今週の防災格言751]

time 2022/05/16

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安田理深の自宅が火災で全焼した際の名言（1900～1982 / 仏教学者・浄土真宗大谷派僧侶私塾「相応学舎」主宰）[今週の防災格言751]

『隣家から出火し、我が家が焼けた。責任は隣家にあるであろう。しかし火の出た家の隣に我が家があったという存在的責任は逃れられないでしょう。』

安田理深（1900～1982 / 仏教学者・浄土真宗大谷派僧侶私塾「相応学舎」主宰）

1973年（昭和48年）、仏教学者の安田理深師の自宅が火事にあい全焼した。隣家からの延焼により、学者の命ともいえる大切な蔵書やノートがすべて焼けてしまう。

格言は中村薫氏（1948～ / 同朋大学教授養蓮寺住職・愛知県一宮市）のお話から。（出典：東京新聞 2013年7月20日付「今週のことば」）

曰く―――。

1973年、隣家からの出火で、安田先生の住んでおられた京都の相応学舎が類焼した。先生の貴重な蔵書もほとんど焼けてしまった。その後、全国のお弟子の方たちのご尽力によって、相応学舎は再建された。学生であったわたしは、友達と完成間近の学舎の清掃のお手伝いをしていた。その時、偶然先生が、仮住まいからやってこられて、近くの喫茶店でお話をお伺いした。

先生は「諸行無常の教えを知っていた某教授でも、火災で蔵書が全部焼けてしまった時、腰を抜かしてしまったそうだ」と、人間のものに対する執着の強さについてお話しされた。火災の責任は隣家にあることに間違いない。しかし、先生は他人に責任を問うことより、いかなる状況にあろうと業縁ともいえる身の事実に立つこと、つまり「存在的責任」に立つことの大切さを教えてくださったのである。

この火事の際、安田理深師は以下のように語ったと伝わる。

「焼かれた」のでもない。「焼いた」のでもない。ただ「焼けた」と。
そうすると事実を事実のまま受けていけるのではないか。
自も他も損なわんで済む。こんなことを今度の火事で学びました。

災難を他人のせいにして他者を憎むのでなく、自分自身を責めるのでもなく、ただ災害が起こった事実をそのまま受け入れることで、自分も他者も損なわずに済むという。

安田理深（やすだりじん）は、昭和期に活躍された仏教学者で、浄土真宗大谷派の僧侶。1935年（昭和10年）京都市北区に私塾「学仏道場相応学舎」を開き、以降逝去されるまで学生や一般の聴衆に向けてここで講義を行った。

明治33年（1900年）兵庫県美方郡温泉町に生まれる。本名、安田亀治。
青年時代には東洋哲学やキリスト教などを学んだが、金子大栄（1881～1976）の著作に衝撃を受け親鸞思想に目覚め、1924年（大正13年）大谷大学に入学。1930年（昭和5年）曽我量深（1875～1971）、金子大栄らを中心に興法学園（京都府左京区）を設立し園長に就任、編集発行人となり機関紙「興法」を発刊した。1933年（昭和8年）興法学園が解散「乳水園」を設立。1935年（昭和10年）曽我量深の命名で私塾「相応学舎」を開設し、親鸞思想、唯識論などの講義を行う。1943年（昭和18）東本願寺で得度、法名を理深とし、1944年（昭和19年）から1946年（昭和21年）まで大谷大学専門部教授として奉職、退職されてからは生涯無位無官を貫いた。1982年（昭和57年）2月19日死去。81歳。

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