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防災格言の作り方(ボツになったヘレン・ケラーの格言の巻)

time 2009/09/02

防災格言の作り方(ボツになったヘレン・ケラーの格言の巻)
防災格言の作り方(ボツになったヘレン・ケラーの格言の巻)  [編集長コラム]

防災格言をメルマガ読者に毎週お届けするようになってから早いもので二年の月日が経ちました。

二年間、飽きもせずに続けられているのは、読者が大きく減らずに、ちょっとずつ増えているからかもしれません。
何にせよ、今でもそれなりに楽しく原稿を書いているので、執筆者冥利につきる今日この頃ですね。

さて、このメルマガですが、
以前の配信システムは自分で作成した簡易的なメール送信ソフトであったこともあり、昔は、その場で原稿を書いては、リアルタイムに送信していました。

だから、、
「 毎週、月曜日の朝にメルマガを出すっ! 」
と決断してからというもの、ノートパソコンを片手に、一度も休刊も出さずにいたことは、なかなか骨の折れる作業でした。

ある時なんかは、発行日の月曜日が祝日だったため、趣味の登山中に、携帯電波の通じる山の中を探して、そのままノートパソコンを取り出し、原稿に手直ししてから送信、しかも数万人も読者がいるのでメール送信終了まで1時間くらい電話がつながりっぱなし・・・なんてこともありました。

現在は、自分のバカさかげんを反省し、事前に配信日時を予約できる便利な有料ASP配信システムに乗り換えています。

さて、この防災格言ですが、今まで書き留めてきた中で、ボツになった格言も多々ございます。
どちらかというとボツになった方が多いかもしれません。

今回は、店長がどうやって原稿を書いているのか、制作の裏話をちょっとだけご紹介しましょう。

基本的には、読書をして、気になったフレーズがあればメモする方法が一番多いのですが、ネット検索という方法もたまに使います。

例えば、「危険」「安全」なんてキーワードを英語とフランス語・イタリア語などに単語翻訳してから海外の検索サイトを使って検索します。
検索して気になったフレーズがあれば、今度は日本語のサイトで原文のまま検索します。
過去にそれを翻訳していた人がいれば、参考に訳者の訳文を見てみます。

次に、この格言の原文を、誰が、いつ、どんな時に発した言葉なのか捜します。つまり、発言の「裏を取る」のです。
でも、ネット検索では、これが、ほとんどが見つかりません。
見つからなかった場合は、発言者の自伝や著書、新聞記事などをとりあえず調べます。
発言主が、著名人ではなかった場合など、発言者自体が何者なのかさっぱり分からない場合があったりしますので、情報を知っているであろう機関や人物や役所に(英語メールなどで事情を説明し)問い合わせます。ほとんど返事がないので、その場合は基本ボツになります。

で、発言主がそれなりに著名な人物だった場合には、何がしかの記事や自伝・評伝など文書が残っていますので、本屋で買ってきたり、図書館に行ったりして読みます。だいたいこれで、その人の人物像や背景が分かりますので、格言と人物像を繋げて翻訳にかかります。

では、この方法で、実際にボツになった格言例をあげますと。

■ステップ1■ 格言を適当な英単語を使って検索して探す

すると見つかった候補が、以下の格言。

格言の原文: “Life is either a daring adventure or nothing. by Helen Keller”

“life” や “adventure” とあり、何だかそれっぽい言い回しにも見えます。
この言葉を言った人は、かの有名な奇跡の人・ヘレン・ケラー(1880〜1968)女史です。

■ステップ2■ 見つかった原文を日本語検索する

ネットで検索すると、著名人のために、立派な日本語の翻訳がすでに確立されています。

ネットで見つけた翻訳:
『 人生は恐れを知らぬ冒険か、無かのどちらかである。(ヘレン・ケラー)』

とヘレン・ケラーの最も有名な格言だとのことで、日本語の名翻訳がみつかりました。
言葉の端々から、人生観がにじみ出ていて、ますますそれっぽい格言で使えそうです。

■ステップ3■ 格言の裏を取る

ただ、このままだと、いつ、どんな時に言った発言なのか、ヘレン・ケラーの意図が良く分からないためこの発言の前後の記述がないかをネットで探します。


“Security is mostly a superstition.
It does not exist in nature, nor do the children of men as a whole experience it.
Avoiding danger is no safer in the long run than outright exposure.
Life is either a daring adventure or nothing.
by Helen Keller”

