防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

小川竹二が下越水害の時に遺した名言(1937~2014 / 元新潟県豊栄市長)[今週の防災格言507]

time 2017/09/11

小川竹二が下越水害の時に遺した名言(1937~2014 / 元新潟県豊栄市長)[今週の防災格言507]

『 過去の水害を忘れることなく、日頃から “心の備え” をしておくことがとても重要ではないでしょうか。 』

 

小川竹二(1937~2014 / 地方政治家 元新潟県豊栄市長(5期))

 

格言は新潟県豊栄地区公民館(旧豊栄市中央公民館)前に設置されている看板「7.17水害浸水標」の裏面「忘れてはならない水害の記憶」より。

曰く―――。

1966(昭和41)年7月17日、下越地方は記録的な雨量にみまわれ、加治川などの堤防が切れ、流れ出た水は、南は福島潟、北は紫雲寺町付近の広い範囲に浸水しました。
特に、阿賀野川から加治川にかけての地域におよそ一億立方メートル(加治川ダムの五個分)の水がたまり、豊栄市も歴史上まれにみる大きな被害(豊栄市で死者・重軽傷者67人、床上・床下浸水3,220戸)を受けました。
この時、阿賀野川の堤防を切り開き、たまった水を阿賀野川に流して、被害を最小限にとどめる工夫もされました。

このような水害を繰り返さないために、各地の河川においてはさまざまな整備が進められていますが、それだけで十分ではありません。過去の水害を忘れることなく、日頃からの『心の備え』をしておくことがとても重要ではないでしょうか。
豊栄市長 小川竹二
建設省阿賀野川工事事務所長 平成八年十月設置

 

新潟県の北部を流れる加治川(二級河川)は、古くから暴れ川として知られ、水害のたびに、改修を繰り返してきた歴史がある。

1966(昭和41)年7月17日の「下越水害」では、低気圧と前線の活動により、7月16日から18日にかけて新潟県北部の下越地方と佐渡地方が集中豪雨にみまわれ、加治川、胎内川、荒川の中小河川の大部分が決壊・破堤した。
特に加治川から溢れた水と福島潟(新潟県新潟市北区新鼻)が合わさり、加治川左岸の低地が長期間にわたって湛水することになった。新井郷川排水機場の懸命の排水では水位は一向に低下せず、また、水没した水稲の立ち腐れも始まったことから、市は阿賀野川の堤防を削り、水を流し、19日後の8月4日に排水が完了した。

… … …

小川竹二(おがわ たけじ)は、新潟県豊栄市(現新潟市北区)の市長を長年務めた人物。新潟県市長会会長、全国市長会副会長を歴任し市町村合併に尽力され、2007(平成19)年の政令指定都市新潟市の誕生に大きな貢献をした地方政治家である。

1937(昭和12)年6月、新潟県北蒲原郡葛塚町(現新潟市北区葛塚)に生まれる。葛塚中学校、新潟県立新発田高等学校を経て、1960(昭和35)年に立命館大学経済学部を卒業。大学卒業後は農家に働き、1971(昭和46)年に豊栄市議会議員選挙に立候補して初当選。以降、1987(昭和62)年まで4期16年市議を務めた。1987(昭和62)年4月、49歳のとき、石井耕一豊栄市長の満期退任に伴う市長選挙で、3代目の豊栄市長(現新潟市北区)に初当選した。初当選時は、新潟県内の全20市で一番若い市の一番若い市長として話題となった。以来、2005(平成17)年3月に新潟市との編入合併により辞任するまで市長を5期18年務めた。
その後は、新潟市地域自治委員会長、新潟市豊栄地区地域協議会会長などを歴任。2014(平成26)年2月18日、前立腺がんのため逝去。76歳。
地方自治功績県知事表彰(2005年)。市町村合併功績大臣表彰(2005年)。旭日中綬章受章(2007年)。


1987年4月 市役所への初登庁時







■「被災時の首長」に関連する防災格言内の記事
後藤新平(1857~1929 / 関東大震災時の内務大臣兼帝都復興院総裁)(2010.04.26防災格言)
安河内麻吉(1873~1927 /関東大震災時の神奈川県知事)(2008.04.28防災格言)
永田秀次郎(1876~1943 / 関東大震災時の東京市長)(2015.01.05防災格言)
石黒英彦(1884~1945 / 昭和三陸地震時の岩手県知事)(2013.06.10防災格言)
加々美武夫(1890~1936 / 室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
松野友(1912~2003 / 水害の町である岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02防災格言)
及川舜一(1914~1999 / カスリーン台風とアイオン台風の大水害時の岩手県一関市市町)(2015.09.14防災格言)
岡村正吉(1922~2010 / 1977年有珠山噴火時の北海道虻田郡虻田町長)(2012.07.16防災格言)
李登輝(1923~2020 / 台湾の政治家・農業経済学者 元中華民国総統)(2015.07.13 防災格言)
エドゥアルド・シェワルナゼ(1928~2014 / 政治家 旧ソビエト連邦の外務大臣(第8代) グルジア大統領(第2代))(2021.03.08 防災格言)
越森幸夫(1930~2005 / 北海道南西沖地震時の奥尻町長)(2018.02.05防災格言)
ミハイル・ゴルバチョフ(1931~2022 / 旧ソビエト連邦最後の共産党書記長)(2008.03.24防災格言)
貝原俊民(1933~2014 / 阪神淡路震災時の兵庫県知事)(2014.11.01防災格言)
小川竹二(1937~2014 / 下越水害時の新潟県豊栄市長)(2017.09.11防災格言)
斎藤富雄(1945~ / 阪神淡路震災時の兵庫県副知事・兵庫県初代防災監)(2017.11.20防災格言)
片山善博(1951~ / 鳥取県西部地震時の鳥取県知事 政治家・自治官僚)(2014.1.27防災格言)
中貝宗治(1954~ / 台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
村井嘉浩(1960~ / 東日本大震災時の宮城県知事)(2013.10.14防災格言)
泉田裕彦(1962~ / 新潟県中越地震時の新潟県知事)(2012.02.20防災格言)
消防庁「自主防災組織の手引 ―コミュニティと安心・安全なまちづくり―」(平成29年3月改定版)より(2022.12.05 防災格言)

