防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

桑原幹根が伊勢湾台風災害直後の国会・災害地対策特別委員会で述べた名言(1895~1991 / 伊勢湾台風時の愛知県知事)[今週の防災格言353]

time 2014/09/15

桑原幹根が伊勢湾台風災害直後の国会・災害地対策特別委員会で述べた名言(1895~1991 / 伊勢湾台風時の愛知県知事)[今週の防災格言353]


『 千年に一度の台風であったなら、千年間の一番最後の年に来たということも考えられる。したがって、次の千年目の初めとなる来年の台風期に、また同じような災害が伊勢湾に来ないとは誰も保証できない。 』

 

桑原幹根(1895~1991 / 官僚・愛知県知事(6期) 愛知県名誉県民)

 

格言は、国会「災害地対策特別委員会」(昭和34(1959)年11月5日)答弁より。
この年の9月の伊勢湾台風では「千年に一度」と言われた異常潮位により6mの高潮が発生し、伊勢湾内の堤防が破堤(護岸堤防19ヶ所が決壊、河川堤防で37ヶ所決壊)され、名古屋市だけで1,909人、愛知県全域で死者3,351人をだす大惨事となった。国会に参考人として呼ばれた桑原愛知県知事は、護岸・河川堤防の早期復旧を国へ求めた。

曰く―――。

ある人の言葉に、今回の伊勢湾台風のような災害は、千年に一度来るという風なことを言われております。
よしんば、それが千年に一度であったにしても、我々の数代前の先祖が、このことを経験してない今回の偶然の災害であるにいたしましても、これが千年目に一度来たのでございます。
この千年目に一度来たということは、千年の時期の一番最後のこの年に来たということも考えられるのでございます。
従って、次の千年目の初めでありまする来年の台風期に、また同じような災害が伊勢湾に来ないとは誰も保証はできないのでございます。
一度あったというこの現実の事実というものは、また来年の台風期に二度ないとはだれも断定することはできないのでございまして、私は、このことを考えますと、自分が責任のある地位におっても、どうしてもいても立ってもいられないような気持がいたすのでございます。

 

桑原幹根(くわはら みきね)は、愛知県知事を24年間務めた人物。
明治28(1895)年、山梨県南都留郡明見村(現富士吉田市)の養蚕農家の7男に生まれた。山梨県第一中学校都留分校(現山梨県立都留高等学校)、旧制第一高等学校から東京帝国大学法学部を経て、大正12(1923)年に内務省に入省。内閣東北局長、東北興業株式会社(現三菱マテリアル)総裁などを歴任し、昭和21(1946)年に愛知県知事(官選)となる。戦後は公職追放されたが、解除後の昭和26(1951)年に愛知県知事に初当選し、以後は連続6期当選。24年にわたって愛知県政を担い、全国の草分けとなった地方総合計画を策定し、名古屋港や衣浦港では臨海工業用地を造成し、トヨタや新日本製鐵に代表される企業誘致の基盤を築いた。昭和42(1967)年には東京都知事以外で初の全国知事会会長となったほか、昭和50(1975)年に国土庁顧問、昭和52(1977)年に自治省特別顧問などを務めた。心不全により平成3(1991)年4月11日に95歳で逝去。勲一等旭日大綬章受章(1973年)。愛知県名誉県民(1987年)、富士吉田市名誉市民(1988年)。

尚、愛知県の死者3,351人、三重県1,273人、岐阜県104人を出した伊勢湾台風を契機とし、災害対策の必要性の議論が高まり、昭和36(1961)年に国民の生命と財産を守ることを基本とした「災害対策基本法」が制定されることになる。





■「被災時の首長」に関連する防災格言内の記事
後藤新平(1857~1929 / 関東大震災時の内務大臣兼帝都復興院総裁)(2010.04.26防災格言)
安河内麻吉(1873~1927 /関東大震災時の神奈川県知事)(2008.04.28防災格言)
永田秀次郎(1876~1943 / 関東大震災時の東京市長)(2015.01.05防災格言)
石黒英彦(1884~1945 / 昭和三陸地震時の岩手県知事)(2013.06.10防災格言)
加々美武夫(1890~1936 / 室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
松野友(1912~2003 / 水害の町である岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02防災格言)
及川舜一(1914~1999 / カスリーン台風とアイオン台風の大水害時の岩手県一関市市町)(2015.09.14防災格言)
岡村正吉(1922~2010 / 1977年有珠山噴火時の北海道虻田郡虻田町長)(2012.07.16防災格言)
李登輝(1923~2020 / 台湾の政治家・農業経済学者 元中華民国総統)(2015.07.13 防災格言)
エドゥアルド・シェワルナゼ(1928~2014 / 政治家 旧ソビエト連邦の外務大臣(第8代) グルジア大統領(第2代))(2021.03.08 防災格言)
越森幸夫(1930~2005 / 北海道南西沖地震時の奥尻町長)(2018.02.05防災格言)
ミハイル・ゴルバチョフ(1931~ / 旧ソビエト連邦最後の共産党書記長)(2008.03.24防災格言)
貝原俊民(1933~2014 / 阪神淡路震災時の兵庫県知事)(2014.11.01防災格言)
小川竹二(1937~2014 / 下越水害時の新潟県豊栄市長)(2017.09.11防災格言)
斎藤富雄(1945~ / 阪神淡路震災時の兵庫県副知事・兵庫県初代防災監)(2017.11.20防災格言)
片山善博(1951~ / 鳥取県西部地震時の鳥取県知事 政治家・自治官僚)(2014.1.27防災格言)
中貝宗治(1954~ / 台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
村井嘉浩(1960~ / 東日本大震災時の宮城県知事)(2013.10.14防災格言)
泉田裕彦(1962~ / 新潟県中越地震時の新潟県知事)(2012.02.20防災格言)

