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及川舜一が体験したカスリーン台風(1947年)・アイオン台風(1948年)の名言(1914~1999 / 岩手県一関市市町)[今週の防災格言404]

time 2015/09/14

及川舜一が体験したカスリーン台風(1947年)・アイオン台風(1948年)の名言(1914~1999 / 岩手県一関市市町)[今週の防災格言404]

『 市民は次第に増加する川の水かさを見ながらも安心していた。 』

 

及川舜一(1914~1999 / 岩手県一関市市町)

 

格言は一関市助役時代の寄稿『解放された水害の町(昭和54年6月23日記)』より。(全国防災協会編「語り継ぐ災害の体験(山海堂 1981年)」集録)

岩手県一関市は、毎年のように大雨による北上川の逆流(バックウォーターや尻取水(しざし)とも呼ばれる)に悩まされていた。ただ、それまで過去一関を襲った水害は、全て北上川の逆流によるもので、市内を流れる磐井川(いわいがわ / 北上川支流)が氾濫したことは一度もなかったという。
そのため、一関市の歴史的大災害は、「磐井川の増水」という住民たちも予想していなかった二度の台風による大洪水だった。昭和22(1947)年9月のカスリーン台風、翌昭和23(1948)年9月のアイオン台風による大水害である。岩手県では、二度にわたる大水害を教訓に、昭和25(1950)年に磐井川堤防復旧工事を完成させ、堤防には、早期の復興を願って、約2,000本の桜と梅が植えられた。今年(2015年)、更なる堤防改修事業に伴って、市街地の真ん中の堤防に残った桜並木28本が伐採されることになったという。

曰く―――。

その雨音は通常の会話が聞きとれないほどの激しさであった。だが、磐井川の水位は午後四時一・六メートル程度だったからこの激しい降雨の割にしては出水もあまりない状態であり、沿岸の市民はほとんど出水に対する危機感は持っていなかった。
しかし、あにはからんや、このころ上流流域では無数の地すべりや土砂崩壊が相次いで流れをせきとめ、そして決壊流失を繰り返して市内への襲来が刻一刻と迫っていたのであるが、情報伝達網が整っていない当時であっては知る由もなかった。くしくもこの日から丁度一ヵ年前、一関市はカザリン台風による洪水でほとんどの家屋が二階の中段までついた水害を受けたのである。
なんと偶然にも前年と同じ日の洪水だからといって、二度と繰り返すことは絶対にあり得ないことであり、北上川なら毎年のようにバックウォーターによる被害があったけれども磐井川では氾濫した前例もない、と市民は次第に増加する川の水かさを見ながらも安心していた。 《 中略 》 それでも市内を分断している磐井川の堤防はコンクリート護岸として立派に存在していたし、よもやこれを溢流(いつりゅう)するなどとは正に思いも寄らぬこと、まして山津波的出水には市民は対処することを知らなかったし、伝説にも聞いていない全く突然変異の現象であった。
市内上ノ橋、磐井橋の橋脚におびただしい流材が滞積し、流水をはばみ、当時川幅七〇メートル両岸コンクリート擁壁の戦前に施工されたきれいな護岸も一挙に壊滅してしまった。

昭和22(1947)年の夏は、東北地方で大雨の日が多かった。前線の南下に伴い7月22日〜24日まで連日の大雨が続き、北上川流域の穀倉地帯が冠水。7月29日〜8月3日には、東北でまたも大雨が続き、前回の大雨で被害を免れたところも冠水し、岩手県だけで死者10人、行方不明5人、家屋58棟が流失した。
そして、この2度の洪水の後にカスリーン台風が東北を襲う。風速は秒速20メートル程度と大したことはなかったが、東北地方を記録的大雨が襲った。岩手では、9月6日頃から秋雨前線による断続的な雨が降りはじめ、カスリーン台風が関東地方から東北に向け北上する14日〜15日に前線が活発化した。9月15日朝と午後に一時間雨量50ミリを超す猛烈な集中豪雨が奥羽山脈の東側を襲い、北上川上流の水位(北上川狐弾寺量水標)は17.58メートルを記録。なんと平時に比べ15.6メートルも増水している。上流の支川から集まった水で磐井川は急激な増水となり、なぎ倒された木材が濁流となって上ノ橋や磐井橋を押し流し、午後7時頃、ついに磐井川両岸の堤防が全て決壊し、住家131棟が流失、5千棟が水没し、100余人が亡くなった。

それから、ちょうど一年経た昭和23(1948)年9月16日。東北地方を襲ったアイオン台風の影響で、一関地方は一時間に50ミリを超す局地豪雨が二時間も降り続き、一関では日雨量245.6ミリを記録する。磐井川の水位は一時間で約5メートルも増水し、前年からの復旧工事が未着だった磐井川仮堤防を襲った。午後7時頃、堤防を越えた激流はまたたく間に市内に流れ込んだ。家屋流失817棟、半壊892棟、ガソリンスタンドから漏れたガソリンにローソクの火が引火した火災も発生し全焼15棟、死者・行方不明者453人を数えた。前年のカスリーン台風よりも雨量も水量も少なかったものの、前回の被害をはるかに上回る前代未聞の大惨事となった。
大災害の原因は、戦争により維持補修ができなかったことによる山林と河川の荒廃があったうえ、昭和22(1947)年7月から豪雨による増水が連続して発生していたことと言われている。

… … …

及川舜一(おいかわ しゅんいち)は、土木技術者を経て、岩手県南の城下町である一関市(現合併前の初代一関市)の第10~12代市長を務めた人物。

大正3(1914)年2月14日生まれ。岩手県一関市幸町出身。
岩手県土木部の災害担当を経て、カスリーン台風直後の昭和22(1947)年11月に一関土木事務所長として赴任。
磐井川災害から一関市を復旧・復興するために心血を注ぎ、昼夜問わず東奔西走、全力でこれにあたった。当時、災害による復旧事業は原則として元通りに原形復旧するとされ、川幅の拡幅、堤防の規模、橋梁の強化など「改良」は法的に困難だったという。戦後一関に進駐していたアメリカ軍や、浅利三郎(一関出身の衆議院議員)、阿部時一(旧一関市長)、岩手県や河川局、建設省などと折衝しながら復興事業に取組み、見事な成果をあげた。昭和40(1965)年、小野寺喜得(おのでらきとく / 1911~1993)一関市長に招かれ一関市建設部長に着任。助役を経て、昭和58(1983)年より一関市長となった。以降も堤防・ダム建設など一関遊水池大規模治水事業を推し進め、生涯を通し、北上川と磐井川の河川改修に尽瘁し、平成11(1999)年3月11日85歳で死去。







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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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