■「洪水・水害」に関連する防災格言内の主な記事
「古今和歌集(平安時代初期)」巻十八・雑歌 下・933(題知らず・詠み人知らず)より(2022.10.10 防災格言)
長野県伊那地方の水害の伝承「未満水(ひつじまんすい)(1715年)」より(2020.06.29 防災格言)
落雷のまじない「くわばらくわばら(桑原桑原)」の伝承の由来(2021.07.05 防災格言)
菅原道真公と落雷の関係(くわばらくわばら(桑原桑原))(2021.07.12 コラム)
熊沢蕃山(1619~1691 / 江戸時代前期の儒者・武士 陽明学者)(2022.10.03 防災格言)
勝海舟[2](1823~1899 / 江戸・明治の政治家 従五位下・安房守 日本海軍の生みの親 伯爵)(2022.08.29 防災格言)
神田選吉(1856~1909 / 電気工学者・雷災史家 東京郵便電信学校校長)(2022.06.06 防災格言)
中田良雄(1905~1985 / 気象学者 「梅雨谷線(現在の梅雨前線)」を最初に導入した気象学者)(2022.06.27 防災格言)
中谷宇吉郎[2](物理学者・随筆家 カスリーン台風後の随筆「水害の話(1947年)」より)(2020.07.06 防災格言)
寺田寅彦[9](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2020.08.31 防災格言)
加々美武夫(室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
藤原咲平 (気象学者 室戸台風後の著書『天気と気候』より)(2013.10.28 防災格言)
丹羽安喜子(歌人 室戸台風で罹災)(2016.08.22 防災格言)
諫早豪雨の教訓から(1957年7月25日)(2017.07.10 防災格言)
長崎豪雨の教訓から(1982年7月23日)(中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(平成17年3月))(2021.08.16 防災格言)
松野友(岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02 防災格言)
及川舜一(元岩手県一関市市町 カスリーン台風とアイオン台風の大水害)(2015.09.14 防災格言)
小川竹二(元新潟県豊栄市長 下越水害)(2017.09.11 防災格言)
奥貫友山(利根川・荒川水害である寛保大水害時の慈善家)(2010.4.5 防災格言)
安芸皎一(河川工学者・土木技術者 東京大学教授 「伊勢湾台風」の名言)(2020.09.07 防災格言)
川合茂(河川工学者 舞鶴工業高等専門学校名誉教授)(2011.08.15 防災格言)
高橋裕(河川工学者 東京大学名誉教授)(2017.06.12 防災格言)
幸田文(随筆家・小説家 代表作『崩れ』『流れる』)(2015.05.11 防災格言)
桑原幹根(愛知県知事)(2014.09.15 防災格言)
廣井悠 (都市工学者)(2012.03.12 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
下田歌子 (歌人・実践女子学園創始者)(2009.12.14 防災格言)
平生釟三郎 (川崎重工業社長)(2009.11.02 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
吉田茂 (政治家)(2008.05.05 防災格言)
脇水鉄五郎(地質学者・日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
谷崎潤一郎 (作家)(2014.12.08 防災格言)
矢野顕子 (シンガーソングライター ハリケーン・サンディ水害)(2016.10.17 防災格言)
森田正光 (お天気キャスター)(2017.06.05 防災格言)
中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(2008年9月8日)より(2018.07.09 防災格言)
二宮尊徳翁(二宮金次郎)(江戸時代後期の経世家・農政家)(2012.01.30 防災格言)
上杉鷹山 (江戸時代中期の大名 出羽国米沢藩9代藩主)(2010.04.12 防災格言)
莅戸善政[1] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2008.03.17 防災格言)
莅戸善政[2] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2011.12.05 防災格言)
中江藤樹 (江戸時代初期の陽明学者 近江聖人)(2010.11.22 防災格言)
『百姓伝記』(1680~1682年・著者不明)巻七「防水集」より(2018.08.27 防災格言)
中西 進(国文学者 大阪女子大名誉教授 文化勲章受章)(2019.04.08 防災格言)
倉嶋厚(気象学者・お天気キャスター 元気象庁主任予報官)(2019.07.22 防災格言)
宮澤清治 (気象学者・NHK気象キャスター)(2016.09.05 防災格言)
高橋浩一郎(気象学者 気象庁長官(第5代) 筑波大学教授)(2019.10.14 防災格言)
中曽根康弘(政治家 内閣総理大臣(第71~73代))(2019.12.02 防災格言)
中貝宗治(台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
鍋島直正(大名・肥前国佐賀藩主(第10代) 「シーボルト台風」)(2019.12.09 防災格言)
利根川改修工事に見る水害の歴史(2010.2.26 編集長コラム)
利根川の洪水想定 首都圏で死者4,500~6,300人(2010.3.5 編集長コラム)
小田原評定(水俣土石流災害)(2006.1.29 編集長コラム)
豪雨そして土砂災害。その犠牲者はいつも老人ホーム(2010.7.20 編集長コラム)
アーノルド・ニーベルディング(1838~1912 / ドイツの法学者 政治家)(2020.09.14 防災格言)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,備蓄,防災グッズ,非常食
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ

人気記事