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本多利明の経済政策思想『渡海新法(1804年)』から危機管理上の貿易の重要性を説いた名言(1743~1821 / 江戸後期の経世家・西洋学者・数学者)[今週の防災格言756]

time 2022/07/04

本多利明の経済政策思想『渡海新法(1804年)』から危機管理上の貿易の重要性を説いた名言(1743~1821 / 江戸後期の経世家・西洋学者・数学者)[今週の防災格言756]


『 船舶の用は運送にあり。運送の用は有無を通るにあり。有無を通るは交易にあり。交易に大小の二儀あり。大小の交易二儀ともに全備せざれば必ず万民衣食住の諸用も全備せざるなり。 』

 

本多利明(1743~1821 / 江戸後期の経世思想家・西洋学者・数学者)

 

格言は、著書『渡海新法』(1804年)の「船舶は国家に長器たる所以の事」より。

曰く―――。

船舶の用は運送にあり。運送の用は有無を通るにあり。有無を通るは交易にあり。交易に大小の二儀あり。大といふは大交易をいふ。大交易は船舶を用て遠海を渡り遠国に到り其地の産物の有余と不足とを交易するなり。有余は買取、不足は売与ふ。又小といふは小交易をいふ。小交易は船舶を用ゐず遠海にも渡らず遠国にも到らず近隣諸国の産物の有余と不足とを交易するなり。有余は買取、不足は売与ふ。斯の如く大小の交易二儀ともに全備せざれば必ず万民衣食住の諸用も全備せざるなり。大交易に大利あり小交易に小利あり。悉(ことごとく)皆(みな)貪利(どんり)にあらず。自然と到来する利益なり。是亦(これまた)船舶の運送に縁てなり。故に船舶は国家の長器なり。

 

本多利明(ほんだ としあき)は、江戸後期の経世家。北方探検家の最上徳内(1755~1836)の師。
若くして天文・数学の知識を得、その後、蘭学(オランダ)を学び、更に西洋の天文・数学・航海術の研究を行い、天明の飢饉の体験と、ロシアの北方問題を背景に、島国日本の国富を増やし農民の困窮を救うために、経済政策として北方地域(特に蝦夷地)の探検と開発の必要性を説いた人物。
その理念は、人口増加に伴う物資・食糧不足は交易により賄い、交易には航海が必須であるが、航海には数学や天文の知識が欠かせない、というものである。

著書『自然治道之弁』(1795年)には、

国を治むるの本は渡海運送交易にあり。此道を用ひ治むる時は自然に協ひ天應に法り天下の国産天下に融通し天下の万民不自由なる事なし。
陸地の駄送入用海上運送入用引去り其跡諸国の直段平均すれば万民の恨悔あるべき様なり。此制度建立の以後如何なる凶歳ありといへども庶民餓死する事なし。是永久不易の善政にして自然治道の制度なり。

とある。

寛保3年(1743年)越後国(新潟県)蒲原郡生まれ。
幼い頃から漢学を学び、18歳で江戸に出て、千葉歳胤(1713~1789)に天文学・暦学を、今井兼庭に関流の和算を学んだ。1766年(明和2年)24歳で江戸音羽に天文学・算学・地理・測量の私塾「音羽塾」を開き、音羽先生と呼ばれ、一時加賀藩前田家に仕えたが、晩年まで浪人生活を送り、門弟の教育と著述に専念した。
地理学者の山村才助(1770~1807)、蘭学者の司馬江漢(1747~1818)、農政学者の小宮山楓軒(1764~1840)らとの交友を通じ蘭学知識を磨き、独学で西洋学(特に物理学)を研究した。
1787年(天明7年)天明の飢饉に苦しむ奥州(会津藩・仙台藩など)を視察し悲惨な農村を目の当たりにしたことを契機に、以降は経世論へと向かった。1801年(享和元年)には幕命で江戸から蝦夷間の航路の調査で蝦夷(えぞ)地へ渡航、緊迫する北方問題を経験したことで、以降は危機意識を持って『経世秘策』『西域物語』『蝦夷道知辺(みちしるべ)』『渡海日記』など70点余の著述を執筆した。
文政3年(1820年)78歳で死去。墓所は東京都文京区の桂林寺にある。


画像「海事史料叢書 第6卷」(1929年)より

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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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