Home » 先人たちの防災格言 » 竹中平蔵が東日本大震災後の学術シンポジウムで述べた名言（1951～ / 経済学者・政治家慶應義塾大学名誉教授）[今週の防災格言522]

竹中平蔵が東日本大震災後の学術シンポジウムで述べた名言（1951～ / 経済学者・政治家慶應義塾大学名誉教授）[今週の防災格言522]

time 2017/12/25

『「大胆に、迅速に、思い切って」やらなければいけないことは事実だが、基本を踏み外したら、それは必ずしっぺがえしとしてやってくる。』

竹中平蔵（1951～ / 経済学者・政治家慶應義塾大学名誉教授）

格言は、2011（平成23）年6月27日に慶應大学三田キャンパス南校舎ホールで行われた慶應義塾主催の学術シンポジウム「震災後の東日本の復興・再生に向けて」より。

曰く―――。

今、私たちが直面している危機は「複合連鎖危機」だ。地震、津波に加え、放射能、農産物の汚染、電力不足など、すべてが連鎖をして問題が出てくる。これに対応するには強いリーダーシップと、中央のコントロール機能が必要だ。これは「バリュー・オブ・ジャパンの危機」とも言える。地震・津波への備え、原子力の安全性、食品の安全性というのは私たち日本人が誇ってきたものばかりだが、今回著しくダメージを受けた。
しかし、「バリュー・オブ・ジャパンの危機」は、裏返せば、非常に大きなチャンスを持っている。海外で日本の現状を説明する際に私が好んで使う一つのキーワードが、「フロム・スクラッチ（「ゼロから」の意）」だ。いまはすべてがゼロベースからできる。
…(中略)…
私はここで三つの視点をぜひ申し上げたい。
第一点、これから復興のために行うべき政策が、経済政策の基本に則っているかが極めて重要だ。「大胆に、迅速に、思い切って」やらなければいけないことは事実だが、基本を踏み外したら、それは必ずしっぺがえしとしてやってくる。復興構想会議では増税の話を匂わせているが、私はその点には賛成できない。
第二点、是非復興構想は、「大風呂敷を広げて」いただきたい。日本の財政規模から言うと、十数兆円の復興費用というのは決して大きな金額ではない。ゼロベースでできるわけだから、それを考えるともっと大きな構想があってもよい。
そして第三点、特区をやる、民間の資本を導入するという話はみんな言っていたのに、今までできなかったことだ。今はチャンスだから、例えば復興庁の仕組みを整えることによって「いかにそれを実現するか」を示してほしい。
最後に、マクロ経済運営に関する視点が、いまの政権を始め、メディアを含む日本の社会全体に非常に欠落していることを懸念している。

竹中平蔵（たけなかへいぞう）氏は、1951（昭和26）年、和歌山県和歌山市の比較的裕福な商家の次男に生まれる。実兄はミサワホーム社長の竹中宣雄（1948～）。
和歌山市立吹上小学校、和歌山市立西和中学校、和歌山県立桐蔭高等学校を経て、一橋大学経済学部卒業後に日本開発銀行入行。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001（平成13）年に発足した小泉内閣では、経済財政政策担当大臣となり、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣兼務、総務大臣（第6代）を歴任。
2006（平成18）年よりアカデミーヒルズ理事長、現在東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授。そのほか、(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役などを兼務。
主な著書に「世界で突き抜ける（2016年ダイヤモンド社）」「構造改革の真実竹中平蔵大臣日誌（2006年日本経済新聞社）」「研究開発と設備投資の経済学（1984年サントリー学芸賞受賞、東洋経済新報社）」など多数。