防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

防災意識を育てるWEBマガジン

九州を襲った諫早豪雨から得られた教訓[今週の防災格言498]

time 2017/07/10

九州を襲った諫早豪雨から得られた教訓[今週の防災格言498]


『 ムダ足覚悟で
早めの避難 』

諫早豪雨の教訓から(1957(昭和32)年7月25日)

格言は「諫早豪雨(1957(昭和32)年7月25日)」をきっかけに広く知られるようになった教訓。この教訓は、現在でも風水害を減らすための防災標語として、数多くで引用されている。

諫早豪雨(諫早大水害)は、九州の諫早地方を中心に記録的豪雨が襲い、島原半島北部の雲仙市瑞穂町西郷では24時間雨量1109.2mmを観測。一方で約20km離れた島原半島南部では24時間雨量は86mmしか観測されず、いわゆる局地的な豪雨を表す「集中豪雨」という用語が全国に広がる契機となった災害である。

1957(昭和32)年7月25日朝、梅雨前線上の黄海南部に低気圧が発生し、北上した前線は、午前9時頃に佐世保、佐賀、大分に停滞し、次第に活発化した。前線付近では雷雨となり、午前11時には、佐世保で一時間雨量84.8mmを観測。前線はその後やや南下し、午後3時には諫早、熊本を結ぶ線に達し、翌朝まで停滞したため前線の北東側にあたる長崎、熊本、佐賀県に大雨を降らせた。

特に、諫早から島原半島北部にかけて局地的豪雨となった。
日雨量は1000mmを超え、最大一時間雨量は大村で140.5mm、熊本で76.0mmを観測。
大村市では25日から26日にかけて24時間に730mm、このうち600mm以上は25日正午から26日0時までの12時間にまとめて降った。
長崎県雲仙市瑞穂町西郷にある西郷中学校の中庭の雨量計は、25日の日雨量1109.2mm、一時間最大雨量144.0mm、三時間最大雨量377mmを観測した。

こうして、25日夕刻から翌朝にかけて各地で地滑りや土石流が発生、本明川などの中小河川が氾濫することになった。

この豪雨で、諫早市だけで死者・行方不明者586人を数え、熊本市と周辺の市町村を合わせると死者・行方不明者は992人、重軽傷者3,860人、全半壊・流失家屋は4,372棟、山崩れ・がけ崩れは2,284ヶ所、16万人の罹災者をだす大災害となった。

当初、本明川が危険水位を超えた時、諫早市では25日午後3時半頃に避難警報が発令された。
午後5時頃には本明川が氾濫し、旭川、本町、仲沖町、八天町など市内の約二千戸が浸水したものの、諫早湾の満潮時にあたる午後8時前までの人的被害は軽微で、5人の軽傷者をだすだけだった。

その後、次第に水位も下降しはじめたことから、市民には安堵感が生まれ、午後8時以降になると、避難する者もほとんどいなくなった、という。

ところが25日午後8時頃から非常に強い雷雨になった。午後9時には家に水がつき始めたが、激しい雨と雷のため多くの住民が避難をためらった。
その後も激しい雷雨は止むことはなく、午後11時までの3時間に300mmの大雨を降らせた。
そして、深夜の午後10時半頃に突如市内を濁流が襲い、わずか10分間に市の中心街は1.5メートルも増水することとなり、多くの住民が濁流に飲み込まれ亡くなった。

被害を拡大させた原因は、
今まで経験したことがなかった豪雨のため、事前に洪水の規模や程度が分からなかったこと。
更に、一度水位が低下した後、二度目の大雨により急激に増水したこともあり、住民の避難行動が遅れたこと。
また、ひどい雷で避難をためらったり、停電でラジオが聞こえなかったり、などがあったとされる。

洪水や土砂災害の危険性のある土地では、行政などからの避難指示・勧告があった時はもちろんだが、災害の前ぶれを感じた時にも、ムダ足を覚悟で早めに自主避難することが大切、と言われる由縁である。