■「洪水・水害」に関連する防災格言内の主な記事
長野県伊那地方の水害の伝承「未満水(ひつじまんすい)(1715年)」より(2020.06.29 防災格言)
落雷のまじない「くわばらくわばら(桑原桑原)」の伝承の由来(2021.07.05 防災格言)
菅原道真公と落雷の関係(くわばらくわばら(桑原桑原))(2021.07.12 コラム)
神田選吉(1856~1909 / 電気工学者・雷災史家 東京郵便電信学校校長)(2022.06.06 防災格言)
中田良雄(1905~1985 / 気象学者 「梅雨谷線(現在の梅雨前線)」を最初に導入した気象学者)(2022.06.27 防災格言)
中谷宇吉郎[2](物理学者・随筆家 カスリーン台風後の随筆「水害の話(1947年)」より)(2020.07.06 防災格言)
寺田寅彦[9](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2020.08.31 防災格言)
加々美武夫(室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
藤原咲平 (気象学者 室戸台風後の著書『天気と気候』より)(2013.10.28 防災格言)
丹羽安喜子(歌人 室戸台風で罹災)(2016.08.22 防災格言)
諫早豪雨の教訓から(1957年7月25日)(2017.07.10 防災格言)
長崎豪雨の教訓から(1982年7月23日)(中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(平成17年3月))(2021.08.16 防災格言)
松野友(岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02 防災格言)
及川舜一(元岩手県一関市市町 カスリーン台風とアイオン台風の大水害)(2015.09.14 防災格言)
小川竹二(元新潟県豊栄市長 下越水害)(2017.09.11 防災格言)
奥貫友山(利根川・荒川水害である寛保大水害時の慈善家)(2010.4.5 防災格言)
安芸皎一(河川工学者・土木技術者 東京大学教授 「伊勢湾台風」の名言)(2020.09.07 防災格言)
川合茂(河川工学者 舞鶴工業高等専門学校名誉教授)(2011.08.15 防災格言)
高橋裕(河川工学者 東京大学名誉教授)(2017.06.12 防災格言)
幸田文(随筆家・小説家 代表作『崩れ』『流れる』)(2015.05.11 防災格言)
桑原幹根(愛知県知事)(2014.09.15 防災格言)
廣井悠 (都市工学者)(2012.03.12 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
下田歌子 (歌人・実践女子学園創始者)(2009.12.14 防災格言)
平生釟三郎 (川崎重工業社長)(2009.11.02 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
吉田茂 (政治家)(2008.05.05 防災格言)
脇水鉄五郎(地質学者・日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
谷崎潤一郎 (作家)(2014.12.08 防災格言)
矢野顕子 (シンガーソングライター ハリケーン・サンディ水害)(2016.10.17 防災格言)
森田正光 (お天気キャスター)(2017.06.05 防災格言)
中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(2008年9月8日)より(2018.07.09 防災格言)
二宮尊徳翁(二宮金次郎)(江戸時代後期の経世家・農政家)(2012.01.30 防災格言)
上杉鷹山 (江戸時代中期の大名 出羽国米沢藩9代藩主)(2010.04.12 防災格言)
莅戸善政[1] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2008.03.17 防災格言)
莅戸善政[2] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2011.12.05 防災格言)
中江藤樹 (江戸時代初期の陽明学者 近江聖人)(2010.11.22 防災格言)
『百姓伝記』(1680~1682年・著者不明)巻七「防水集」より(2018.08.27 防災格言)
中西 進(国文学者 大阪女子大名誉教授 文化勲章受章)(2019.04.08 防災格言)
倉嶋厚(気象学者・お天気キャスター 元気象庁主任予報官)(2019.07.22 防災格言)
宮澤清治 (気象学者・NHK気象キャスター)(2016.09.05 防災格言)
高橋浩一郎(気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)(2019.10.14 防災格言)
中曽根康弘(政治家 内閣総理大臣(第71~73代))(2019.12.02 防災格言)
中貝宗治(台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
鍋島直正(大名・肥前国佐賀藩主(第10代) 「シーボルト台風」)(2019.12.09 防災格言)
利根川改修工事に見る水害の歴史(2010.2.26 編集長コラム)
利根川の洪水想定 首都圏で死者4,500~6,300人(2010.3.5 編集長コラム)
小田原評定(水俣土石流災害)(2006.1.29 編集長コラム)
豪雨そして土砂災害。その犠牲者はいつも老人ホーム(2010.7.20 編集長コラム)
アーノルド・ニーベルディング(1838~1912 / ドイツの法学者 政治家)(2020.09.14 防災格言)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,危機管理
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ

人気記事