防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

地震が来たら「机の下に隠れる」のは本当に正しいか?

time 2018/03/14

地震が来たら「机の下に隠れる」のは本当に正しいか?

私たちの防災訓練の原体験といえば、学校の避難訓練ではないでしょうか。校内放送が緊急放送のサイレンを鳴らし、「避難訓練、地震です。机の下に隠れましょう」とアナウンスし、児童・生徒がいっせいに机の下に隠れるという種類の訓練です。
しかし、地震発生時に「机の下に隠れる」というのは、果たして正しいのでしょうか。

文科省が明示している「机の下に隠れる」という行動

学校の避難訓練においては、全国共通のマニュアルがあるわけではなく、各学校がその実情に合わせて防災マニュアルを作成するものと法律で定められています(学校保健安全法第29条)。

そのため必ずしも全国の児童・生徒が同じ訓練を受けたわけではないのですが、どうやら2011年3月11日の東日本大震災が起きるまでは、このような「机の下に隠れる」避難訓練が多くの学校で行われていたようです(参考=矢崎良明「学校における地震防災指導・防災管理の現状と課題」)。

東日本大震災で被災した学校の調査等を受けて、文部科学省は2012年3月、「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」を作成しました。第1章において、具体的に次のように指摘しています。

“校内放送で「地震が発生したので机の下に入りなさい」と指示することによって避難行動を促す訓練が、実際に地震が発生したときの危機管理に見合っていないことが言えます。”

学校

では、「机の下に隠れる」という行動は誤っていると指摘しているのかというと、そうではありません。同書の第3章においては、初期対応として、「教室などの机のある場所では、机の下に隠れる」と明示しているのです。

①地震の揺れで停電し校内放送が流れない可能性がある、

②校内放送よりも前に地震の揺れを察知した段階で素早く行動をとる訓練が必要である、

③教室内以外を想定した訓練が必要である――

ということが、上記の避難行動が実際に「見合っていない」としている理由であって、教室内で「机の下に隠れる」こと自体は、正しいとしているわけです。

机が飛んできて危ないという指摘も

ところが、この「机の下に隠れる」という避難行動は、多くの識者から批判されています。一例を挙げると、一般社団法人日本防災教育振興中央会の仲西宏之・佐藤和彦共著の『震度7の生存確率』では、「すぐに机の下に身を隠す」行動は、震度7のような強い地震の場合、机ごと飛ばされる可能性がありケガをする可能性があるため勧めていません。

そもそもほとんどの学校では耐震補強が進んでおり、教室の天井落下や照明器具の落下の可能性は低下しているとも指摘しています。例えば非構造部材の耐震化がほぼ100%完了している徳島県の小中学校では、机の下に隠れるのは「意味がない」としています。

家での退避行動は状況によって異なる

学校以外、例えば家で取るべき避難行動は何でしょうか。東京都防災ホームページでは、地震発生時の行動として、やはり、

“丈夫なテーブルや机の下に身をかくし、頭を保護するようにしましょう。”

と指導しています。
ところが、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏は次のように指摘しています。

“「机の下に身を隠す」というのも間違いではありません。例えば、それしか方法がない場合、ほかに避難する余裕がない場合、極めて耐震性の高い建物の中にいた場合などは「机の下などに身を隠す」行動で良いと思います。

しかし、どんな状況であっても「机の下に身を隠す」が正しいと決めつけるのはかえって危険です。古い建物だと倒壊する可能性があります、また倒壊しないまでも天井が落下したり、ドアが変形して閉じ込められたりした場合に、万一火災が発生したりガス漏れが発生した場合、机の下に身を隠していたら逃げられなくなる恐れがあるからです。“

出典 http://www.bo-sai.co.jp/jisinkokoroe.html

その上で山村氏は

“地震時の退避行動は状況(建物が古いか新しいか、構造、地盤地形、いる場所、室内の転倒物等の有無など)によってすべて異なります。”

と答えています。「状況によってすべて異なります」というのは、一見玉虫色のようにも感じますが、「机の下に隠れる」のが「正解」と断言できない現状を示しているのではないでしょうか。

「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」場所を作る努力

机の下に隠れることが、どんな状況でも正しいわけではないことはわかりました。では、私たちは、大震災に遭遇した時にどのように対応すればよいのでしょうか。

ヒントは前述の「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」の表紙に掲げてある「『落ちてこない・倒れてこない・移動してこない』場所に。」という標語にあるように思えます。初期対応にとるべき基本行動として手引きが示している言葉でもあるのですが、どのような状況でも、上からものが落ちてこない、横からものが倒れてこない、ものが移動してこない場所に素早く身を寄せる意識を、常日ごろから高めていくことが大切です。

その場所が、机の下かもしれませんし、大きな柱のそばかもしれませんし、往来の少ない車道の真ん中かもしれません。あらゆる状況に応じて、学校のあの場所ならこう、雑居ビルならこう、歩道を歩いている場合はこうと、想定しておくのです。

もう一つ大事なことは、最初から「『落ちてこない・倒れてこない・移動してこない』場所」を作る努力をしておくことです。具体的には、棚の上に物を置かない、本棚や冷蔵庫などを固定する、ガラス飛散防止フィルムを貼るなどの対策です。

「落ちてくる、倒れてくる、移動してくる」場所をそもそも作らない努力が、大震災の備えとして必要であると考えます。

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