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小泉丹の随筆『自然科学』の名言(1882~1952 / 生物学者・寄生虫学者 慶應義塾大学医学部教授)[今週の防災格言747]

time 2022/04/18

小泉丹の随筆『自然科学』の名言(1882~1952 / 生物学者・寄生虫学者 慶應義塾大学医学部教授)[今週の防災格言747]

『 自然界はこの上もなく複雑であり、多様である。 』

 

小泉 丹(1882~1952 / 生物学者・寄生虫学者 東京帝国大学教授 慶應義塾大学医学部教授)

 

格言は、随筆『自然科学』(昭和14年6月)より。

曰く―――。

自然界はこの上もなく複雑であり、多様である。
何かのイデオロギーを心にもってそれを見る場合、そのイデオロギーに合致するものを見出し、それを集め、そのイデオロギーを強化させることは必ずしも難しくない。一方にまた自然界の現象には異なった解説が可能である。それ故一つの事象が、異なった立場の考究者によって、両者何れにもその考えの立証の材料とされ得るのである。

例えば、自然界には相互闘争があり、生存抗争がある。而して相互扶助がある。相互扶助のイデオロギーで解説を押し通そうというのは自然科学的でない。ヂラフ(キリン)が長い頸と脚とをもっている。これの由来をラマルクは使用不要で説明した。而してダーウィンは生存抗争で説明した。自然科学の面白味はこのようなところにもある。学習者はそれ等の何れにも捉われずして、無予想を以て事物を学ぶという態度を学ばねばならぬ。

 

小泉 丹(こいずみ まこと 通称:こいずみ たん)は、デング熱など熱帯病とマラリア原虫・回虫などの寄生虫研究で知られる生物学者(自然科学者)。理学博士・医学博士。戦後、寄生虫についての啓蒙と集団駆除を提唱し、結核と並び国民病ともいわれた寄生虫症を激減させることに貢献した。
弟に第二次新思潮や白樺派の作家で翻訳家の小泉鉄(まがね)(1886~1954)がいる。

1882年(明治15年)11月23日、京都府生まれ。雪国の福島県若松市(現会津若松市)で生まれ育ち、父親の転勤による引っ越しや進学で寄宿舎暮らしをしたことから、小学時代と高等学校のほとんどを宮城県仙台市で過ごした。
読書家だった父親の影響で、少年時代から本を読み、旧制会津中学の五年生の頃には既に将来を学問で身を立てることを決心し、仙台の二校(旧制第二高等学校)へと進学。高校卒業と同時に父を亡くし、一家を背負うような境涯となって苦学しながらも上京し、1907年(明治40年)東京帝国大学理学部動物学科を卒業。伝染病研究所(国立感染症研究所の前身)に入り、寄生虫学者の宮島幹之助(1872~1944)に師事し、寄生原虫学を専門として、寄生虫学、生物学、医学(公衆衛生学)を学んだ。1912年(明治45年)に初となる著書『人体寄生動物学』を上梓。1914年(大正3年)台湾に赴任し、台湾総督府中央研究所技師に転じ、マラリア病の研究とその予防撲滅に活躍した。その後、陸軍省の馬疫調査委員会委員、国際連盟保健部理事を経て、1924年(大正13年)に新設された慶応義塾大学医学部教授となり寄生虫学教室を担当した。寄生虫学の研究、とくに回虫に関する広範な研究を行い、『蛔虫の研究』『人体寄生虫』のほか『進化学序講』『進化学経緯』『日本科学史私攷』など解説書、また多くの随筆『生物学巡礼』『野口英世』『科学的教養』などを著した。
戦後1949年(昭和24年)予防医学の国井長次郎(1916~1996)とともに東京寄生虫予防協会(後の日本寄生虫予防会)を立ち上げ理事長を務めた。1952年(昭和27年)10月21日死去。69歳。
日本寄生虫学会では彼の功績を称え「小泉賞」が創設されている。


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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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