簡単に見つかりました。

“Security is mostly a superstition” とか “danger is no safer” とか、ますます防災格言に使えそうです。
これも、ネットで検索すると、すでに幾人かの先人たちが翻訳をされていらっしゃいました。


ネットで見つけた先人の翻訳(参考例):

安全とは思い込みにすぎません。
現実には安全というものは自然界に存在しないし、
人類が経験することもありません。
長期的にみれば、危険を避けるのは、
危険に身をさらすことより安全ではないのです。
ヘレン・ケラー

このままで、たいへん素晴らしい防災格言になっていますが、これは私が翻訳したものではないので、このままでは使えません。

更に、この翻訳では、なんだかとても違和感を覚えます。

あの三重苦のヘレン・ケラー(聖母のような人物像)が、
果たして、「人類」やら「安全・危険論」なんて危機管理的な発言をするのであろうか?

私のつたないヘレン・ケラー像とは相反する性格の人物の言葉のように思えます。

やはり、とりあえず、自分で翻訳する作業に入らないといけません。
翻訳の前に、ヘレン・ケラーの人物像を知るためにヘレン・ケラーについて調べます。

■ステップ4■ 格言の背景を知る

実際には子供用のヘレン・ケラー伝の書籍を古本屋(ブックオフ)で購入し読みました。

私の理解したヘレン女史像:

『 ヘレン・ケラー( Helen Adams Keller )は、自らも重い障害を背負いながら、世界各地で精力的に身体障害者の教育と福祉に尽力したアメリカ人。ヘレンは、生後まもなく原因不明の高熱により一命はとりとめたものの、まだ、言葉を覚えぬまま目と耳に重度の障害を受けるが、家庭教師アン・サリヴァンの献身にも助けられ三重苦の障害をみごとに克服する。読み書きを覚えて大学を卒業するまでのヘレンと奇跡を起こしたサリヴァン女史の半生は、1959年「奇跡の人( The Miracle Worker )」として舞台・映画化されることになり、世界的に知られることとなった。』

ある程度は人物像を知っていましたが、なるほど壮絶な人生ですね。
何となく、ヘレンの人生をわかった気分になった上で、さっそく自分なりの翻訳作業にかかります。

■ステップ5■ 格言の原文を翻訳する

ヘレンの格言の原文:
“Security is mostly a superstition.
It does not exist in nature, nor do the children of men as a whole experience it.
Avoiding danger is no safer in the long run than outright exposure.
Life is either a daring adventure or nothing.
by Helen Keller”

 ↓

1回目の店長の翻訳(直訳):

安全のその多くの場合が思い込みである。
安全というものは現実には存在しないということは、子供たちだって知っているし、人類が経験することもありません。。
危険を避けるのは、長い目で見ると、危険に身をさらすことよりも安全ではない。
人生は恐れを知らぬ冒険か、無かのどちらかです。(ヘレン・ケラー)

うーん、やっぱりしっくりきませんね。

“Security”を「安全」と翻訳するのが、そもそもの違和感の始まりです。

そうすると、もう一つの違和感の主 “a daring adventure “を「 恐れを知らぬ冒険 」と、まるで冒険家か探検家の言葉のように翻訳している箇所も訂正できそうです。

人類の宝である子供たちを想うヘレンだったら、”Security”をどういう意味で使うか考える必要があります。

また、このままだと、文章が変なので、ここからメルマガ用に直訳を意訳に校正します。

最終的な店長の翻訳(完成版):

『 心配しないでいられる、ということは多くの場合、思い込みにすぎない。
  そんなものは存在しないし、そんなことは子供たちだって知っている。
  長い目でみれば、傷つくことを避けることで、かえって傷つくことになる。
  人生は愛すべき冒険か、何もないか、のどちらかでしかないのです。
  (ヘレン・ケラー)』

完成しました。

自分なりにヘレンらしさを追求したら

「苦労は買ってでもしなさい。(ヘレン・ケラー)」

という内容になってしまいました。苦笑するしかありませんネ。

でも、我ながら、かなりヘレンらしい言い回しに見えます。

という訳で、このヘレン・ケラーの格言は<防災格言ではない>ので、めでたくボツと相成りました

めでたし、めでたし。

<編集長 拝>

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