■「洪水・水害」に関連する防災格言内の主な記事
利根川改修工事に見る水害の歴史(2010.2.26 編集長コラム)
利根川の洪水想定 首都圏で死者4,500〜6,300人(2010.3.5 編集長コラム)
小田原評定(水俣土石流災害)(2006.1.29 編集長コラム)
豪雨そして土砂災害。その犠牲者はいつも老人ホーム(2010.7.20 編集長コラム)
松野友(岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02 防災格言)
及川舜一(元岩手県一関市市町 カスリーン台風とアイオン台風の大水害)(2015.09.14 防災格言)
奥貫友山(利根川・荒川水害である寛保大水害時の慈善家)(2010.4.5 防災格言)
川合茂(河川工学者 舞鶴工業高等専門学校名誉教授)(2011.08.15 防災格言)
高橋裕(河川工学者 東京大学名誉教授)(2017.06.12 防災格言)
幸田文(随筆家・小説家 代表作『崩れ』『流れる』)(2015.05.11 防災格言)
桑原幹根(愛知県知事)(2014.09.15 防災格言)
廣井悠 (都市工学者)(2012.03.12 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
下田歌子 (歌人・実践女子学園創始者)(2009.12.14 防災格言)
平生釟三郎 (川崎重工業社長)(2009.11.02 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
吉田茂 (政治家)(2008.05.05 防災格言)
脇水鉄五郎(地質学者・日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
谷崎潤一郎 (作家)(2014.12.08 防災格言)
矢野顕子 (シンガーソングライター ハリケーン・サンディ水害)(2016.10.17 防災格言)
森田正光 (お天気キャスター)(2017.06.05 防災格言)

■「防災の標語」に関連する防災格言内の記事
安きにありて危うきを思う(居安思危)(中国故事)(2008.11.10 防災格言)
備えあれば憂いなし(有備無患)(中国故事)(2008.11.10 防災格言)
天災は忘れた頃来る (寺田寅彦)(2009.10.12 防災格言)
ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい (寺田寅彦)(2009.03.02 防災格言)
ムダ足覚悟で早めの避難(1957(昭和32)年7月25日 諫早豪雨教訓)(2017.07.10 防災格言)
国土交通省東北地方整備局「災害初動期指揮心得(2013年3月)」(2015.03.09 防災格言)
高知県黒潮町「南海トラフ地震・津波の防災計画基本理念(2012年)」(2016.03.07 防災格言)
「津波避難のたすとひく」静岡県警の津波避難啓発標語(2014.11.10 防災格言)
「おはしも(おかしも)」児童のための避難標語(2008.09.01 防災格言)
「ひなんするときは、押すな・走るな・声出すな」学研まんが「地震のひみつ」より(2015.04.27 防災格言)
関東大震災時のアメリカ合衆国赤十字社防災標語(2008.05.19 防災格言)
「備えよ、常に( Be Prepared )」スカウト標語(2008.05.26 防災格言)
後藤新平(日本スカウト運動標語)(2010.4.26 防災格言)
アンリ・デュナン (国際赤十字標語)(2011.5.2 防災格言)
佐野常民「日本赤十字 救護員十訓」(2013.02.11 防災格言)
松井茂 (昭和初期の山林火災防止標語)(2008.12.01 防災格言)
安政江戸地震で江戸幕府が発した町触れ(火災防止標語)(2008.12.08 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)インフルエンザ感染対策標語(2013.12.30 防災格言)
アメリカ合衆国沿岸警備隊モットー(2012.12.24 防災格言)
イタリア トーレ・デル・グレコ市モットー(2013.03.11 防災格言)
キャヴェンディッシュ一族の家訓(イギリス貴族)(2011.11.21 防災格言)
よりよい備え、よりよい暮らし(Better Preparation, Better Life.)(SEISHOP防災標語)(2012.06.26 編集長コラム)

 

<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,危機管理
メルマガ登録バナー
E-mail
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